心変わりを相手の女性から感じている
シーグラス 歌詞
シーグラスの舞台は『今年最後の海』『夏の終わり』。この歌を聴くと、夏の恋の爽快感と同時に憂いで胸が一杯になる。何故って、夏や海というまぶしさが嬉しくなる言葉と一緒に『最後』だとか『終わり』なんて悲しい言葉が同時についてくるから。
この言葉達から想像出来る様に。この男性は“心変わり”を相手の女性から感じているのだ。
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君の目で世界を見てみたい
僕には見えないものが見えるはずだから
今はまだ答えを知りたくない
喜びと悲しみに出会うべき時に
――――
今まで、好きという気持ちを明らかに見て取れていたのだ。しかし、今の彼女からは気持ちを見て取る事が難しい。好きなのに勘ぐって不安になる。そんな暗い気持ちを払拭したい。それならばもう、君の目で世界を見ればいい。その目に僕が映っているのか。そうでないのか判るから。
視覚で単純明快さを好む男性らしい考え方だ。しかし、その考え方とはうらはらに明快な答えを知るにはまだ彼女を愛しすぎている。そんな心情が、これもまた明快に『今はまだ答えを知りたくない』と歌われる。
彼女が見ている『世界』に“誰”がいるのか。見てしまえば、それは間違いなく、彼女の心変わりの先なのだ。
一層の事、見てしまえば、不安から解放されるという『喜び』が訪れ。そして瞬時に“さよなら”の『悲しみ』が少し先の未来をノックしにやってくる。
その未来で想定されるであろう、感情と結果との出会いを受け入れるには。まだ、『見えない』ふりをして、『答え』と未来を先延ばしにしてしまわずにはいられないのだ。
愛情と比例して率直にはなれない事もある
――――波に洗われた ガラスの欠片を
集めて蝋燭に火を灯した
君が笑ったら 空気が震えるから
儚い思いが少しこぼれた
――――
終わりを急ぐ夏とは真逆に、ゆっくりと波打ち際を二人で歩きながら角の取れた。幸せを象る指輪のような、まあるく優しい「シーグラス」を探して歩いたのだろう。シーグラスを重ね合わせて作るキャンドルホルダーに灯された火。それは疑う物のなどない、自然そのものを通した純粋な灯りだ。
そんな、灯りが目の前に灯されて。笑顔が溢れた彼女を見てしまえば。“終わらない未来”という儚い未来を願う気持ちも、思わず溢れてしまう。
男性というのは、女性を守るためには驚く程の感情を露にする事がある。逆に、女性の体裁を守る為には、自分の感情にフタをし本音とは逆の建前で強く立っていられる。全ては女性を守るために。男性の恋心というのは愛情と比例して“率直”にはなれない事もあるのだ。
――――
破り捨てられた ノートの欠片を
集めて青空に撒き散らした
君が泣くまでは 僕は泣かないから
儚い願いが届く時がきっと
――――
最もその事を感じるのがこの一節。ノートの欠片を大空に撒き散らす、なんて大胆なのだろうか。しかし、この行為は後に続く『君が泣くまでは、僕は泣かないから』という、彼女が自分へ出す『答え』。そして自分が抱く『儚い願い』が叶わないかもしれない不安を押し殺して、辛抱く待つフラストレーションを強く表しているのだ。
本当は「行かないでくれ」と泣ければ楽。それはわかっている。でも彼女が答えを出す前に泣いてしまったら。優しさから答えを言えず苦しむだろうと。彼女の心を想っているのだ。だから、自分の感情に目一杯で堪える。
どうして、男性は我慢する事を選ぶのだろう。どうして、男性は言わないのだろう。我慢せずに言って欲しい事はたくさんあるのに。と、女性としては想う事も少なくない。
大事であればあるだけ臆病にな
――――今年最後の海へ向かう
汐風が赤い髪を梳かす
丸いガラスを光に透かして
次の言葉を探してる
――――
汐風に撫でられた髪を、今の自分は撫でる事を躊躇する。どことなく感じてしまう愛しい人の心変わり。伝えたい言葉を上手に伝えようとすればする程。言葉に詰まるのだ。
そして、伝えなくてはならない言葉からはどんどんと離れて。別の言葉を探しはじめてしまう。
男性の恋はなんて不器用なのだろうか。そして、大事であればあるだけ臆病になるのだろう。
愛情から生まれる切なさに寄り添う
ストレイテナーの歌うシーグラスは、男性の恋心を歌っているが。女性もその恋心に共感する。それは、恋する相手を大事に想うが故に起こる様々な感情から生まれる“切なさ”が男女を越えて胸に沁みるからだ。今年20周年を迎えたストレイテナー。10月にはファンが選んだ楽曲の投票ランキングを元にしたベストアルバムがリリースされる。このシーグラスが男女の心を揺さぶって、たくさんの愛情を受けながら投票されている事を密かに期待している。
今年の夏もすぐそこだ。このシーグラスが男女が分かち合える、愛情から生まれる切なさに寄り添って。短い夏が終わった後も、シーグラスとは真逆の“続いていく恋”がたくさん灯ると良いなと想う。
TEXT:後藤 かなこ
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