大学に進学し、知り合いの紹介で弾き語りイベントに参加。この頃から横浜のライブハウスを中心にライブ活動を続け、2004年にインディーズデビュー。
2006年3月、現在所属している事務所と契約をし、「シンクロ」でメジャーデビューを果たし、昨年2016年にデビュー10周年を迎えた。
その、アニバーサリーイヤーを締めくくるのが、6月14日にリリースされる初のベスト盤『ALLTIME BEST ハタモトヒロ』だ。
今回は、数あるタイアップの中から、先月5月3日にシングルとしてもリリースされた『Girl』についてお話したい。
この『Girl』は、現在放送されている読売テレビ・日本テレビ系ドラマ「恋がヘタでも生きています」の主題歌となっている。
過去の恋愛で経験した何らかのトラウマで、恋愛下手になってしまった“恋ヘタ”達が、不安を抱えながらも、懸命に生きていく姿を描いた社会派ラブコメディーだ。
複雑に絡み合う人間関係という少し腹黒くてディープな内容を、秦基博にしか表現出来ない、“ガラスの破片をイメージさせる尖った部分と透き通る透明感が合わさった唯一無二の声”で爽やかに演出している。
その一方で、私は疑問に思った点がある。聞き馴染みのあるこの歌に見覚えはないだろうか。実はこの曲は、2013年にリリースされたアルバム「Singed POP」に収録され、且つ、CMソングとしても起用されていた曲なのだ。
それが何故、4年の月日を経て帰ってきたのか。
それは、ドラマの制作スタッフから激プッシュされたからである。新しい曲ではなく既存の曲が新たな世界で注目を浴びる事は、本人だけでなくファンにとっても嬉しい事だと思う。
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結ぶ指先を 小さな手が握り返す
幸せと いつかきっと 送り届けるから
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実は、タイトルにもなっている“Girl”にはモデルがちゃんと存在していて、秦基博の実の娘であると本人がラジオ番組で公表している。2番サビの歌詞にも出てくる「小さな手」。本来の意味では“赤ちゃん”の手。愛情ソングでは無く、ドラマのような背景に移り変わると、恋愛ソングとしても捉える事が出来る。対象が少女から女性に変わり、「小さな手」は“華奢”な手となり、ドラマの内容にピッタリとハマるのだ。
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なんで こんなにも全部
疑いもしないで そばにいてくれるの
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仕事は出来るが恋愛は苦手な女性社員に、半ば強引にアプローチを仕掛ける男性新社長。その彼の真っ直ぐな気持ちに、最初は戸惑い、疑いながらも徐々に惹かれ、素直に受け止めはじめる。その女性社員に対する気持ちが、見事に乗っかっているフレーズだと感じる。書き下ろしでは無いのに違和感なく聴こえるのは、ドラマスタッフが、この曲を一ファンとして選んだのだけでは無く、ちゃんと理解していたからなのだ。
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ふわり 羽根のよう 僕の頬に君が触れる
それだけで もう 何もかも 救われたつもりになるよ
ふわり 羽根のよう 君が居れば強くなれる
いつまででも 僕がきっと 守ってみせるから
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天使のような微笑み。羽根のように、フワフワと飛んでいってしまいそうで、不安になりながらも確かに感じる優しい手の温もり。その存在だけで、ごく普通の何もかもが、かけがえの無い時間となるのだ。最後の一文である「僕がきっと 守ってみせるから」。“君が守ってくれた分を、今度は僕が守ってみせる”と、優しく温厚な性格だと思っていたところに、男らしく頼もしい一面を覗かせる。そのギャップに、女性ファンの心をくすぐる要素が凝縮されている。
我が子の為に作られたアルバムの中の一曲が、4年の年月を経て、全世代の女性をキュンとさせる作品に生まれ変わった「Girl」。昔から知っている方も、ドラマを通じて知った方も、今月リリースされるベストアルバムを是非手に取って欲しい。有名タイアップばかりが揃っていても、その楽曲の一部分しか聴いた事無いのがほとんどだと思う。この「Girl」も通して聴くと印象がガラっと変わる。単に、10周年を祝う為のアルバムでは無く、“私達がまだ知らない秦基博の姿”を見る事が出来る一枚と言える。
秦基博は、宮崎県生まれ横浜育ちのシンガーソングライターである。
中学生の時に、兄が友人から譲って貰ったギターがキッカケでギターと出逢い、一心不乱に家でギターを弾く毎日を送っていた。
高校生になると、“いちばんラクそうな”軽音学部に所属し、コピーバンドを結成。後にオリジナル曲を書き始める。
公開日:2017年7月26日