私は「負の感情こそが、この世の真実」だと思ってる
――凛さんは、小さい頃からアニソンシンガーへ憧れていたそうですね。
暁月凛(以下、凛):小さい頃から好んで歌うのはいつもアニソンばかりだったので、アニソンシンガーになりたい気持ちは昔から強かったです。
――そこまでアニソンへ夢中になるきっかけ、とても興味があります。
凛:小さい頃夢中になっていたのは「名探偵コナン」なんですけど、「私、ヲタクなのかも?」と意識するようになったのは、「コードギアス 反逆のルルーシュ」へ夢中になってからでした。ただ、今振り返ってみたら、「名探偵コナン」の頃からテーマ曲へ夢中になっていたよう音楽的な影響はその頃から受けていたと思います。
アニメが好きになり、アニソンへ夢中になってからはポップスは聴かなくなりました。アニソンこそ、私の中では基本としてある音楽なんです。
――アニメへ夢中になったとき、声優になりたいとは思わなかった?
凛:子供の頃は声優さんへの憧れは抱きましたけど、演じるってとても難しいこと。私自身、声優とアニソンシンガーを比べたら「歌のほうが向いてるなぁ」と思えてたし、何よりも歌うことが大好きだったから、自然とアニソンシンガーを目指していました。
――その道を選んだのは間違いではなかったですね。凛さんの突き抜けるような力強い歌声へ触れたとき、まさにアニソンを歌うに相応しいシンガーだと思えました。
凛:私が歌へ求める美的感覚自体がそうなっていますからね。
――凛さんがとくに強い影響を受けたアニソンがあったら、ぜひ教えてください。
凛:アニメ「神無月の巫女」のオープニングテーマとしてKOTOKOさんが歌った『Re-sublimity』です。この歌には、普通のポップスにはない心の痛みや負の感情が美しく描写されています。
ポップスって前向きで明るい歌が多いように、負の感情へはあまり触らないようにしているんですね。でも、私は「負の感情こそが、この世の真実」だと思ってて。負の感情から逃げるどころか、その感情へ直視していく術を持っているのがアニソンだし。何より、KOTOKOさんの歌った『Re-sublimity』こそ、まさに私が求めていた感情を具現化した歌でした。そこから余計に、「私にはアニソンしかない」と思うようになりました。
――アニソンにも、ダークサイドな面へスポットを当てた楽曲はいろいろありますからね。
凛:そうなんです。とくに私は「ダークな曲」が好きの基準になっています。もちろん、最終的には明るかったり前向きになるのも良いなとは思っていますけど。何よりも一番大事なのが、そこへ向かうまでの気持ちの変化の中へどれだけリアルな感情が描き出されているか。私の場合、そのリアルさの中へネガティブな面が強いほどに惹かれてしまいます。
――ネガティブな要素に惹かれる。そこにも理由があるのでしょうか?
凛:ネガティブな要素というよりも、「真実こそが一番大事」だと私は思っています。その中でも私の場合、ネガティブな感情にこそリアルを覚えてしまう傾向が強いんですね。だから、ネガティブな要素に惹かれてしまうんですけど。その歌の結末がたとえポジティブであろうと、そこへ至るまでの感情やポジティブな想いが真実でさえあれば、自分はそれを素直に受け止め楽しんでいます。
むしろ苦手なのが、無理矢理ポジティブに持っていこうという歌なんです。アニソンはネガティブな感情さえリアルに描き出してゆく。だから私はアニソンへ惹かれ続けているんだと思います。
――みずから作詞をしようとは?
凛:作詞の勉強はしています。私、文学も好きだし、普段から痛いポエムを書いてるように、何時かは自分の書いた歌詞で歌ってみたいです。
私がイメージしていた「真のアニソン」なんです
――1stシングル『決意の翼』が、アニメ「金田一少年の事件簿R(リターンズ)」のエンディングテーマに。2ndシングルの『コノ手デ』も、アニメ「青の祓魔師-京都不浄王篇-」のエンディングテーマへ起用。さらに3rdシングルの『マモリツナグ』も、アニメ「銀の墓守り(ガーディアン)」の主題歌に起用中。発売した全シングル曲がアニソンナンバー。まさに、理想的な道を歩んでいません?凛:まさか、こんなにもアニメのタイアップ曲をいただけるとは想像もしていなかったから、とても嬉しいです。きっと今でも「これは夢だから」と言われたら、「あっ、そうか夢だよね」となってしまいそうなくらい(笑)、夢みたいな日々を過ごしています。しかも、どれも魅力的な作品であり楽曲だから本当に幸せなんです。
――スタートがアニメ「金田一少年の事件簿R(リターンズ)」のエンディングテーマ曲、もう最高の出だしじゃないですか。
凛:『決意の翼』は、私の中では「真実な気持ちを歌ったポジティブナンバー」。デビュー当時の私自身の気持ちがそのまま歌詞へリアルに投影されているように、とても身近に感じている楽曲です。
これまでに発売したどの作品もそうなんですが、どれも自分で感情移入しやすい歌ばかり。だから、どの歌にも私自身の感情をとても込めやすかったです。中でも、アニメ「青の祓魔師-京都不浄王篇-」のエンディングテーマとして流れた『コノ手デ』は、私がイメージしていた「真のアニソン」なんです。そういう楽曲と早い時期に出会えたのは、とても幸せなことでした。
――次の新しい出会いになったのが、アニメ「銀の墓守り(ガーディアン)」の主題歌『マモリツナグ』になるわけですね。
凛:『マモリツナグ』は、私の表現者としての意識を変えてくれた楽曲になりました。
――それは、どういうこと?
凛:よく、「好きと似合うは異なる」と言うじゃないですか。私が『マモリツナグ』を歌うに当たって意識したのが、「自分の歌声に似合う楽曲はどういう表情なのか!?」「自分がリスナーのみなさんの心へ歌を届けるうえで、一番最適なのはどんな曲調なのか!?」ということでした。もちろん大好きな曲調ですけど、より客観視しながら、楽曲候補の中から『マモリツナグ』を選んだ面もありました。