空想委員会「僕が雪を嫌うわけ」
真っ白な雪 舞い落ちる街
僕らの道途切れた
君が終わりにした
雪のように跡形も残らない
『真っ白な雪舞い落ちる街』というのは、男性が生まれた育った街の事。苦い記憶はその街にまだ住んでいる時に終わってしまった過去の恋の事。
『雪のように跡形も残らない』と表現される程に『君が終わりにした』恋の結末は男性にとって絶望と言っても過言ではなかったのでしょう。
雪が降る季節思い出すのは、幼いながら一生懸命に恋をしていたあの頃
真っ白な雪 舞い落ちる時思い出した笑顔を
子ども過ぎた僕の拙い恋
恥ずかしいほど狭い世界で
今でも雪と共に思い出される笑顔。その笑顔は『子ども過ぎた僕の拙い恋』が表現している、幼いながら一生懸命に恋をしていた日々。
まだ終わる前の楽しかった頃の彼女の笑顔。大人になって、感情を抑えながら社会で生きる毎日。
その中で振り返る、幼く一生懸命な恋の日々は『恥ずかしいほど』幸せで、彼女も友達も家族も傍に居る。
傍に居すぎてちょっと『狭い世界』と感じる事はありながらも笑顔を思い出すくらいに暖かく幸せだった日々がこの一節には描かれています。
その一方で別れのきっかけを推測させる一節でもあります。この『子ども過ぎた僕の拙い恋』というのは幼さの表現。
幼いと言いながら、大人になっても苦い思い出として、忘れる事が出来ない恋をしていた。
そしてこの『恥ずかしいほど狭い世界』。人間関係が密である事に窮屈感を覚え出す。そんな子供と大人の狭間の年頃と言えば高校生あたり。
この二人の別れのきっかけは「広い世界への憧れ」だったのです。二人は卒業と共に地元を離れる決心をしたのでしょう。
男性が選んだその道には彼女も一緒のはずだった。けれども、彼女は男性とは別の道を選んだのです。
心から大切な人、その存在の暖かさが身に染みる「僕が雪を嫌うわけ」
真っ白な雪 舞い落ちる度君のことを探すよ
一目会って気持ち伝えたいが
真っ白な雪 舞い落ちる度
君のことを想っても
もうどこにもいない
雪が責める
なくしてしまった未来を
独り地元を離れて暮らし始めた男性の心にあるのは、彼女への想い。嫌いになったわけではないのに、別れを選んでしまった後悔。
『一目会って伝えたい』それは「もう一度やり直せませんか」の一言。しかし、途切れてしまった道の先にはもう彼女はいないのです。
この男性につきまとう「雪」は彼女そのものであり、男性自身の後悔と孤独なのです。
この最後の歌詞『雪が責めるなくしてしまった未来を』がその事を物語っています。
『僕が雪を嫌うわけ』それは「もうどこにもいない彼女」と「彼女への後悔と独りで歩まなければならなくなった孤独」を雪に痛感させられるからなのです。
でも、心から大切な人。自分の幼さ。心から信頼出来る人たちの存在の暖かさ。それは全て「離れてみなればわからなかった事」です。
そして雪は一年中、降り続ける事はありません。必ず雪解けの時期が巡ってきて雪は心を責め続ける事は出来ません。
心を責めているのは自分自身の後悔である事に気がついた時。きっとこの男性は彼女を見つける事ができるのでしょうね。
『僕が雪を嫌うわけ』ちょっと冬に聴くには切なすぎる歌ですが。冬に聴くからこそ。傍にいてくれる大事な存在の暖かさを、より深く感じられるラブソングです!
TEXT:後藤 かなこ