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『RIDE ON TIME』から見る山下達郎の音楽の姿勢

いつまでも理想を追い続け色褪せない音楽を作り続ける山下達郎。心地よい楽曲群を作りあげる彼は「一人アカペラ」と呼ばれる。繊細に声を重ね作りあげる彼のコーラスに魅せられた人が続出している。まるで人間の声ではないようなハーモニーを聴かせてくれる。

山下達郎流に見事にアレンジ


実は、このコーラスは従来あった曲を山下達郎流に見事にアレンジしているのだ。彼は、一流のミュージシャンであるが、その前に超一流のリスナーなのである。CDやLP、レコードを合わせるとなんと6万枚ほど音源を所有しているという。

その数字を見るだけで音楽に造詣が深いと伺い知れる。また、山下達郎は洗練されていて都会的なイメージを持つシティ・ポップの先導者である。

1980年に発表された『RIDE ON TIME』はシティ・ポップの始まりとさえ言われている。

この時代、人々はフォークからフュージョンやR&B、ジャズなどを取り込んだ都会的な音楽に耳を傾けるようになった。同曲は山下達郎の名を世間に知らしめた曲でもある。近年も素晴らしい楽曲を発表している山下達郎だが、この頃からすでに彼の音楽は完璧に近いものといえる。

音楽に限らず言えることであるが、完璧すぎるものというのはどこか近寄りがたい。それなのに、隙のない彼の音楽がなぜ聴衆に愛され続けるのか。今回は山下達郎の代表曲『RIDE ON TIME』から、人々を惹きつけてやまない理由を見ていこう。

RIDE ON TIME


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青い水平線を
いま駆け抜けてく
とぎすまされた
時の流れ感じて

Ah ときめきへと
動き出す世界は
忘れかけてた
遠い夢の訪れ
≪RIDE ON TIME 歌詞より抜粋≫
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山下達郎の楽曲の中でもRIDE ON TIMEは非常に疾走感があり、ピアノやドラムさえも跳ねている。これは、日本の音楽の礎ともなったフォークにはない感覚だ。

新しい道を切り開くためには、作り上げられたブームや文化に一石を投じなければならない。山下達郎は複雑で難しい人間の関係性を歌うフォークとは違い、疎外されていることを前提とした、それでいて輝かしい雰囲気を放つ同曲を作り上げた。

その雰囲気は「青い水平線をいま駆け抜けてく」といった歌詞からも十分に伝わる。

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Ride on time
さまよう想いなら
やさしく受け止めて
そっと包んで

Oh Ride on time
心に火を点けて
あふれる喜びに
拡がれ Ride on time
≪RIDE ON TIME 歌詞より抜粋≫
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プロでも出せない心地よさ


山下達郎の曲の心地よさは様々な条件が重なり合って、作られているものだが特にリズム感が秀逸だ。リズムに対して走らずによれずにベストなタイミングでボーカルを落とす。

その心地よさはプロのアーティストといえども中々だせない。彼はコンマ何秒の世界を熟知しているはずだ。どれだけのボーカリストの声を耳にしてきたか定かではないが、その圧倒的な量が山下達郎のグルーブを作ったはずだ。

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僕の輝く未来
さあ回り始めて
虚ろな日々
全て愛に溶け込む

Ah 何という朝
今すぐ君のもと
届けに行こう
燃える心迷わず
≪RIDE ON TIME 歌詞より抜粋≫
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日本の音楽を語る上で欠かせない山下達郎


日本の音楽を語る上で欠かせない山下達郎は、まず誰よりもリスナーだったのだ。

彼の音楽は彼が耳にした音が元になっている。彼はあるインタビューで「どれだけ熱い気持ちを持っていようと音楽表現を続けていくなら、継続的な訓練と学習が必要」と発言をしている。

自分が耳にした音楽を訓練により自分のものにした。彼がその訓練と学習を徹底的にこなしてきたのも、音楽に対する愛がとんでもなく深かったためだろう。

完成された楽曲からその姿は想像できないが、楽曲制作では最後の1秒まであがき続けているという。そう、洗練された音楽の裏には、泥くさくて人間らしい気持ちがたっぷりと詰まっているのだ。

TEXT 笹谷創

山下達郎(やましたたつろう) 1953年2月4日生まれ、東京都豊島区池袋出身 1975年、シュガー・ベイブとしてシングル「DOWN TOWN」、アルバム『SONGS』でデビュー。 1976年、アルバム『CIRCUS TOWN』でソロ・デビュー。1980年発表の「RIDE ON TIME」が大ヒット。 アルバム『MELODIES』(19···

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