バンドブームの中心的存在 ユニコーン
ユニコーンはTHE BLUE HEARTS、JUN SKY WAKLER(S)、RERBECCAなどのバンドブームの中心的グループであり、それまでになかった語彙や題材を用いた歌詞、ジャンルを問わない音楽性でリスナーの心を掴んだ。予想の斜め上を行くコスプレなど、ユーモアに溢れ時におもしろ可笑しくもあるユニコーン。時代を席巻していた彼らだが1993年には活動を停止する。
同年に発売された楽曲「すばらしい日々」をご存知だろうか。この曲の歌詞は当時のユニコーンの心境を表している。
20代なのに達観した素晴らしい歌詞
その心情はバンドならではなく、懸命に働く大人にある共通な心を唄っているのだ。この時まだユニコーンのメンバーは全員が20代。だが、その達観した歌詞の表現と言葉の奥に含められた歌詞の意味には驚きを隠せない。さらに、音でもユニコーンはメッセージを詰め込んでいる。この楽曲のマイナーな曲調が歌詞をさらに助長しているのだ。
ユニコーンは一体、解散前にどのようなメッセージを残したのだろうか?
ユニコーンが残したメッセージ
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僕らは離ればなれ
たまに会っても話題がない
いっしょにいたいけれど
とにかく時間がたりない
人がいないとこに行こう
休みがとれたら
いつの間にか 僕らも
若いつもりが年をとった
≪すばらしい日々 歌詞より抜粋≫
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ここでは直接的な表現で心情を表している。「僕らは離ればなれ たまに会っても話題がない」これは距離が遠いからではなく、近すぎるからこそなのだ。
長年連れ添った夫婦に会話がないのと同様だ。お互いを知り尽くし、必要以上に距離を詰めすぎてしまったようだ。
「人がいないとこに行こう 休みがとれたら」この部分は大人気バンドであるがゆえの葛藤である。ビッグになればなるほど、複雑な人間関係に巻き込まれていたのではなかろうか。その中で、メンバー同士の関係性も変わってきたはずだ。
もっといい関係を築きたいと心では思っていても、環境によってはそういかない。具体的かつ現実的な言葉を並べているため、リスナーの心にまっすぐ届く。
感覚を見事に落としこんだ 歌詞
----------------「暗い話にばかり やたらくわしくなったもんだ」それは日々懸命に仕事をする人たちに共通していえるのだ。
暗い話にばかりやたらくわしくなったもんだ
それぞれ二人忙しく 汗かいて
≪すばらしい日々 歌詞より抜粋≫
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仕事に真剣に向き合えば向き合うほど、周囲の状況や知りたくない現実が駆け寄ってくる。ユニコーンは20代にして、その感覚を見事に歌詞に落としている。
称えていこう
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すばらしい日々だ
力あふれ すべてを
捨てて僕は生きてる
君は僕を忘れるから
その頃には
すぐに君に会いに行ける
≪すばらしい日々 歌詞より抜粋≫
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「君」は未来の自分を指し示している。未来から覗けば現在の自分は忘れ去られているのだ。
未来の自分に会うために「すべてを捨てて」現在を生きている。「すべてを捨てて」捨てるものの中には、現実から目を背け惰性で生きる心も含まれている。
そう、ユニコーンは辛い現実に立ち向かう自分を称えているのだ。
楽しいことばかりではなくとも、忙しく汗を掻いて過ごす毎日は「すばらしい日々」だとユニコーンは伝える。
TEXT 笹谷創