『HANABI』は2006年発売のいきものがかり2枚目のシングルです。アニメ『BLEACH』のエンディング曲だった楽曲。今でこそ、いきものがかりは全国的な知名度を獲得していますが、初期はまだ無名の存在。このグループは、この曲で一躍その名を広めたと言えます。
公開日:2016年8月3日
『HANABI』は2006年発売のいきものがかり2枚目のシングルです。アニメ『BLEACH』のエンディング曲だった楽曲。今でこそ、いきものがかりは全国的な知名度を獲得していますが、初期はまだ無名の存在。このグループは、この曲で一躍その名を広めたと言えます。
歌ってみると分かりますが、非常に息継ぎしにくい曲です。吉岡聖恵の歌唱力が分かりますね。
『BLEACH』は週間少年ジャンプで連載の漫画作品。2006年当時というのは、この作品がアニメ化され人気を博していた頃であり、このアニメ人気が全盛期だった時代にあたります。そんな『BLEACH』の原作漫画は、2016年にいよいよ最終回をむかえます。
“守りゆく その想い ひたすら 鳴り響け
果てるまで せめて 強く”
たとえば「守りゆく その想い ひたすら 鳴り響け」の歌詞。アニメ原作ともに『BLEACH』は「守る」というワードがキーになっています。主人公の名前、黒崎一護も名前に「護る」が入っていることから、この言葉がいかに重要か分かりますね。「果てるまで せめて 強く」というフレーズも、仲間を守るために果てるまで強く戦う、という主人公の正義感に合っています。
“静寂に 落ちる空 ふたひらの 夢花火
彼方に 旅立つ あなたも 見えたの? おなじ 光が
離れても いつの日か 出逢えると 信じてる
胸裂く 想いを あなたに 歌うわ 声が 聴こえる?”
静寂に落ちる空に花火があがる。その光景が想像できる歌詞です。「彼方に 旅立つ あなた」という表現から、恋人が離ればなれになる状況が想像できますね。曲単体として成り立っているので、たとえ『BLEACH』を全く知らなくても響く曲です。
「離れても いつの日か 出逢えると 信じてる」の歌詞が登場。『BLEACH』における人気のエピソードは、主人公の黒崎一護がヒロインの朽木ルキアを救出に向かう展開です。それを反映させていると言える歌詞です。「胸裂く 想いを あなたに 歌うわ」という歌詞も良いですね。物語の登場人物の感情を連想できるようになっています。
「せつなに ひらく それは HANABI」というサビ直前のフレーズで、タイトルの「HANABI」が登場。ここも『BLEACH』っぽいです。まず「HANABI」という字面が「BLEACH」と近い。これは一見バカバカしいことのように見えますが、『BLEACH』という作品においては非常に重要なポイントです。『BLEACH』原作漫画のサブタイトルは、ほとんど英語。専門用語も多い世界観で、たとえば「尸魂界」と書いて「ソウルソサエティ」というふりがなをあてます。この英語と難しい漢字が混ざる、「オサレ」とも揶揄されやすい世界観を「HANABI」という表記で見事表現しているのです。
歌詞全体を通して見れば、「花火」と漢字表記するほうが自然です。しかし、「HANABI」と表記することで、文字どおりの「花火」にもなるし、「華」のような「日」にもなりえるし、「離」れる「日」の意味も持ちえる。そしてこれが『BLEACH』っぽい。ここがいきものがかりのすごいところです。楽曲にきちんと、いきものがかりらしさを残しつつ、作品世界にも寄り添っている。「HANABI」というタイトルで、見事にタイアップとしての役割が分かるんですね。
この曲は、いきものがかり初のオリコンチャート5位を記録し、トップ10入りを果たしました。見事に自身の記録という「HANABI」を打ち上げているんですね。
『BLEACH』はアニメが終了し、原作漫画も近年では人気が落ち着きジャンプ本誌でも後ろのほうの掲載になっていましたが、ジャンプとテレ東に多大なる貢献をした作品です。2014年のテレ東のアニメタイトル別売上高でも5位に入っているほど。それほど人気のあった作品なんですね。いきものがかりは、この曲で『BLEACH』の全盛期を彩ったのです。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)