"相対性理論"ってなに?
相対性理論はバンド名。やくしまるえつこがボーカルをつとめるバンドです。謎めいた雰囲気、ユニークな歌詞、やくしまるえつこの歌声と演奏のギャップが魅力。
そんな相対性理論のアルバム楽曲の一つ、『小学館』。2010年発売のアルバム『シンクロニシティーン』に収録されています。
この『小学館』というタイトルがまず、すごいですね。小学館といえば、「小学○年生」や「コロコロコミック」などの少年誌や学習書などで有名な大手出版社。
曲のタイトルになることはまずありません。この出版社名をタイトルにしてしまうところが相対性理論のすごいところ。
小学館
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今日から三週間 目覚めちゃダメだよBABY
外は大洪水 起きるとあぶないBABY
地球がなくなった 朝 飛び起きたら
銀河を漂う わたしの家 OH OH なぜなの
≪小学館 歌詞より抜粋≫
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ファンタジックな曲です。「外は大洪水」「地球がなくなった」というスケールの大きい歌詞でスタートします。
この世界観はすごいですね。地球が大洪水となり、「わたしの家」は銀河を漂っています。「三週間 目覚めちゃダメ」というのは、おそらくコールドスリープで眠りにつき、新しく住める星を探すのでしょう。まさにSFです。
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気がかりなのは 大好きだった
少年マンガ読めないこと どうしたらいいの?
≪小学館 歌詞より抜粋≫
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「気がかりなのは 大好きだった 少年マンガ読めないこと」地球が洪水にあったら、ほかにも気がかりなことはあるだろうに、あえて少年マンガを選ぶところが良いですね。
壮大な宇宙と、身近な少年マンガの対比。このギャップこそが相対性理論の魅力だといえます。
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ひいきは小学館 スピリッツ読ませてBABY
MONSTERの最終巻 謎解きまかせてBABY
≪小学館 歌詞より抜粋≫
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「ひいきは小学館 スピリッツ読ませて BABY」ここでタイトルにもある「小学館」が出てきました。スピリッツは、小学館から発行されている青年漫画誌です。
「少年マンガ読めないこと」と言っておきながら、スピリッツは青年漫画誌。この小さい裏切りも面白いですね。
「MONSTERの最終巻 謎解きまかせてBABY」ここも大胆な歌詞。「MONSTER」は浦沢直樹の漫画作品。スピリッツに連載されていた、と思いきや、同じく小学館のビッグコミックオリジナルに連載されていたサスペンス作品です。
ここでも小さい裏切りが登場。このフレーズも、壮大なSF世界と週間漫画雑誌がある日常の対比です。
どうして「小学館」なの?
少年マンガや青年誌なら他にもあります。なぜ講談社、集英社、白泉社などではなく、小学館なのでしょうか?
それは、「しょうがくかん」という語が「ん」で終わり、「さんしゅうかん」「さいしゅうかん」と音の響きが合うから。そして、やくしまるえつこの歌声に合うからです。
小学館は「ドラえもん」という大ヒット作を発行している会社。「ドラえもん」のような日常SFの世界を歌の中で再現しています。
そして、やくしまるえつこの可愛い歌声が「ドラえもん」のような世界観や、「小学館」という言葉が持つイメージに合っているんですね。
相対性理論も、やくしまるえつこも、この曲を発表した当時から少しずつ変わっています。この曲は、2010年当時だからこそ生まれた曲だと言えるでしょう。
TEXT:改訂木魚 (じゃぶけん東京本部)