ブルースや70年代ロックをベースにした骨太なサウンドと、強烈なインパクトを残す歌声が、幅広い年代のロック好きから支持を集めるバンド・a flood of circle。Vo/Gの佐々木亮介を筆頭にした3人編成に、長らくサポートメンバーを入れて活動してきた彼らが、一般から新たなギタリストを募集した。そして、その条件の中にあった「※失踪NG」という項目が、ネットで「ロックすぎる」と話題になったのをご存じだろうか。
…なぜならこれは、自虐ネタ。結成当初は男性4人で活動していたa flood of circleだが、2009年、なんとツアー中にメンバーの一人が失踪するという予想外の事件が発生した。「※失踪NG」は、その苦い過去に向けての対策の一環というわけ。音楽性もたたずまいも、徹底して”カッコイイ”イメージしかない彼らだが、実はなかなかの苦労人なのだ。
でも、そんな逆境に負けず、今もこうやって音楽を鳴らし続けてくれているa flood of circle。
バンドを率いる佐々木亮介の心の底には、きっと、この曲のような熱いスピリッツが流れているはずだと、聴くたびに思う。
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何度でもノックする やがて開くときを待ってるんだよ
扉の向こうには隠された俺の声があるかい
ノックしている この心臓を鷲掴みにする手
ノックしている 真っ赤な血が全身を巡って燃える
俺のドアをノックしている
ノックしてみる 俺の中に住み着いた悪魔のそのドアを
ノックしてみる また別の生き物みたいなそいつが顔を出す
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固く閉ざされた扉が開くまで、「何度でもノックする」。
扉の向こうにあるものを、その目で拝み、自分の手でつかみ取るために。いつだって佐々木亮介は、目の前にあるドアを「ノック」し続けてきたのだ。
考えてみれば「ノック」という行為は、一度ドアを叩いてしまったら、中に入らずに引き返すことができない。扉の向こうにいる人に「入るよ」と意思表示しておきながら立ち去るのは、できないことはないけど、とても失礼だ。だから「ノック」には相手に礼儀正しい印象を与える意味もあるけれど、「よし、行くぞ」「もう行くしかない」と、自分を鼓舞する効果もある。
そして「扉の向こうには隠された俺の声があるかい」「ノックしてみる 俺の中に住み着いた悪魔のそのドアを」というフレーズから、佐々木亮介にとって「ノック」は外の世界に向けられた行為だけでなく、自分の内面との対話でもあるとわかる。
自分とも、そして外にあるものとも戦い、越えていかなきゃならない。そんな強い気持ちを「真っ赤な血が前身を巡って燃える」という言葉が伝えている。
戦い続ける佐々木亮介の、印象的だったエピソードといえばこれ。a flood of circleの作品の中には、ビリー・ジョエルの名曲「Piano Man」に日本語詞をつけた「BLUES MAN」という曲がある。ただし、これはただの訳詞のカバーじゃない。佐々木亮介が独自の歌詞をつけ、ビリー・ジョエル本人に自らが交渉して許可を得たものだと、いつだったかライブ会場のステージの上から聞いたことがある。
「電気代の通知」とか「デリヘルのチラシ」とか、日本的で素敵に俗っぽいこの歌詞に、よくぞOKが出たなぁと面食らったけれど…。偉大な歌手も、海の向こうからの意外なオファーに耳を疑いつつも、おもしろがってOKしてしまったのかもしれない。
まさに、自分の中のストッパーに打ち勝った、行動力がなせる技。そして、一見「無理かな」と躊躇することでも、やってみれば意外とできちゃうこともある…といういい例でもある。
決してめげない。そして、少しでもチャンスの欠片が見えたら、とにかくチャレンジしてみる。アグレッシブな音楽性だけでなくて、“ロックンロールは前のめり”というこんな姿勢も、a flood of circleの人気の秘密に違いない。
あなたはどうだろう。
やりたいのに、挑戦せずにうやむやになってしまっていることって、けっこうないだろうか?
「忙しいから」「もう若くないし」「面倒くさいから」…そんな理由で諦めてしまっている、夢や未来。自分の前に壁が立ちはだかったら、とにかくドアをノックしよう。そうやって、後に引けない状況を作ることって、時によっては重要。中に入ってしまって、本気でやれば何とかなるのだから。
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甘い光に釣られて未来に群がっている
虫けらのような俺たちにも 明日は待ってる
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不安なんてない、大丈夫。
迷ったら、この曲がきっと背中を押してくれる。
TEXT:佐藤マタリ
2006年結成。 佐々木亮介(Vo, Gu)、HISAYO(Ba)、渡邊一丘(Dr)、アオキテツ(Gt)の4人組。ブルース、ロックンロールをベースにしつつも、常にコンテンポラリーな音楽要素を吸収しそれをAFOC流のロックンロールとして昇華させたサウンドと、佐々木の強烈な歌声、観る者を圧倒するライブパフォ···