表現者 ぼくのりりっくのぼうよみ
ぼくりりの最大の個性は言うまでもなくそのリリックだ。10代の感性に裏打ちされた歌詞はときに毒をはらみながら対象に切り込む鋭さを持ち、同世代のアーティストだけでなくジャンルを超越して異彩を放っている。「つきとさなぎ」はそんな彼の現在地のさらに一歩踏み込んだ場所から発信されている曲だ。これまでどちらかと言えば外部に向けられることの多かった視点は表現者である自分に向けられ、その刃は容赦なく自身を切り刻む。
つきとさなぎ 歌詞
青年棋士の葛藤、そしてその先へ
"この一歩を踏み出した先は崖 飛べない羽みたいだね ただ笑えるサナギのまま羽ばたけなbutterfly 殻から離れることも叶わない"
映画「3月のライオン」前編の主題歌になった「Be Noble」で孤独な青年棋士の胸中に託して歌われた葛藤は、ここではよりストレートな表現で語られる。
それだけであればこれまでとあまり変わらないかもしれないが、そこから前に進もうとするのがこの曲の違うところだ。
「表現する」ことの表と裏
"あきらめたはずなのにいつも捨てられないのは残酷な可能性がぼくを離さないから"
表現者として歩むこと、それは自身の限界を常に背負うことでもある。時に底なしの自己嫌悪に自らを追いやる絶望と隣り合わせの道、それが真実だとしたら表現することはあまりにしんどい。
けれどそこには同時に希望も存在する。そのことに「ぼく」は気づいていて、あきらめたはずの自身の中に「残酷な可能性」があるから進むことができるのだと。
生きること、表現することのカルマを赤裸々につづったライム。
対象を直観的に把握する才能はさらに研ぎ澄まされて聴き手に突き刺さる。表現者としての自覚を秘めた「つきとさなぎ」は、ぼくりりの新章を告げるマイルストーンなのだ。
早くより「ぼくのりりっくのぼうよみ」、「紫外線」の名前で動画サイト等に投稿を開始。高校2年生の時、10 代向けでは日本最大級のオーディションである「閃光ライオット」に応募、ファイナリストに選ばれる。 提携番組であるTOKYO FM「SCHOOL OF LOCK!」で才能を高く評価されたことで一躍脚光を···