ワタナベヒロシのMIXCD「Contact to the Spirits 3」が11月23日に4年ぶりリリースされる。
ドイツの老舗テクノレーベルKompaktにkaito名義で所属し写真家やDJとしても活動を続ける表現者ワタナベヒロシ。
幾つもの名義を使い分けその都度異なる世界観を奏でる彼の独創的な旋律は聴くものを魅了する。その活動は幅広く、過去にはQuadraの名義で日本のテクノを語る上では外すことの出来ないフロッグマンレコーズやNYの名門ハウスレーベル[IBADAN RECORDS]から32 Project名義での楽曲を発表している。
その他にもグラフィック・デザイナーの北原剛彦とのユニットTreadや愛息の名前でもあるkaito名義などがある。
フロッグマンレコーズの設立者の1人である佐藤大(現在はアニメ脚本家、主な作品として「攻殻機動隊 スタンドアローンコンプレックス」や「交響詩篇エウレカセブン」等)とは親交が厚く「交響詩篇エウレカセブン」に楽曲提供も行っている。
その他にはbeatmaniaといった音楽ゲームにも楽曲を提供しておりネットが普及していない時代にクラブミュージックを当時の若者達へ普及させる一役買った人物でもある彼は今年の4月にデトロイトテクノの開祖デリック・メイのレーベルTransmatから日本人で初めてアルバム「MULTIVERSE」をリリースした。
このTransmatというレーベルは設立から30年が過ぎる老舗レーベルで、デリック・メイの研ぎ澄まされた審美により選ばれたアーティストのみしか作品をリリースすることが出来ない純度の高いレーベルとして有名だが、そのデリック・メイに「ヒロシワタナベは21世紀を代表する伝説的なアーティスト」とまで言わしめたワタナベヒロシの作品「MULTIVERSE」は実に素晴らしい出来だ。
中でも「The Leonids」の出来は凄まじい。疾走感のあるビートに温かみのあるシンセが重なり浮遊感のある空間が広がっていく。
実にワタナベヒロシの匂いを感じさせてくれる構造となっている。奏でられるシンセ音やビート自体に真新しさはないのだが色褪せない世界がこのアルバムを通して感じ取れるはずだ。
ワタナベヒロシの作る曲はストーリー性が強く繊細でありながらも力強い何かを感じさせてくれる物が多く実に粋である。
hiroshi watanabe - the leonids @ sunsetlounge
今後の活動に期待が高まる一方、来月リリースとなるMIXCDも注目せざるを得ない。アーティストとして活躍する彼だが、DJとしても世界的に活躍しており4年ぶりに発売される「Contact to the Spirits 3」は現在のDJワタナベヒロシを存分に堪能できる内容となっているに違いない。
前作ではデトロイトやアフロテイストのあるハウス、プログレッシブハウスなどをライブ感満載で味わうことが出来る作品だったが、4年たった彼のミックスはどう進化しているのか非常に楽しみな作品だ。
TEXT:おおはた