当時知らない人はいない程の有名曲
岡本真夜は90年代から活躍するシンガーソングライター。
代表作である『TOMORROW』は90年代に大ヒットした曲です。覚えやすいメロディで、当時から流行り始めたカラオケでも人気の曲でした。
この時代を生きた人のほとんどが、このアーティストのこの曲を知っている、と言っても過言ではないほど。1995年に発売されたこの曲は、岡本真夜自身のデビュー曲にあたり、デビュー曲で200万枚売っているんですね。
TOMORROW
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涙の数だけ強くなれるよ
アスファルトに咲く花のように
見るものすべてに おびえないで
明日は来るよ 君のために
≪TOMORROW 歌詞より抜粋≫
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歌いだしから有名なサビのメロディでスタートします。「アスファルトに咲く花のように」の歌詞がインパクトありますね。
植物の生きようとする力は強く、アスファルトを割って伸びてくる草花の様子を表現しています。このフレーズをブログタイトルなど何かしらの形で使っている人も多く、漫画「銀魂」でもパロディにされたほど。
このフレーズは、日本の道路が舗装されてきたからこそ、生まれたフレーズだとも言えるでしょう。「そう言えばアスファルトを割って咲いている花ってあるよね」と、このフレーズで多くの日本人が気づいたのです。
日常で見逃してしまいそうな小さいことを歌詞にしているんですね。こういった日常で見逃しがちな出来事に気付き、アスファルトのような硬い地面を割るぐらいの生命力を持てるよ、と歌っています。
視点を変えると、見えてくるもの
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ビルの上には ほら月明かり
抱きしめてる 思い出とか
プライドとか 捨てたらまた
いい事あるから
≪TOMORROW 歌詞より抜粋≫
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たとえばここで「ビルの上には ほら月明り」というフレーズが登場します。なんてことはない、ビルの上に月が出ているのだな、という風景。
しかし、なんてことはないがゆえに、日常で見過ごされてしまうのです。余計な思い出やプライドを捨てたらいいことがある、と続きます。視点を変える、ということを言っている歌詞。
ビルの上の月明りに気付くように、視点を変えれば心が変わり前向きになるので、いいことも起こりやすくなると言っています。
様々な人へ勇気を与える声
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涙の数だけ強くなろうよ
風に揺れている花のように
≪TOMORROW 歌詞より抜粋≫
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「強くなれるよ」は後半で「強くなろうよ」に変化します。「風に揺れている花のように」ときました。アスファルトを割って咲く花は、風に揺れています。風に揺れているだけなら、優雅なようにも感じられます。
しかし、この「風」とは逆風など、困難なことの象徴。風に揺れている花とは、逆風に対しても負けずに育っている人を象徴しているんですね。強くなれる!から強くなろう!と一歩踏み出した歌詞。この力強いメッセージが、優しい歌声で響きます。
岡本真夜のくせのない声だったからこそ、多くの人の心をとらえたんですね。
泣いたら泣いたぶんだけ強くなれる、というメッセージをこめたこの曲。この曲が、ずっと愛されているのは、今の時代がますます困難な状況が増えてきて、「明日」が見えにくくなっているからでしょう。
2012年3月にはこの曲を再録音した岡本真夜。『TOMORROW 〜明日の君へ〜』と題されたこのバージョンは、東日本大震災で被災した児童の合唱も入っています。
チャリティーライブも積極的に行なっている岡本真夜は、「明日は来るよ 君のために」と歌い続けているのです。
TEXT 改訂木魚(じゃぶけん東京本部)