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スピッツの『空も飛べるはず』は『めざめ』だった

2017年、スピッツは結成30周年をむかえます。数多くの音楽グループがありますが、誰もが知るヒット曲を出し、その上30年継続できるグループというのは、多くありません。すごいことですね。

公開日:2017年7月9日 更新日:2019年4月15日


この記事の目次 []
  1. ・UtaTen特別企画「コラムで綴るスピッツ愛」
  2. ・ドラマ主題歌で一躍脚光を浴びる
  3. ・空も飛べるはず
  4. ・君と出会えた奇跡
  5. ・人の心の成長を優しく描く

UtaTen特別企画「コラムで綴るスピッツ愛」

歌詞検索・音楽メディアUtaTenでは、シングル・コレクション・アルバム『CYCLE HIT 1991-2017 Spitz Complete Single Collection -30th Anniversary BOX-』が7月5日にリリースされるのを記念して、コラム特別企画を実施!

UtaTenライターによる『コラムで綴るスピッツ愛』を7/3から短期集中連載。UtaTen自慢のコラムニスト・ライターが独自の解釈で、スピッツの曲に纏わるコラムをお届けします。

ドラマ主題歌で一躍脚光を浴びる


『空も飛べるはず』は、スピッツが1994年にリリースしたシングル。90年代を代表する名曲の一つです。

もともと別のドラマ主題歌として制作されたこの曲ですが、ドラマ「白線流し」に起用され脚光を浴びることになります。1995年に出した『ロビンソン』で一躍その名を広めたスピッツ。

1996年放送の「白線流し」のドラマのヒットもあり、『空も飛べるはず』は、このバンドに初のオリコンシングルランキング1位と148万枚という売上をもたらします。

空も飛べるはず

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幼い微熱を下げられないまま 神様の影を恐れて
隠したナイフが似合わない僕を おどけた歌でなぐさめた
色褪せながら ひび割れながら 輝くすべを求めて
≪空も飛べるはず 歌詞より抜粋≫
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「幼い微熱」「隠したナイフ」冒頭から青春のあやうさを表現するフレーズが登場します。

幼少の頃から持っている微熱=微妙な熱い感情を下げられない「僕」。神様のような大きな存在を恐れながらも心にナイフのような暴力衝動を隠し持っている「僕」。

しかし、そんな暴力的な面は似合わないことも、「おどけた歌」によってなぐさめられていることで「僕」は自分で理解する。「色褪せ」「ひび割れ」ながらも、「僕」は「輝くすべ」を求めていく。

「微熱」「ナイフ」「色褪せ」「ひび割れ」。この曲はなんとなく聴いていると心地よいだけに聴こえますが、実は冒頭からマイナス面や暗さをイメージさせる歌詞が続く曲です。そんな状況だからこそ「輝くすべ」を求めている歌。

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切り札にしてた見えすいた嘘は 満月の夜にやぶいた
はかなく揺れる 髪のにおいで 深い眠りから覚めて
≪空も飛べるはず 歌詞より抜粋≫
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2番では、こんな歌詞が登場します。「僕」は「嘘」を「切り札にしてた」が、それは「見えすいた」ものだったと「満月の夜」に気付いて「やぶいた」。

「夜」に「髪のにおい」を感じられることから、「君」とかなり親密な関係になっていることが分かります。「深い眠りから覚めて」、「僕」は見えすいた嘘をつかないようにしようと思うのです。

「君」はそんな心変わりをさせるほど、自分を「目覚め」させるほどの存在なんですね。

君と出会えた奇跡


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君と出会った奇跡が この胸にあふれてる
きっと今は自由に空も飛べるはず
夢を濡らした涙が 海原へ流れたら
ずっとそばで笑っていてほしい
≪空も飛べるはず 歌詞より抜粋≫
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そんなマイナス面が続く中で「輝くすべを求めて」いる歌です。

「君」と出会ったことが「奇跡」に感じられる。そして、その「奇跡」は「空も飛べるはず」と感じるほどだ。

「涙」が「夢」を濡らすような悲しいこともあるだろう。でも川の水が「海原へ」流れるように、悲しみもやがて流れたなら、「ずっとそばで笑っていてほしい」。

「飛べるはず」「いてほしい」ということは、現状では飛べていないし、そばで笑ってもらえていないことの表れ。切実な願望の歌なんですね。だからこそ響く。

『空も飛べるはず』には、原曲が存在します。『めざめ』というタイトルで1993年にレコーディングされました。アレンジや歌詞がところどころ異なります。

まず、「おどけた歌」は「懐かしい歌」でした。「僕」をなぐさめたのは「懐かしい歌」だったかもしれない。でも真に「僕」の心をなぐさめてくれたのは、「おどけた歌」だったのではないか。

ナイフを隠し持ったり、ウソを切り札にしてしまうような「僕」には、「おどけた歌」こそが必要だったのでしょう。

有名なサビのフレーズ「君と出会った奇跡」は、もともと「君と出会えた痛み」です。「奇跡」は「痛み」をともなうものだったんですね。

人の心の成長を優しく描く


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ゴミできらめく世界が 僕たちを拒んでも
≪空も飛べるはず 歌詞より抜粋≫
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さらに印象的なのはこの箇所。もともとここは「やがて着替えた季節が 僕たちを包んだら」でした。

「着替えた季節」=季節が過ぎるイメージから、「ゴミできらめく世界」=きらめくほどのゴミだらけの世界=ゴミのような嫌な感情がうずまく現実世界に変わっています。そんな現実にこばまれても笑っていてほしいと、より切実な歌詞になっているんですね。

草野マサムネは「セックスと死」が歌を作る時のテーマであると答えています。この曲は、そんなイメージも抱かせます。そして、曲の穏やかなイメージから爽やかな恋愛の歌のようにも思えます。

さらにドラマのイメージから卒業ソングとしてもよく歌われており、友情を歌っているようにも解釈できます。「おどけた歌」でなぐさめるような僕にとって、「君」は「音楽」そのものだったのかもしれません。

この曲が好かれているのは、ドラマの主題歌だったからだけではありません。ナイフやウソを大事にしていた「僕」が「君」と出会って「目覚め」、そして「空もとべるはず」と思うようになる普遍的な人の心の変化を歌っているからです。

カバーが多数存在する名曲。それだけ多数の解釈が可能であり、多くの人の心を目覚めさせ、空も飛べるような気持ちにさせる力を持っている曲なんですね。

●『空も飛べるはす』/ スピッツ


TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)

草野マサムネ(Vo/Gt)、三輪テツヤ(Gt)、 田村明浩(B)、﨑山龍男(Dr)の4人組ロックバンド。 1987年結成。1991年3月シングル『ヒバリのこころ』、アルバム『スピッツ』でメジャーデビュー後、1995年リリースの11thシングル『ロビンソン』、6thアルバム『ハチミツ』のヒットを機に、多くのファンを···

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