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メトロノームが刻む先に何がある?トクマルシューゴ『Vector feat.明和電機』

トクマルシューゴは、シンガーソングライター。爽やかな歌声もさることながら、楽器を沢山使う独特なライブが特徴です。


トクマルシューゴは、シンガーソングライター。爽やかな歌声もさることながら、楽器を沢山使う独特なライブが特徴です。『Vektor feat.明和電機』は、タイトルにもあるように、明和電機とのコラボ曲。

明和電機は、独特な楽器を制作する現代美術アーティスト。市販されているオタマトーンが有名で、このコラボ曲でもフジベース、魚立琴、パチモクなど独自制作の楽器で参加しています。



“トワトワトワと 明滅すると
ノラノラノラと 現れて
トワトワトワと 続いていく
ベクトベクトベクトベクトベクトル”


「トワトワトワ」「ノラノラノラ」という擬音の歌いだし。歌詞の使い方まで楽器的なのがトクマルシューゴの曲の特徴。「トワ」は、永遠(とわ)にかけていますね。「振り子数え明かして」この曲はメトロノームのリズムで始まるだけあり、メトロノームの歌になっています。メトロノームは、楽器の練習の際に拍を均等に刻む音楽用具。そんなメトロノームすら楽器にして、曲の一部にする遊び心。

「ベクトル」とタイトルの言葉が早速登場します。方向性、座標軸、視点の意味を持つこの単語。メトロノームの規則正しい音の刻みがある種の方向に導いていくことを表現しています。

“全身 仮眠 通り過ごして ゼンマイ巻いて放り投げると
永永遠と
振り子 数え明かして 目眩がまぶたを覆う
この先に鮮やかが溢れると仮定する
催眠がほどけない ヌキアシトサシアシト 手”


これもメトロノームに関する歌詞。「全身仮眠」という表現が面白いですね。確かにメトロノームは、動いていない時は仮眠しているような状態です。ゼンマイを巻いて動かすと「永永遠」と同じリズムを刻むメトロノーム。ここで「トワ」の伏線が「永遠」として回収されました。「目眩がまぶたを覆う」同じリズムの刻みが眠気を誘うと歌っています。

「鮮やかが溢れると仮定する」同じリズムの刻みから鮮やかさが生まれるのではないかと考えている歌詞です。しかし、催眠状態はほどけず抜き足差し足と睡魔の「手」がしのび寄ってきます。

“そんな深く潜ると聞こえなくなるから気付くことはないと思ってた
ねじって
期待の矛先変われば するするとすり抜け
時間の模様がはじけて するすると飛んでく”


「そんな深く潜ると聞こえなくなるから気付くことはないと思ってた」このフレーズは、正直ほとんど聴き取れません。ちょうど、音楽のトーンに変化が出て、深く潜っていく状態を音で表現している箇所。歌詞で「気付くことはないと思ってた」とあるように、聴くほうもここにしっかりと歌詞があることがにわかには気付けません。歌詞すら聞こえなくなるほど眠りに落ちている。

そして、同時にこの曲は音楽の深淵に近づく曲であったことも、このフレーズで分かるのです。深く潜るとは、音楽を深く探求すること。これがあまりに度が過ぎると、周囲の声が聞こえなくなり音楽の真の楽しさに気付けなくなると思っていた。そういう意味です。しかし、そうではないことがこの後のフレーズで分かります。

「ねじって」で曲調は、さらに変化。「トワトワ」「するする」に変化しました。ベクトル、方向性を定めていると思われたメトロノームは、するするとすり抜けるような自由があったということ。同時に音楽をとことん追求したら「時間の模様」=時間という概念そのものがはじけるほどの可能性があったということ。

トクマルシューゴは、通常のJ-POPにはないような楽曲を作ります。こういう作り方だと、曲がもっとマニアックになってもおかしくはありません。しかしトクマルシューゴは、POPさを忘れないのです。それは、トクマルシューゴがメトロノームの音すら楽しむ心を持っているからなんですね。



TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)

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