サ上と中江は、サイプレス上野と中江友梨によるヒップホップユニット。サイプレス上野は、サイプレス上野とロベルト吉野として活動するラッパー。かたや、中江友梨はエイベックスのアイドル、東京女子流のメンバーです。2015年結成当初の年齢はそれぞれ34歳と17歳。17歳差というジェネレーションギャップを歌詞にしている『SO.RE.NA』が代表曲です。
ラップが日本で最初に流行した頃に人気のあった、1994年のヒット曲『DA.YO.NE』(ダ・ヨ・ネ)を意識しているであろうこのタイトル。歌っていたのはEAST END×YURIでした。女性メンバー市井由理は、中江友梨と同じ名前です。東京パフォーマンスドールのメンバーでした。「東京」とつくグループのメンバーであるところも似てますね。
“BACK IN THE DAYS あの娘とTEL したくても下手したらオヤジが出る
ポケベル握りしめ公衆電話 ※2※2からスタート連絡
山ほどあったテレカも END 携帯どころかピッチもねぇ
それでも繋ぐ二人のハート 多くの壁乗り越えるのさ
え?ポケベル?それって一体何?
え?何それウケる そっか無かったの LINE
滅多には使わない家電 昔って本当大変
とりま、ワズからウィル目指して一緒に さ、ガンダ!
ちょっと待てそれ何語? 理解出来ない何もかも
不安になるぜ日本の教育 頼むから日本語で OK?”
1番はサ上のパートから始まります。ひと昔前の過去を歌うフレーズ。「下手したらオヤジが出る」家電しかなかった時代。「ポケベル握りしめ公衆電話」という歌詞も今は昔ですね。携帯が普及してからは、公衆電話はほとんど使われません。「テレカ」は、テレホンカードであり、一昔前は公衆電話を使う際の必須アイテムでした。「それでも繋ぐ二人のハート」と、電話をつなぐことと、心をつなぐことをかけています。
これに対し中江が返答。「ポケベル」「うける」「なに」「ライン」「いえでん」「たいへん」と、韻を踏んでいきます。「とりま」から始まるフレーズも10代ならでは。「とりあえずまあ、過去から未来目指して一緒にさあ、ガンガンダッシュ!」を略語で歌い、これに対し今度はサ上が「頼むから日本語でOK?」と返します。ラップが会話になっているんですね。
“よっしゃー!やっと買えた BEATS
待ちきれない とりあえずマックで開けて着けて自撮り
上げたら気になる皆の RES LINE の最後は嫌なのです
ゴハン行こう 今度遊ぼうって今度は絶対ないんでしょ?
いつの時代もソコは同じみたいね 口約束危ないね”
2番ではまず、中江のパートがきます。「気になる皆のRES」「LINEの最後は嫌なのです」という現代ならではの悩み。自撮りしてなんでもLINEで共有するがゆえに仲間の返答が気になる気持ち。そして、自分の発言が最後になってしまうと返答がもらえなくて寂しいという微妙な感情。普段からSNSを使っている世代ならではのフレーズがきているんですね。「今度は絶対ないんでしょ?」というフレーズに対し、サ上が「いつの時代もソコは同じみたいね 口約束危ないね」と返答します。会話は互いの共通点を探っていくものですが、ここでも共通点が見つかりました。
“ジェネレーションギャップって何?
そんなのは関係無い?
今を生きたい?
それな!”
サビにあたるのはここです。ジェネレーションギャップを歌っていますが「そんなの関係ない?」とうったえる曲です。「それな!」とは、同意して互いを認めるワード。年の差があっても今を楽しく生きようとする気持ちは共通である。「それな!」というフレーズには、そんな気持ちを端的に表現できる良さがあるんですね。
17歳の年の差がある、このユニットならではの曲です。30代と10代、それぞれのカルチャーの勉強になるところがいいですね。こういった年の差ユニットは、企画ものとしてたびたび出てきますが、サ上と中江のすごいところは、結構曲を作っているところ。2016年12月には最初で最後のワンマンライブをおこないます。音楽の楽しみ方というのは様々であり、こういったユニットも、より多くの人が「それな!」と楽しめると良いですね。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)