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清水翔太「化粧」に、みゆきファンの私が嫉妬した理由

中島みゆきファンである私。大好きな彼女の名曲「化粧」をカバーする清水翔太に嫉妬をしてしまったのだ…。

歌いたくなる「化粧」

「俺、『化粧』っていう歌が好きなんだよねー。歌いたくなる」 友人のインディーズで活躍中の男性シンガーはそう呟いた。

「化粧」…って、もしかして中島みゆきの「化粧」?なんで?

根っからの中島みゆきファンの私は、彼女の歌を「イイね!」と評価されると、その理由をついつい訊いてみたくなるのだ。

中島みゆきといえば、「糸」が頭に浮かぶ人が多いだろう…。それにこの歌は、Mr.Childrenの桜井和寿やJUJUがカバーしていることもあり、世代も広く有名な曲になった。

だから「糸」を良い曲だね、という意見は数多く聞く。人と人の出会いの歌であるこの曲は、名曲と称賛され、結婚式の定番曲としても好まれている。「人生の曲」だから納得がゆくというものだ。

周囲に「中島みゆきさんのファンなの!」と伝えたらば、しばしば「『糸』いいよね!」と言われることがある。ファンとして嬉しいのだが、少し辟易してしまう…。

だって「もっと他にも良い曲はたくさんあるんだよ!」って語りたくなるからだ。いつもその気持ちをグッと抑えている。

魂が震える名曲

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今夜死んでもいいから
きれいになりたい
≪化粧 歌詞より抜粋≫
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この「化粧」という曲は、女性がフラれて、最後にその男に会いに行く時に「今夜死んでもいいからきれいになりたい」と願いつつも…「流れるな 涙 心でとまれ」と、涙を必死で堪える、中島みゆき渾身の恨み節全開ナンバーだ。

しかし、どうしてだろうか。
知人の男性シンガーがドロドロの失恋曲『化粧』を歌いたがった。いったい、なぜなのだろうか?


聞けばわかる

理由は、清水翔太の「化粧」を聞くとすぐにわかるはずだ。「こんなにすごい曲があるのか!」と、誰もが思うはずだ。

それでも、私は「みゆきさんの曲はすごいに決まってる!ぜひ本家も聞いてみて」と、約20年も中島みゆきを推してきたファンである私は必ず「御本家」をお勧めしたくなる。

というのも、やはり彼女が持つ歌に対する表現力に他は敵うわけない!と思っているからだ。

しかし、やっぱり気になって清水翔太の「化粧」も聞いてみたのだ。御本家に敵うわけないさ…という気持ちを抱えつつ。

「あれ?なんか、けっこうイイんじゃない?」
素直にそう感じた。清水翔太がもつ、声の哀愁が「化粧」にとても似合っている。これはこれで味があっていい。違いでいうと、御本家であるみゆきさんの「化粧」は驚くほど感情をあらわにし、泣きながら歌唱している点。

それに対し、清水翔太の「化粧」はグッと感情を抑えて丁寧に歌っている。きっと、Barで生演奏で聴いたとしたら、聴いているこちら側が泣いてしまう!そんな「化粧」のように感じる。

そもそも、この化粧に登場する主人公は、捨てられた自分を最後のプライドでなんとか保ちつつ、涙が流れて化粧が落ちないようにしてバスに乗っているのだ。

完全な強さも人が羨むような完璧さもない…そんな主人公が歌の中にいるから、誰もが抱えている感情に寄り添える作品になるのだと思う。同じように誰もが、好きな人に愛されたいと思って、必要とされなかった哀しみを抱えているのかもしれない。

そして、そんな曲の背景さえも含めて、彼の歌声は綿密に繊細に表現しきっているように思う。

少し脱線してしまうが、清水翔太の曲ならば「君が好き」もオススメだ。特にその歌詞の中でも下記の部分。

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一番大切な人
ずっと側にいて
駄目な僕を叱ってよ
≪君が好き 歌詞より抜粋≫
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私はこの部分にキュンと来る。

「駄目な僕」という自虐的な部分があるからこそ切なさが増す。誰だって完璧じゃないけれど、そんな自分を好きでいて欲しいのだ。

声から哀愁を感じる。

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化粧なんて どうでもいいと思ってきたけれど
せめて 今夜だけでも きれいになりたい
≪化粧 歌詞より抜粋≫
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話をもどそう。「化粧」の主人公は女だから「今夜だけでもきれいになりたい」というけれど、男だったらきっと「駄目な僕」から脱却したい、と願う。

R&Bがベースにある清水翔太の表現力は全体的に哀愁が漂う。「化粧」の主人公のどん底の哀しみを伝えるのにぴったりなのだ。


「みゆきさんの『糸』にさ。『逢うべき糸に 出逢えることを 人は"しあわせ"と呼びます』っていう歌詞があるのを知ってる?あの『仕合わせ』は幸福の『幸せ』っていう意味じゃないんだよ。漢字が違うからね」と、私はついつい余計なことシンガーの彼に伝えた。


そして、さらに続けて伝えた。

「『仕合わせ』は必ずしも、いい出会いだけを指していないんだよ。いい出会いも一見悪い出会いも、全てめぐり合わせで…のちのちはそれが原因となって、誰かを暖める結果になることもあるし、誰かの傷をかばうかもしれない。全ての出会いは、意味があるっていう深い意味なんだよ」

私たちは「化粧」を聴いて誰かにフラれたことを消化して、「これも必要な出会いだった」と人生の中で位置付けていくんだろう。その時は、流れる涙を必死で止めていたとしても。

きっと、彼もそういう恋をしてきたから、この曲が歌いたくなったんだろう。男をそんな気にさせる清水翔太に私は嫉妬した。


TEXT 高宮景子

作詞・作曲、そしてアレンジまでこなす天才肌のシンガー・ソングライター。 2008年に「HOME」でメジャーデビュー。 地元大阪のスクールで学び、ソウルミュージックに魅せられた事をきっかけに時に力強く、時に儚く歌い上げ、感情豊かな歌唱からラップまでこなせるマルチな才能を持つ日本では···

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