かまってちゃんの代表曲である『ロックンロールは鳴りやまないっ』。この曲が収録されたアルバムが発売されたのが2010年です。6年前ですが、すでに歌詞は時代を感じるものになっていますね。
この歌詞を通して音楽文化を振り返ってみましょう。
----------------「昨日の夜、駅前TSUTAYAさんで」この歌いだし。これすらもう古い習慣かもしれません。音楽はレコード店で買うものから、TSUTAYAのようなレンタルビデオ店で借りるものに変化。さらに現在は、配信や動画が主流になっています。
昨日の夜、駅前TSUTAYAさんで
≪ロックンロールは鳴り止まないっ 歌詞より抜粋≫
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僕はビートルズを借りた
セックスピストルズを借りた
「ロックンロール」というやつだ
しかし、何がいいんだか全然分かりません
しかし、何がいいんだか全然分かりません
do da turatura oh yeah! yeah! yeah!
夕暮れ時、部活の帰り道で
またもビートルズを聞いた
セックスピストルズを聞いた
何かが以前と違うんだ
MD取っても、イヤホン取っても
なんでだ全然鳴り止まねぇっ
≪ロックンロールは鳴り止まないっ 歌詞より抜粋≫
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「ビートルズを借りた セックスピストルズを借りた」このアーティストのチョイスも絶妙ですね。ロックに触れる少年少女がまず通る、教科書のような代表的アーティストです。
ビートルズは、60年代に登場し、現在のポップスの基礎を作ったと言われるイギリスの伝説的なバンド。セックスピストルズは、70年代後半のパンクムーブメントをけん引した、これまたレジェンド的存在のバンドです。
『ロックンロールは鳴りやまないっ』は、かまってちゃんの曲の中でも特に有名。それは多くの人がロックに、音楽に触れた時の感覚を、歌詞にしているからなんですね。「何がいいんだか全然分かりません」から「何かが以前と違うんだ」への変化。
どういったアーティストにもあてはまるかもしれませんが、音楽に対しての感動はこういった「変化」の体験の連続。あまり良いと思えなかった曲が、何かのきっかけで良く感じられるようになる。この過程を丁寧に歌詞にしています。
「MD取っても」のMDが何のことか分からない人も、今はいるでしょう。CDよりもコンパクトなサイズで音楽を記録できるMD=ミニディスク。このMDが出た当初は画期的だったのですが、それももう昔話です。携帯電話、スマートフォンの普及により存在感がなくなっていきました。
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今も遠くで聞こえるあの時のあの曲がさ
遠くで近くですぐ傍で、叫んでいる
遠くで見てくれあの時の僕のまま
初めて気がついたあの時の衝撃を僕に
いつまでも、いつまでもくれよ
もっともっと、僕にくれよ
≪ロックンロールは鳴り止まないっ 歌詞より抜粋≫
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サビの熱い叫び。ここが共感を呼んだ箇所です。「初めて気がついたあの時の衝撃」である音楽。この衝撃を忘れられずに音楽をやっている。多くのバンドが音楽を始めるきっかけは、音楽に衝撃を受けて自分もその衝撃を伝えたいから。
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最近の曲なんかもうクソみたいな曲だらけさ!
なんて事を君は言う、いつの時代でも
だから僕は今すぐ、今すぐ、今すぐ叫ぶよ
君に今すぐ、今、僕のギター鳴らしてやる
君が今すぐ、今、曲の意味分からずとも
鳴らす今、鳴らす時
ロックンロールは鳴り止まないっ
≪ロックンロールは鳴り止まないっ 歌詞より抜粋≫
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「最近の曲なんかもうクソみたいな曲だらけさ!なんて事を君は言う」からのラストの畳みかけも良いですね。かまってちゃんは、そのバンド名や荒い演奏から「クソみたいな曲」と言われやすかったバンドです。それでも、クソと言われても、音楽をやる。
それは、人からどう言われても音を鳴らすことこそが音楽であり、ロックンロールであるから。
この「今すぐ叫ぶ」感覚、「鳴りやまない」衝動は、みさこのバンドじゃないもん!にも、形を変えて引き継がれます。かまってちゃんのドラム担当、みさこが結成したアイドルグループ、バンドじゃないもん!。
このバンもんの『君の笑顔で世界がやばい』に「“ロックはしんだ”とシモンズ言ってた」というフレーズが登場します。もはやロックも死んだと言われる時代だけれど、だからこそ「踊れや歌えや」と音楽をやる。
かまってちゃんもバンもんも、音楽をやる衝動そのものを歌詞にしている。そこが魅力なんですね。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)