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織田哲郎「いつまでも変わらぬ愛は」亡くなった兄に書かれた曲だった

作曲家として名を馳せている織田哲郎。ZARDや相川七瀬、DEENにTUBE、大黒摩季と彼が作曲に関わったビッグなアーティストは数知れない。一時代を築いたアーティストやクリエイターが所属するレコード会社『ビーイング』の立ち上げにも関わった。
子供の頃、彼は両親の仕事の関係で様々な地を転々としていた。中学時代にはロンドンに住んでいたという。彼が住んでいた1970年代は、街ではグラムロックが流行していた。ブームのスターでもあったTレックスの音楽は織田哲郎の心に響いた

中学生だった彼はディスコやライブハウスに出入りするようになり、実力のあるバンドを目の当たりにした。イギリスでの生活は画家を志していた織田哲郎に大きな影響を与えた。大学へ進学する頃には音楽で生計を立てると誓うようになっていたのだ。

織田哲郎は作曲家としてだけではなく、シンガーソングライターとしても多くの名曲を残している。1992年に発売されたシングル「いつまでも変わらぬ愛を」はオリコン1位を獲得している。
同曲は一般的に恋の歌として捉えられているが、実は29歳で亡くなった兄に書かれた歌なのである。若くして心臓発作で亡くなった兄に対して、織田哲郎はどんな想いを込めたのだろうか。




“小さな週末の冒険 朝焼けが君を照らしてた
はだしの2人の足跡 白い波がすぐ消し去っても
ふれた指先に感じてた 永遠に続く
青い夏のイノセンス” 



イントロで流れてくるトランペットの繊細な音色から哀愁を感じる。
その音色は、天国にいる兄の叫びのようにも聞こえる。「小さな週末の冒険」という詞から、リスナーは少年時代の兄弟の関係を思い出す。
本人たちにとってはとても大きな冒険なのだが、大人から見ればそれは仲睦まじい光景にしか見えない。大人になった織田哲郎の目線から兄弟の冒険を捉えることにより、リスナーの想像力を刺激しているのだ。


“いつまでも変わらぬ愛を
君に届けてあげたい どんなに季節が過ぎても
終わらないDay dream”



夢想といった意味を持つ「Day dream」、その言葉から兄が亡くなったのが信じられない気持ちが伺える。その反面、現実を受け入れようと「いつまでも変わらぬ愛を」持ち続ける。亡くなった兄は彼の心の中で生きているのだ。
季節と人、移ろいゆくものを「君に届けてあげたい どんなに季節が過ぎても」と織田哲郎は表現している。「変わること」は自然の営みであり、悲しいことではない。織田哲郎はそれを知っている。
同曲は決して湿っぽさを感じさせない。むしろ爽やかささえ匂わしているのだ。自殺を考えたことがあるという彼の「死」への向き合い方が、ここに現れているようだ。


“ふるえるようなあこがれを いつか誰も忘れ去ってゆく
なつかしいなんて言葉で いつかすべて
語りはじめても 陽ざしの中の
その笑顔だけは 変わらないで欲しい
心からそう思う”



上記の詞を読んでいるだけで、彼の想いがひしひしと伝わり涙が出そうだ。兄の死と対面すれば誰でも感情の起伏が激しくなる。その感情を優しく柔らかく表現し、「心からそう思う」という言葉に収斂させている。
織田哲郎がどんな想いを持ち、この曲を作ったのかを想像するのは容易ではない。兄に対して「自分ができることは何か」を考え抜いた結果なのかもしれない。


いつまでも変わらぬ愛を持てたなら人は幸福なはずだ。織田哲郎が兄に送った同曲は、「大切な人を大切にしよう」と心に誓わせてくれるのである。

この特集へのレビュー

男性

2020/03/19 12:45

この考察というか
この考えはとても素晴らしいですね
織田哲郎さんにも影響受けたのは多分自分だけじゃないんだろうなぁ

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