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20周年を迎えたGRAPEVINE「Arma」で歌われる彼らの武器とは?

イントロが鳴り響いた瞬間、圧倒的な存在感に包み込まれる。これが映画のエンディングだったら泣いてしまうかもしれない。 1997年にメジャーデビューし、今年で20周年を迎えるGRAPEVINE(グレイプバイン、以下「バイン」)。
新曲「Arma」はバインの歩みを総括し、未来へ向かう決意表明のような1曲だ。

新曲Armaは>未来へ向かう決意表明のような1


――――
このままここで終われないさ
先はまだ長そうだ
疲れなんか微塵もない
とは言わないこともないけど
――――

Dragon Ashやスーパーカー、トライセラトップスといった「97年組」世代と同じタイミングでシーンに登場したバイン。

ルーツロックに普遍的なポップセンスを散りばめた99年発表のアルバム「Lifetime」によって評価を確立した彼らの前途は、希望に満ちているように思われた。


――――
見ていたのは
今居る場所のまだ向こう
向かい風がやさしく頰を撫でた
無限にあるはずの未来が
掴みかけてはまた遠ざかる
――――

しかし彼らに逆風が襲いかかる。リーダーである西原誠(Ba)の離脱。デビューから5年目にしてバインは3人組として再出発する。

片脚をなくした子犬のように、まったく異なるバランスで最初はぎこちなく、そして徐々に自分たちのペースで作品をつくってきたバイン。
田中和将の紡ぐ歌詞は文学的な表現で感情を切り取るのが特徴だが、そのときどきの心情をストレートに吐露している。

――――
例えばほら
きみを夏に喩えた
武器は要らない
次の夏が来(きた)ればいい
――――

かつてのメンバーを想起させる「きみ」。4人だったバインの季節は「夏」にたとえられるかもしれない。その後のメンバー脱退やレコード会社の移籍。ロックフェスの常連だった彼らもいつしかメインステージからは遠くなった。


タイトルの「Arma」はラテン語で「武器」を意味する。3人になってからのバインはいい意味で身軽になり、持ち前のポップさに磨きをかけてきた。

ジャムセッションを通して曲をつくることも多く、ストリングスやホーンの導入、外部プロデューサーを招くなど音楽的な進化を続けてきた彼らは、自分たちの武器を増やしてきたようにも見える。
ではなぜ、あえてここで「武器は要らない」と歌っているのだろうか?

――――
時の果てまで効(き)きそうな
詩はラテン語だから読めないが
研ぎ澄ませもっと
叶わないなら今日も歌うぜ
――――

時代を超えて残る言葉も伝わってこそ意味がある。書物に記されたラテン語は翻訳しなければ読むことはできない。ラテン語で書かれた「武器」ではなく、自分たちの言葉を研ぎ澄まして、“今”、“ここで”伝えること。

誰かにとっての古典であることを拒み、現在であり続けたいという思いが「武器は要らない」という言葉に込められているのではないだろうか。


――――
物語は終わりじゃないさ
全てを抱えて行く
愛(かな)しみがまだわからない
とは言わせない
とそう思うのさ
――――

「愛しみがまだわからないとは言わせない」という言葉には、つらい過去さえもいとおしみ全肯定する思いが凝縮されている。季節が巡り第2のピークと言える「次の夏」を迎えるバイン。自信に満ちあふれた姿からその充実ぶりが伝わってくる。

愛も欲望もすべて抱えてさらなる望みの彼方へ向かう彼らの物語は、まだまだ終わらなそうである。

田中和将(Vo/Gt)、西川弘剛(Gt)、亀井亨(Dr) 1993年に大阪で活動開始。 バンド名はマーヴィン・ゲイの「I heard it through the grapevine」から借用している。 自主制作したカセット・テープが注目をあびて、1997年にミニ・アルバム『覚醒』でデビュー。 2枚のヒットシングル (「スロウ」「···

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