ロカビリーはまさに「踊れる音楽」
音楽は自然と人々の体を揺らす。リズムは鼓動と絡み合いながら、人間の本能を引き出すものだ。「気がつけばリズムに乗り踊っている」といった経験がある人も少なくないはず。踊りを引き出す音楽はより本能に近い存在であり、1950年代に誕生したロカビリーはまさに「踊れる音楽」なのである。世間一般において、ロカビリーは聞き馴染みのないジャンルになってしまったが日本にもロカビリーは浸透している。
1988年に結成されたMAGICは、男臭さを前面に押し出し人気を博したロカビリーバンドだ。MAGICは、上澤とBlack Catsのベーシストであった角谷の二人により結成された。ボーカルの上澤はヴォーカルでありながら、織田裕二や中森明菜へ楽曲提供をしたこともある。プロデューサーとしても活躍する彼の色が「MAGIC」に大きく反映されていたはずだ。
天使のジェラシー/MAGIC
“みんなはたぶん信じちゃくれない
そうガレキの中に見つけたダイヤモンド
Baby君はまるでせつなく
萌える想い出のような
八月の雨に優しく打たれて
Ah このまま夏を抱きしめていたい
Baby 賭けてみるぜMy destiny
君を失くしたくないから”
文字に起こすと、クサくて少し気恥ずかしい歌詞だがロカビリーのリズムにのせると歌詞が映えてくる。「Baby 賭けてみるぜMy destiny」という歌詞は語感の良さもありスカッとした気持ちにさせてくれる。小難しい理論など何も必要なく、いたってシンプルに聴けるのだ。
黒人音楽と白人音楽の融合
“きっと天使もジェラシーあわててジェラシー
言葉よりもう近いキスに
天使もジェラシー
あわててジェラシー
止まらない恋へのプレリュード
I’m in love”
同曲はロカビリーながら、日本の歌謡曲の要素を忘れてはいない。日本的なそのメロディは、馴染み深くやはり聞き心地がいい。何も気にせずに踊っていられるのは、メロディも関係しているようだ。
“きれいな瞳に笑いかけた時
Ah 俺達の胸に稲妻落ちたぜ
Baby 生まれたてのMy Happiness
守り通すつもりさ 今”
ルーツが黒人音楽と白人音楽の融合であるためか、ロカビリーからは何か生きる活力といったものを貰える。言語を介さずとも人々は音楽で踊る。音楽は万国共通であり、踊りは無言のコミュニケーションだ。
1990年代に活躍したMAGICからもロカビリーが持つ根源的な力を感じられる。踊れるリズムと心の琴線にふれる日本ならではのメロディを持つMAGICの楽曲はいつまでも色褪せない。