アニメ主題歌をカバー
中川翔子の『テレポーテーション -恋の未確認-』はアニメ「エスパー魔美」主題歌のカバー。アニメ「エスパー魔美」は1987年~1989年まで放送されていた藤子・F・不二雄の作品。
主人公魔美がある日超能力に目覚めるストーリー。テレキネシス、テレパシー、そしてテレポーテーションなどの超能力を使って人助けをしていきます。
もとの歌い手、橋本潮は「ドラゴンボール」のエンディング曲『ロマンティックあげるよ』でも有名なアニソン歌手。歌のお姉さん的なさわやかな歌唱が特徴です。
テレポーテーション -恋の未確認-
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「好きよ」と言い出せないうちに
あなたのロッカー 奪ったlove-letter
Pinkの噂が 二人を近づけて
Ah Ah 私は 敏感・情熱 また一人
≪テレポーテーション -恋の未確認- 歌詞より抜粋≫
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シンセの爽やかなイントロからこの歌いだしに入ります。自分が「好きよ」と告白できないまま、好きだった「あなた」のロッカーにラブレターが投函される。
ピンク=色恋の噂があなたとラブレターを投函した彼女の距離を「近づけ」た。「敏感」で「情熱」的な「私」はそれを感じとり、結局自分は「また一人」ものだと気づく。そういう歌詞です。
ここで「不器用」な主人公像が見えてきます。「不器用」というイメージが一つのキーワード。
80年代を感じさせる
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口笛吹いて 夏の風にKiss
英語の辞書を 一枚破り
マジックで 「Wanted my boy friend」
ツイてないね 紙ヒコーキ 先生に命中
≪テレポーテーション -恋の未確認- 歌詞より抜粋≫
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気をとりなおして口笛を吹いて夏の風を感じていた私。英語の辞書を一枚破って、マジックでボーイフレンドが欲しいと落書きします。そんなメッセージをのせた紙ヒコーキを飛ばしたら先生に命中していまうというツイてない日。
マジックはマジックインキでもありますが、手品の意味のマジックも連想させるようにできています。テレキネシスで手を触れずに物体を持ち上げることが得意な魔美。紙ヒコーキを自在に飛ばすことも余裕なわけです。
しかしおっちょこちょいなので、先生にぶつかってしまう。謝って「マジックの練習をしていました」と言っているような日常も想像できます。
紙飛行機を「紙ヒコーキ」と表記することで細かいことを気にしない、明るく比較的能天気なキャラクターも連想できます。そんな明るく不器用でそそっかしい魔美をサポートする「my boy friend」が、高畑の存在。
OP映像にも登場する高畑は、魔美の超能力を分析しサポートする小太りで秀才のしっかり者キャラ。「魔美クン、○○してみるんだ!」という口調でしゃべります。藤子Fっぽいキャラでありながら似ている者が意外といない独特な男。
ここまでの歌詞は、当時の中学生の日常を歌いつつ、魔美のキャラクターを連想させるものになっています。
「エスパー魔美」は日常からSF=少し不思議になる話なので、この日常の世界観、価値観というのはハマるわけです。曲のアレンジや言葉のチョイスに80年代らしさがあふれていますね。
キャラの特徴を活かした歌詞
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テレポーテーション 心の翼が
テレポーテーション 今 時間を飛ぶ
私だけが 私の恋を Ah 未確認
≪テレポーテーション -恋の未確認- 歌詞より抜粋≫
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そしてこのサビが来ます。テレポーテーション=瞬間移動という超能力が登場。心はあちこちに瞬間移動するけれど、私の恋はまだ未確認、見つからないと歌っています。瞬間移動という超能力と自分の心の動きをかけている歌詞なんですね。
「未確認」という単語は普通「未確認飛行物体」のように使います。これも超常現象を自分の心の状態にかけている歌詞。
そしてこの「テレポーテーション」という単語をサビとタイトルに持ってきた意味。この超能力の描写こそが「エスパー魔美」をオリジナルなものにしています。魔美のテレポーテーションは、何か物体がぶつかってこないと発動しません。
この原理を見抜いた秀才の高畑は、ビーズを発射するブローチを作り魔美にプレゼントします。魔美は自分に向かってビーズを発射して、その衝突エネルギーで瞬間移動するのです。これが「エスパー魔美」独自のテレポーテーション。
原曲のこの「テレポーテーション」の歌詞はサポートのコーラスが歌っています。コーラスにサポートしてもらうように、高畑にサポートしてもらうのが魔美のテレポーテーション。
「テレポーテーション」とは魔美と高畑の絆の象徴でもあるんですね。
「エスパー魔美」の超能力の世界観とマッチしたこの曲。中川翔子はアニソンカバーアルバムで80年代風のメロディ、歌詞を見事に再現しました。しょこたん自身がとても気に入っているという曲だけあり、味わいのある曲です。
TEXT 改訂木魚(じゃぶけん東京本部)