“君は越えていったんだ
僕のキャパシティを
君は越えていったんだ
羨んでいるのさ
君の掴んだもの
羨んでいるのさ”
「君は越えていったんだ 僕のキャパシティを」から始まる歌詞。歌詞の主人公である「僕」は、「君」を羨んではいます。きっと、「君」は先に進んで何かを成し遂げたのでしょう。
「僕のキャパシティを」越えたという表現がいいですね。「キャパ」とも略されるキャパシティは、許容量の意味です「君」は単に夢を「掴んだ」人の意味だけでなく、「僕」が許せると思っていた範囲を越える行動ができる人の意味も持つと分かるんですね。
ボーカル長屋春子の声の良さが際立つ曲。歌詞が聞き取りやすいのがいいですね。「越えーていったんだあ」「羨んでいーるーのさあ」と語尾に感情がのる歌い方。この歌い方で、聞き手に歌詞の世界観が伝わりやすくなります。
“足元の鎖が疎ましく感じてる
自分で繋いだだけなのに
耳元で囁く甘い心の声に
うずいてる 揺らいでる
目覚まし時計が鳴る”
「足元の鎖」というフレーズが登場。「自分で繋いだだけ」という歌詞があるとおり、踏み出せない自分・スタートできない自分というのは、多くの場合、自分で鎖を繋いでいるのです。
「耳元で囁く甘い心の声」は、2番では「頭の中を過る弱い心の声」と表現されました。「足元の鎖」と同様に、自分自身のスタートできない心を表現しているんですね。
サビまでの盛り上げがうまい楽曲。「目覚まし時計が鳴る」でサビにわたします。「目覚まし時計」を自分の心の目覚めとかけているんですね。
“さあ始めようか
僕のイメージの先へ飛び立とう
何度でも始まりの歌を歌おうルラララ
もう終わりなんて決めつけてしまわないように
ララルラ ララルラ ララルラ
さあ 歌おう”
サビに突入。「さあ始めようか」という主題が登場します。「僕のイメージの先へ」飛び立つ決意をしました。「もう終わりなんて決めつけてしまわない」ようになりました。鎖に繋がれていた「僕」がキャパシティを越えていくストーリー展開が分かりやすい曲なんですね。
後半のサビには「無限に繋がって」のフレーズが登場し、鎖の繋がりが無限への繋がりに変化したことが分かります。こういう歌詞の絶妙な変化で「僕」の変化が分かりやすくなるのです。
“飛び込んだ世界に雨が降り続いても
ただ信じ続けていればいい”
飛び込んだ世界に雨が降り続いてることもありえます。雨は涙や悲しみの象徴。悲しみが続いてもスタートすることに意味がある。
“握り締めた拳が
解かれないうちに
ハジメルことからハジマル僕のこれからに
少し迷ったらこの歌を抱きしめよう”
「握りしめた拳が」終盤でこの力強い歌詞が登場し、ここを男コーラスが担当して変化をつける構成。ずっと女ボーカルの声で最後まで行くのかと思いきや、終盤でこの変化をもってくるところが面白いですね。緑黄色社会がバンドであることを実感する瞬間です。ここで聞き手のキャパシティに訴えかけているんですね。曲自体が終盤で変化をつけてキャパシティを越えようとしているのです。
爽やかに聞こえる曲ですが、実は「鎖」や「羨んで」などネガティヴな表現も含む歌です。だからこそ人を惹きつける曲。何かを始めるということは、「キャパシティを越えること」であると歌う曲です。鎖だらけの現代人がこの曲を聴いてスタートをきれますように。