ミュージック・ビデオあるあるを詰め込んだ歌詞が面白い『MUSIC VIDEO』が人気ですね。
そんな岡崎体育の『Explain』は、タイトルどおり曲を「説明」している曲。ありそうで、なかなかない曲です。
“ゴリゴリのイケてるイントロ終わってここがAメロ
わりと気持ちよく歌い上げる感じで
この辺りからピアノが入ってきていい感じになる
メジャーで活躍するバンドがやりがちなアイデア”
「ゴリゴリのイケてるイントロ」が終わったら「ここがAメロ」と、冒頭から曲の構成を説明します。「わりと気持ちよく歌いあげる感じ」で、Aメロが歌われがちなことを示してますね。「このあたりからピアノが入ってきて」という展開は、歌詞にされて改めて気づく人もいるのではないでしょうか。
これらは「メジャーで活躍するバンドがやりがちなアイデア」だそうです。バンド以外でも、POPSだとこういうパターンはよくあるような気がしますね。曲の構成を説明しているだけですが、POPSをよく研究しているからこそ出てくる歌詞。
“突然の Rap こういう Rap の部分は2番のBメロ終わりにありがちだけど
まさかの序盤で Rap しちゃってる岡崎マジぱねぇ
そしてここから「ううぃーーーん」てシンセの音が上がっていってて
ドラムのビートが速くなってきて サビ始まりますか?”
「Bメロの終わりにありがち」だというラップが、ここで登場します。この指摘も歌詞にされることで気づきますね。Bメロの終わりにありがちなラップをあえて前半にもってくることで意外性を出しています。
サビ直前の盛り上げる仕掛けも「ううぃーーーん」というシンセ音、「ドラムのビートが速くなっ出てきて」という音の響きで説明してくれます。音楽に詳しくない人にも非常に分かりやすい説明。この曲は、かなり親切な歌詞なのです。
そして「ここからサビ」の歌詞と共に、サビに突入。この曲はメロディやアレンジもしっかりしていて、面白いだけでなく曲としてしっかりしているのがすごい点。岡崎体育は、笑いだけで終わらせずに、しっかり曲を作り込むのです。
“大事な1番のサビが終わって2番に入った瞬間に
実は口パクだったことをみんなにカミングアウト
だから歌ってる途中に 水分補給もできる 便利”
2番では、なんと自身の「口パク」を「カミングアウト」します。岡崎体育は、口パクしていることまで、堂々と歌詞にしてきました。「歌ってる途中に水分補給できる」というギャグも忘れません。ライブでは、実際にここで水分補給をして笑いをとります。
1番の歌詞は、曲に関する説明でした。2番の歌詞は、岡崎体育自身の説明になっていきます。2番の歌詞で、よりパーソナルな部分に触れていくのも、POPSでよくあるアイデア。岡崎体育は笑いを挟みつつも、自身のパーソナリティをしっかり入れてきているんですね。
“最後のサビ 俺はまだ歌っているんだ
お前ら 覚えとけ俺が岡崎体育だ
胸の BASIN TECHNO の文字は消えることはない
俺はまだ歌ってるんだよって言ったもののやっぱ口パクだ
いつかはさいたまスーパーアリーナで口パクやってやるんだ 絶対”
最後のサビは、岡崎体育の目標の説明になります。「胸のBASIN TECHNOの文字は消えることはない」は、実は非常に強い意志のこもった歌詞。「BASIN TECHNO」は、盆地テクノのことです。自らが作りだす盆地テクノをずっと続けていく!と宣言しているんですね。さらに、極め付けは「いつかは さいたまスーパーアリーナで口パクやってやるんだ 絶対」の歌詞。「さいたまスーパーアリーナ」は、武道館よりも収容人数が多い、かなり広い会場です。そこで、口パクライブをするという宣言は、かなり無謀のようにも思えます。しかし、すでにミュージックステーションほか多数の番組に出演し、知名度を急速に上げている岡崎体育。さいたまスーパーアリーナまで行くのでは?と思わせる力を持っているんですね。
よくあるがゆえに、歌詞にしようとする人がいなかった「曲の構成を歌詞にする」というアイデア。岡崎体育の発想、法則を発見する力のすごさが分かります。メジャーな曲のパターンの勉強になり、さらに笑える。そして岡崎体育の壮大な目標を知ることができる。まさに端的に色々なことを「説明」している曲なんですね。
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