いつまでも色あせないサザン
サザンオールスターズは、30年以上にわたり活躍するバンド。30年以上も活動していれば様々な楽曲があり、『マンピーのG★SPOT』というとんでもないタイトルの曲まで存在します。
この曲がシングルであることも、このタイトルでゴールデンの歌番組で歌えることもすごいです。そんなことが許されるのは、ヒット曲を多数持つサザンだからでしょう。
桑田佳祐は、いったい何を考えてこの曲を作ったのでしょう?
マンピーのG★SPOT
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芥川龍之介がスライを聴いて
"お歌が上手"とほざいたと言う
≪マンピーのG★SPOT 歌詞より抜粋≫
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この曲は、2番で「芥川龍之介がスライを聴いて”お歌が上手”とほざいたと言う」という印象的なフレーズが出てきます。
芥川龍之介は、日本の作家。POPSの歌詞の中にこの作家の名前が出てくることも、まずありません。1892年から1927年まで生きた非常に有名な小説家であり「蜘蛛の糸」「トロッコ」などで知られています。
スライは、スライ&ザ・ファミリー・ストーンのこと。1960年代後半から70年代にかけて活躍したファンクバンドです。
時代が異なるので、芥川龍之介は生きている間にスライを聴けることはありません。「芥川龍之介がスライを聴いて“お歌が上手”とほざいたと言う」という状況は、現実にはあり得ないのです。
では、このフレーズは何を表しているのでしょうか?
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たぶん本当の未来なんて
知りたくないとアナタは言う
≪マンピーのG★SPOT 歌詞より抜粋≫
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笑う人生にビジョンなんて
およしなさいとアナタは言う
≪マンピーのG★SPOT 歌詞より抜粋≫
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Come On!!情熱や美談なんて
ロクでもないとアナタは言う
≪マンピーのG★SPOT 歌詞より抜粋≫
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この「芥川龍之介がスライを聴いて」にあたる部分の、他の歌詞を見ていきます。
「本当の未来なんて知りたくない」「笑う人生にビジョンなんておよしなさい」「情熱や美談なんてロクでもない」それぞれこう歌っています。
いずれも歌詞上の「アナタ」が否定していることなんですね。「ほざいた」というのもバカにしている表現。「アナタ」は「本当の未来」も「人生にビジョン」も「情熱や美談」も全て否定しているのです。
そして、これと同様に「芥川龍之介がスライを聴く」ような架空の出来事すら否定している。
他に何がある?
では人生のビジョンや情熱や架空の出来事も否定して、何が他にあるのか?
この世にあるのは「無情の愛」=愛のないセックスや「ベッピンな美女を抱いて宴に舞う」ような欲望ばかりだと言っています。
この曲は、目の前の欲望の前には他のことは全て無意味になってしまう「人の業」を歌っているんですね。芥川龍之介のような優れた文学も、スライのような素晴らしい音楽も、文学性を持った歌詞とブラックミュージック要素をもつサザンの曲も、エロや欲望の前では無意味なものとして扱われてしまうのです。
それは、この『マンピーのG★SPOT』という曲が、タイトルフレーズのインパクトが強く残り「この曲は歌詞に意味がない」とされがちなことと似ています。人は強い欲望を目の前にしてしまうと、他のことが霞んでしまうんですね。
そして桑田佳祐は、そんな「人の業」すらも笑いにしてしまうのです。
この曲は、ライブにおいて桑田がハゲカツラをかぶって暴れる曲です。エロい単語を連呼してるだけで全く意味のない歌。
そう思われて大いに結構だし、それで間違っていない。でもそういう曲でも、しっかりと作る。だからサザンはずっと人気なんですね。
TEXT 改訂木魚(じゃぶけん東京本部)
1978年6月25日にシングル『勝手にシンドバッド』でデビュー。 1979年『いとしのエリー』の大ヒットをきっかけに、日本を代表するロックグループとして名実ともに評価を受ける。 以降数々の記録と記憶に残る作品を世に送り続け、時代とともに新たなアプローチで常に音楽界をリードする国民的ロ···