『KANA-BOON』や『ゲスの極み乙女。』など、踊れるロックが日本で大流行している。その流行の中心的な存在といっても過言ではないバンド『夜の本気ダンス』。
彼らはロックンロールにダンスミュージックを融合させ、ハイクオリティなサウンドを届けてくれている。その根底には「ロックはダンスミュージックである」といった想いがある。
一般的にロックとダンスはかけ離れているものと思われがちだ。実際には違っていて、昔の映像などを確認すると伝説のロックミュージシャン『エルヴィス・プレスリー』も監獄ロックで激しく踊っている。
今回は、そんなロックのルーツに影響を受けている新進気鋭のバンド『夜の本気ダンス』から実は高度なテクニックが駆使された楽曲「Crazy Dancer」を紹介したい。
“Hey You 相性はなんだっけ?
I don’t know why ぼやかして
知らない表情 ドキッとしたんだ wow!”
『夜の本気ダンス』の中でも、この曲はノリが良くかなり踊れるものになっている。
英語にも聞こえるような崩した歌い方に合わせ、歌詞も音の響きを重視して作られているように思われる。
しかしながら、歌詞の解釈次第ではしっかりとしたストーリーを持つ曲になっている。「Hey You 相性はなんだっけ?」「知らない表情 ドキッとしたんだ」ここの歌詞から男と女のストーリーを連想させられる。
“Oh ねえYou 対象は誰だっけ?
たまにそんなことを思い出して
みても才能だって餓死したら Wow! ”
先ほどの「相性」とここで使われている「対象」という言葉。
韻を踏むことによって、統一性が出て締まりのある楽曲になっている。
アピールをうまくかわす思わせぶりな女に男は少し焦りを覚え、「対象は誰だっけ? 」と聞いてしまう。
“わずかに上昇して すぐさま消えてっちゃ
カラダがやりきれないよ
Wake up 騒いで踊り出す You're crazy dancer
Wow Oh Oh Wow Oh Oh Oh Wow Oh Oh Wow Oh Oh Oh
Hey now 照合して汚したい”
手に入りそうで入らない女(=crazy dancer)に踊らされる男。
曲の後半に進むにつれ、男は「カラダがやりきれないよ」「照合して汚したい」など本音がボロボロと出てくる。
しかしこの「crazy dancer」、表しているのは本当に“女”のことだけだろうか。ハマれば抜けられない、気づけば踊らされてしまうのは確かに女もそうだが、フラットに考えてみると“音楽”だってそうだ。
「『crazy dancerな女に踊らされる男』がテーマであるcrazy dancerな音楽に踊らされる我々リスナー」これがこの「Crazy Dancer」が歌い表す正体なのだ。
「魅力的な女性も音楽もハマれば抜けられない、気づけば踊らされてしまう」この2つにはそんな共通点があるようだ。「crazy dancer」という言葉は後半にしか出てこない。魅力的な女性(=crazy dancer)は踊れる音楽のことであると終盤で初めて知るわけだ。
一見すると簡単な言葉で紡がれているだけの歌詞のように感じるが、紐解いてみればそこには多くのトリックが隠されている。音の響きの心地よさ、ストーリー性、比喩表現、「Crazy Dancer」の歌詞はこれらを全て網羅しており、さまざまな角度から楽しめるようになっている。
僕らはCrazy Dancerの踊りに見入ってしまったようだ。
ライター名:笹谷創( http://sasaworks1990.hatenablog.com/ )