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主観と客観を歌うぼくのりりっくのぼうよみ「sub/objective」は若者の心の叫びだ

弱冠17歳で華々しいデビューを飾った「ぼくのりりっくのぼうよみ」。


華々しいデビュー ぼくのりりっくのぼうよみ

弱冠17歳で華々しいデビューを飾った「ぼくのりりっくのぼうよみ」
変わったそのアーティスト名の理由も彼の楽曲を紐解いていくと理解できるだろう。ポエトリーラップを取り入れ、哀愁を帯びながらPOPに落とし込まれる楽曲群。

彼の心の中を写したようなその世界観が多くの人の心を打っている。言葉の取捨選択が素晴らしく、20歳にもなっていない若さで現代の風潮を表現しており独自のスタイルを作り上げている。

過去、国語の全国模擬試験で1位を取った経験がある天才的な学生は、ニコニコ動画などで曲を配信していた。そのセンスが目に止まり、大手レコード会社から声をかけられたという。彼は俯瞰した目線からしか歌詞が書けないというが、その歌詞にはどんな言葉が紡がれているのだろうか?

若者が悩む問題を歌に。

今回は「sub/objective」を取り上げ彼の言葉の世界を紐解きたい。まず、「sub/objective」というタイトルが衝撃的だ。この曲は15歳の時に作った曲だそうで、「主観(subjective)」「客観(objective)」の狭間で揺れるアイデンティティについて書いたものだ。青年期に誰しもが悩む問題にいち早く気づいた彼は、主観と客観をどのように捉えているのだろうか。

sub/objective 歌詞



ぼくのりりっくのぼうよみ - 「sub/objective」ミュージックビデオ


なんて素晴らしい人生だろうに込めた想い

“いつしかすり替わる一人称から三人称へ 二元論でしか世界を観れないのは哀しい
全てにapathyだから魂奪われて融ける いつしか物を見ている自分を見るようになった
人からどう見えてんのか それだけ気にしてる なんて素晴らしい人生だろう”

「二元論でしか世界を観れないのは哀しい」主体(行動する自分)と客体(自分の行動を見る自分)のみでしか世界を観られない己を恥じる。それがわかっていながら、なぜ抜け出せないのか。「魂奪われて融ける」の魂を心と考えれば自ずとわかる。頭では理解していても心をコントロールできないのだ。それを「融ける」とぼくのりりっくのぼうよみは表現する。

しかし、心は完全にapathy(無関心)に飲み込まれるわけではない。「融」という字が示すごとく自我とapathy(無関心)が互いに混ざり合った状態になるのだ。そんな自分を客観的に見て「なんて素晴らしい人生だろう」と皮肉なメッセージを送る。

答えは示さない。

“世界が反転 引き裂くプライド 
ズタズタにしては 捨ててきた愛情
要らないものをひとつひとつ
最後に残った一つは一体なんだろうね”

プライドを引き裂き、愛情までも捨てる。これこそ青年期のモラトリアムであり、成長するために自分を剥いでいるのだ。自分を守っていたもの全てを消した時は何であるのか。

ここで、あえて彼はリスナーに問いかけている。多くの若者から支持される理由の一つは、限定的な答えを出さずリスナーに問う歌詞にあるのだ。

矛盾に気づき、代弁する

“高らかにあげる産声と本音 ぐるぐる絡まる円と点と線
どうしたってぼくらは平行線の上 
だから重ならない それも仕方ない?
で諦めるほど過去は軽くない”


心から生まれてくる産声、つまり本音が円や点や線と絡まっているのだ。本音は複雑な状態に陥り、取り出せずに建前(人から見た自分)で生きる。

悩める若者たちはお互いが建前であるために重なり合わず、平行線の上でそれぞれが足掻く。ぼくのりりっくぼうよみは本音と建前を突きつけられ、恐れおののく青年の心情を美しく表現している。

青年期には特に強く感じる本音と建前の矛盾。それを言葉で的確に表した彼は今を生きる若者たちの代弁者である。ぼくのりりっくのぼうよみは言葉の持つ性質を存分に生かした稀有なアーティストだ。


TEXT:笹谷創( http://sasaworks1990.hatenablog.com/

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