2016年5月に待望のメジャーデビューを実現させた岡崎体育。1人で盆地テクノを追求する孤高のアーティストです。自身の活動拠点である京都が盆地であることから、自身の音楽を盆地テクノと命名。デビューアルバムのタイトル『BASIN TECHNO』も盆地テクノを指します。このアルバムは、オリコンウイークリーチャート9位を獲得しました。
そんな岡崎体育の『BASIN TECHNO』に収録されている『FRIENDS』。岡崎体育が、自身の手につけた「ただの布切れ」の友達と会話しながら進むミュージカルのような曲です。
“「僕たちは二人で一つ」
「そして一人で二つ」
「おいおい、それは言わないお約束!」
「はは、いけねっ!言わないお約束」
この曲が終わってしまえば ただの布切れだけど
僕ら FRIENDS 大切な FRIENDS 友達”
岡崎体育と手の人形との会話で、曲は軽快にスタート。「二人で一つ」「一人で二つ」と会話をつなげます。「この曲が終わってしまえば ただの布切れだけど」という切ないフレーズ。人形とすら言わず「ただの布切れ」という単語をもってくるところが岡崎流。
“「助け合える友達が君にはいるかい?」
「きっと何より大切なこと 当り前で難しいこと」”
「助け合える友達」というフレーズが登場。岡崎体育と人形の友情の歌だと思わせる展開が続きます。友達が「何より大切なこと」とまで言う友情の歌。
“「てっくん、僕ずっとメンバーが欲しかったんだ。
ライブに行く時も、練習もずっと一人。」
「体育くん、でもさ、よ~く考えてごらん?
もし君がメジャーデビューして、
CDを出して80万円の利益が入るとするね?」
「うん」
「80万円は君のものさ!でももし4人組のバンドだったら?」
「4分の1?」
「それだけじゃない。グッズの売り上げ、出演のギャラ、
カラオケの印税、楽曲提供ぜ~んぶ君のものさ!
でも4人組バンドだったら?」
「4分割」
「ね?バンドざまぁみろだろ?」
「うん!バンドざまぁみろ!」”
しかし、後半でまさかの展開がやってきます。まず、この手の人形の名前が「てっくん」であると判明。友達が欲しいと言う岡崎体育くんに対し、てっくんは金の話を始めます。4人組バンドだったら4分の1の利益だけれど、1人だったら全部自分の利益!「80万円」という金額のたとえもリアルで良いですね。
ここから「バンドざまぁみろ」の怒涛の繰り返し。友達が何より大切というのはあくまでもフリで、このバンドざまぁみろ展開がこの曲の核なのでした。
“「体育くん、今日から僕も岡崎体育のメンバー入りさ。これからよろしくね!」
「いや、いいや。収入とか半分になっちゃうし。」”
ラストも「僕も岡崎体育のメンバー入りさ」と話す人形に対し「いや、いいや」と断るオチ。『FRIENDS』というタイトルにも関わらず、フレンズ拒否で終わるというすごい曲です。この曲はネタでもありますが、岡崎体育がソロで戦っていく姿勢を表しているとも言えるでしょう。作詞作曲アレンジまで一人でこなせる岡崎体育ならではの歌ですね。
そして岡崎体育がすごいのは、いざコラボすれば「コラボも意外といいね!」、バンド形態になったら「バンドもやってみると楽しいね!」という曲を作ってしまいそうな楽曲の幅広さにあります。『BASIN TECHNO』には『スぺツナズ』のようなシリアスな曲も収録。『FRIENDS』のような面白い曲は、あくまでも興味ない人に注目させる手段であり、真に聴かせたい曲に導く役割を果たしているんですね。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)