どこか独特な匂いのする家入レオ。その歌声は何の混じりっけもなく、ただストレートに伝わる。なぜ、彼女が歌うポップスは心の奥まで突き刺さるのか。
それは、彼女の幼い頃の環境が少なからず関係している。実は小さい頃から両親と一緒に住むことが出来ず、親戚の家を転々としていたという。
「わがままを言うと別の家へと送られるのではないか?」そんな不安が常に彼女の心にあり、いつも周りの目を気にしてしまっていたそう。内に溜めた複雑な感情が、魂の込もった歌へと変貌を遂げているのだ。
そんな家入レオが2013年に発売した『太陽の女神』をご存知だろうか?ドラマ『海の上の診療所』の主題歌として書き下ろされたこの曲で、「大切な人に対してどう向き合っているのか」を問うている。
その問う相手はリスナーだけではなく、彼女自身も含まれている。
“大切な人への向き合い方”を綴った歌詞とはどのような内容なのだろうか。
“あれから数えきれない 季節重ねて
尖ってた波は脆く砕け散ってく 夢のキャンバス広がっていく景色を眺めて
僕は君を探してる”
尖ってた波というのは過去の自分、背伸びしてしまっている自分を表しており、その自分は脆くて砕け散るのだ。少し無理をして背伸びをしている時、人は他人のことを羨ましく思う。「夢のキャンバス広がっていく景色を眺めて 僕は君を探してる」というのは、他人の生き方を眺め羨ましく思っている状況を指しているのだ。
大切な人に対する向き合い方は、このままでいいのだろうか。家入レオが歌を通じて大切な考え方を教えてくれる。
“出会いは特別な朝なんかじゃなくて
いつものありふれた午後 ありふれた会話
そんな風に君が笑う 何気ない瞬間
それが運命の物語”
大切な人を「大切」だと心から思える瞬間は特別な時ではない。いつものありふれた午後であり、ありふれた会話からなのである。ここでは何気ない瞬間に気づく「大切さ」を訴え、それを「運命」と表現している。
周囲の大切さに気づいたことにより人生の物語は、運命と深く関わりのあるものとなる。背伸びをしている自分は世界をコントロールしようとするが、「大切さ」に気づいた自分は世界を受け入れる。だからこそ、運命と関わり合いがでてくるのだ。
“僕の心に刻み込まれた太陽の女神は そっと背中照らしてくれる
大事なものはひとつしかない 信じてみよう
永遠に願いを捧げてる”
家入レオは大切な人を曲のタイトルでもある「太陽の女神」と置き換えている。太陽と大切な人はどちらも光と暖かさを届けてくれる。ここの歌詞では背伸びをしていた自分を捨てて、大切な人を信じ抜くことへの決意が見て取れる。
“花は咲いてた壁に向かって
自分以上になること 急ぎ過ぎてしまったのかな?
見るものすべて愛しく思う
君といたいんだ 他になにもいらないから”
花は自分自身であり、大切な人に気持ちを込めて接した結果、壁があると気づく。「自分以上になること 急ぎ過ぎてしまったのかな?」という歌詞から背伸びをしていた自分を振り返っているのがわかる。大切な人を信じた自分であるからこそ、過去の背伸びをしていた自分を振り返られるのだ。
大切な人を信じる心を持つと、「見るものすべてが愛しく思える」ようになる。身近な人へ愛情を注げる優しさが自分自身の大きな成長に繋がると家入レオが教えてくれているのだ。
TEXT:笹谷創( http://sasaworks1990.hatenablog.com/ )