下積みで腕を磨いたスキマスイッチ
長い下積み時代を経験しトップアーティストとして世に躍り出たスキマスイッチ。透き通った声に魅了される…
透明感のある声でリスナーを魅了する大橋に、作品のクオリティにこだわり続ける常田からなる正統派のグループだ。今や世間の誰もが知っているアーティストであるが、ここまで簡単にきたわけではない。活動休止や解散の危機、スキマスイッチに対する強い想いは時に2人の亀裂を生んだ。
お互いがコミュニケーションをとらないまま楽曲制作に望んでいたこともあったのだとか。メールのやり取りだけで曲だけが仕上がっていく。お互いの言いたいことを言わないまま、いつの間にか想いはストレスに変わっていた。そんな状況を打破するため、彼らは活動休止を選んだ。
ファンの間では「そのまま復活することはない」とまで囁かれていた。しかし、彼らは後ろ向きな理由で活動休止を選んだのではない。
スキマスイッチに新たな風を吹かせるため、ソロ活動という茨の道にあえて進んだのである。2人の執拗といえるまでの熱い想いは、大ヒットナンバー「全力少年」の歌詞からも紐解ける。
魂がこもった歌詞
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躓いて 転んでたら置いてかれんだ
泥水の中を今日もよろめきながら進む
汚れちまった僕のセカイ 浮いた話など無い
染み付いた孤独論理、拭えなくなっている
≪全力少年 歌詞より抜粋≫
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全力少年は明るく力をもらえる曲であることに間違いはないが、ただそれだけの曲ではない。彼らが魂を込めて書いた歌詞に注目をしてほしい。
「泥水の中を今日もよろめきながら」「染み付いた孤独論理」などありそうでなかった表現が出てくる。それらは、セカイの不毛さや憂鬱を自らが経験している彼らだからこそ生まれてくる言いまわしだ。
セカイを「理解」で捉え孤独理論を作り出す。この時、直感や感覚といった感性が鈍ってしまっている。生きている心地や何かに挑戦する気概を感じるためには後者の感性が必要となる。
その感性を取り戻すべく下記の歌詞に続く。
覚悟を決めると、飛躍できる
----------------覚悟を決めたはずなのに、いや、覚悟を決めたからこそ先ほどの「孤独論理」を打ち立ててしまったのかもしれない。真剣に向き合うことほど勇気のいるものはない。時にその反動が「仕方ない」と諦めの言葉を吐かせることもあるのだ。
試されてまでもここにいることを決めたのに
呪文のように「仕方ない」とつぶやいていた
≪全力少年 歌詞より抜粋≫
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しかし、その「仕方ない」は無意味ではない。大切な感覚を取り戻すためのバネとなるのだ。覚悟を決めて立ち向かっていたからこそ、そのバネは大きな跳躍を生む。
経験から得るもの
----------------誰もが耳にしたことのあるサビのフレーズ。これまでの悩みが一気に力に転換された瞬間である。
積み上げたものぶっ壊して 身に着けたもの取っ払って
止め処ない血と汗で渇いた脳を潤せ
あの頃の僕らは きっと全力で少年だった
セカイを開くのは誰だ?
≪全力少年 歌詞より抜粋≫
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「止め処ない血と汗で乾いた脳を潤せ」この秀逸な歌詞から、体の底から溢れ出てくるパワーは言い訳の理論を凌駕すると理解できる。自然と漲るその力の裏では、少年のような純粋でむき出しの感性が目を覚ましているのだ。
経験や学習というのは悪い面がないように感じる。そこから理論を積み上げたり、世間に収まる常識を身につけたりできる。
しかし、それは時に純粋な感性を埋もれさせる。
「積み上げたものぶっ壊して身につけたもの取っ払って」というフレーズは“経験や学習で得てきたものをリセットしてみてはどうか?”とリスナーに問いかけている。
頭で考え出した理論をぶっ壊して、世間をずる賢く生き抜く知恵を取っ払って生きる。スキマスイッチも全てをぶっ壊し、次のステージへと進むべく階段を駆け上がったのだ。頭でいくら理論を打ち立てようとセカイは変わらない。
「セカイを開くのはいつだって全力の行動なのだ」と気づいた彼らはそれを歌にし私たちに伝えてくれている。
悩んだときには、この歌を。
この名曲を生んだのはスキマスイッチの音楽に対する姿勢であるが、すべての初心にある「全力」という大切な心持ちは何をするにしても必要なのである。壁にぶつかり思い悩んでいる時、この歌を聴いて欲しい。何に悩んでいたかを忘れるぐらいスッキリとした自分に会えるはずだ。
TEXT:笹谷創( http://sasaworks1990.hatenablog.com/ )