「関ジャニ∞」で何を思い浮かべる?
関ジャニ∞と聞いて、あなたが真っ先に思い浮かべるイメージは何だろうか。おそらく一番はジャニーズのバラエティ担当、だろう。あるいは錦戸や横山、大倉などの俳優としての活躍もめざましい。しかし冠番組で音楽メインのバラエティを持つほど、実はその楽曲や音楽に対する姿勢への評価も高いのが彼らの魅力だ。
直近ではメインボーカルである渋谷がソロ活動としてカバーアルバムを発売、それに伴うツアーをするなど、歌唱力も充分評価されているが、今回は彼を支える他のメンバーの話をしたい。
安田章大。バンド編成ではリードギターを担当する、まさに関ジャニ∞の『縁の下の力持ち』ともいうべき存在である。個人では映画やドラマなどで俳優、更にバラエティのレギュラーも幾つか持っているが、他のメンバーに比べるとどこか目立たない。
性格としても温厚で天然、背格好の影響もあって可愛らしいと言われがちだが、ひとたびギターを手にしたとき、その雄々しさを垣間見ることができる。
そんな彼は、関ジャニ∞のメロディーメーカーとしてその才能を普段から如何なく発揮している。グループ名義からソロ曲まで、作曲はもちろん作詞も行なう。更に凄いのは、自分のカラーのみに限らず「作詞者のニーズに合わせた幅広い曲作り」ができるところだ。
安田章大 作詞作曲 Dye D?
まずは安田自身が作詞作曲を行なったグループ名義のダンス曲、『Dye D?』を見てほしい。――――
I just can not tell how to love you.
But I know that I need you now. So trust me.
You don't even know how to love me.
Cause you've got know who on earth I am.
I just can not tell what should I do.
So I'm wandering through every night alone.
You don't even know what I'm doing.
But I'm fallin' in forbidden love with you.
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全体の八割ほどが英語詞で書かれているこの曲は、吸血鬼をモチーフとして描かれた物語。闇夜という世界観を想起させる曲調で、ダンス曲としての格好良さもさることながら、メロディーとしては途中で転調したり、巻戻るようなアレンジがなされていたりする。大倉に台詞パートがあるなど、歌割りの細部にまで安田自身が拘って制作した曲だ。
錦戸亮との共作 アイスクリーム
次に錦戸との共作であるユニット曲『アイスクリーム』。企画として、錦戸に「かわいい曲」をやらせるという名目の上で横山が安田と組ませた末に出来上がったのが、恋をアイスクリームに喩えた可愛らしいミディアムテンポのポップな曲。錦戸は「可愛いといってもあざといものはやりたくない」と言ってこの曲を作った。まず全体的に錦戸先行で作り、それを安田が手直ししていった形だという。
――――
傍に居れるだけで満足
高鳴ってく鼓動はドクンドクン
楽しい時間が過ぎていく
僕はまた寂しくなってく
どんどん小さくなっていく
次会えるその日までサヨウナラ
今度はどこで会えるかな
そんときはどんなフレーバー
例えば君が望むならば
愛の歌でも歌うよ フォーエバー
僕の頭を埋め尽くす
煩悩と同じ数108つの小節で届けます
君によく似た甘い言葉を
――――
“鼓動はドクンドクン”という部分で鼓動音を入れたり、 “今度はどこで会えるかな”から“甘い言葉を”まではラップパートになっているが、その前のメロ部分から歌詞が韻を踏んでいたり、歌詞通り“108つの小節”で出来ていたりと、隠れた楽しみどころの多いこの曲。
普段からソロ曲を自ら作詞作曲している二人のユニットだからこそ可能な、まさに錦戸のいうただ「あざとい」のではなく、かわいいだけでは終わらせない技巧に溢れている。しかし全体のパフォーマンスとしてはきちんと「かわいい」として仕上がっているところがプロなのだ。
渋谷すばるが作詞のdesire
更に、シングル初回特典映像として収録されたユニット曲のうちのひとつ、渋谷が作詞、安田が作曲をした『desire』。音源化はされていないものの、隠れた名曲のひとつとして数えられている。安田は作曲時、一緒にユニットを組む相手のことを考えながら曲を作っているというが、近年ソロでも披露されている、独特の高さと力強さを持った渋谷の歌声の切なさにぴったり合う曲になっている。
――――
そばにいるのに逢いたい
ほら今日も遠くて
肌で触れていたいの心も
恋(こ)わしてよ
あなたの声で
縛ってもっと愛で見つめてて
奪って そっと重ねて口唇
離さないで 酔わせて
貴方で このままもう
連れてって 何処へでも
私共(あたしごと)
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渋谷の歌声と歌詞に呼応したかのように、ひたすら切なく、激しく愛を伝えるスタンダードなバラード。彼の歌声を活かすために、余計な技は必要ないということかもしれない。メッセージは真っ直ぐだが、言葉の使い方が独特なのが渋谷らしい。
関ジャニ∞の曲にはこうして音源化されていない名曲も数多く、ファンの中では長きに渡ってそれらの音源化が待たれているところでもある。ライブで聴くのも勿論良いが、CDで歌詞をじっくり見ながら世界観に浸りたい曲でもあるはずだ。
横山裕が作詞 クルトン
最後に、グループ名義曲だが作詞を横山、作曲を安田が担当した『クルトン』。八周年イベントの企画として「センター曲」を勝ち取った横山が自ら作詞、安田が曲をつけた。タイトル通り、歌詞の内容もそのままであったりする。
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(クルトン)パリパリ (クルトン)フニャフニャ
(クルトン)トロトロ (クルトン)フワフワ
クルクルトントンクルトントン
僕というアクセントを活かしてよ
クルクルトントンクルトントン
君のスープで泳ぎたいよー
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歌詞のみ見るとそのまんまだが、横山がセンターというポジションを勝ち得て作った曲であると考えると、その意味は深い。横山は普段、関ジャニ∞の中ではセンターという位置から遠いところに立っている人物。バラエティ担当として、村上と共にそのように振る舞うことが多い。言わば横山は自らを“クルトン”に喩え、“僕というアクセントを活かしてよ”というメッセージにしたといえる。
クルトンとはポタージュスープなどに浮かんでいる、カリッとした賽の目状のパンである。彼はあくまで自分は主役ではないが、しかしメインをうまく引き立てられる存在であることを、こんなふうに表現したのだ。
安田はこれに対し、ポトンとクルトンがスープに落とされるような音から始め、繰り返しを多用するファンタジックな歌詞イメージに合わせて、おもちゃ箱のようなポップさとかわいらしい電子音でメロディーをつくり、転調なども使ってメリハリの効いた飽きさせない曲にした。
音源化されていないものを含め、横山はソロ曲などでもたびたび自分で作詞をしては、安田に作曲を頼んでいる。横山にとって安田の曲作りは、まさに自分を活かしてくれるという信頼があったのだろう。
横山だけではなく、錦戸も何度か自分で作っていた曲を安田に手伝ってもらい、共作となった例がある。そして渋谷も、大倉、丸山を加えた四人でのユニット「すばるBAND」としての楽曲では毎回自分で詞を書き、安田が作曲している。
様々な曲を創作できる安田章大の実力
このように、グループ・ソロ・ユニットを問わず、他のメンバーとも曲作りを多くしている安田は、ポップでキャッチーな曲やギターかき鳴らすバンドサウンド、セクシーなダンス曲からガヤが入るようなネタ曲まで、実に様々な楽曲を発表してきた。それは彼の、音楽やグループ、メンバーに対する愛やこだわりから生まれる無限の可能性のうちのひとつに過ぎない。彼にとっては日々の経験やメンバーとの積み重ねが、更にその幅を広げる手段なのだ。相手や目的によってニーズに合わせ、カラーを変えて作品づくりができる、それが安田の、まだ世間にはそれほど知られていないであろうアーティストとしての部分である。
今後も彼は、様々な色の曲をメンバーたちと作っていくだろう。七色に留まらず変化し続ける彼の魅力的な楽曲とパフォーマンスに、ぜひ注目してみてほしい。
TEXT:祈焔( https://twitter.com/kien_inori )
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