生活の一部を切り取るようなアルバムになれたらいいなぁ
──慎太郎さんにとって通算6枚目となるアルバム『YOU&ME』が発売になりました。この作品を聞きながら感じていたのが、明確な想いを持ってアルバムを作り始めたんだろうなということなんです。間:アルバム全体の指針やテーマ性が明確になったのは『YOU&ME キミならいいぜ』という楽曲が生まれてからですね。この曲自体はアルバム制作後半時期に生まれたんですけど、『YOU&ME キミならいいぜ』を軸に据えた曲たちを並べることで一つの色や想いがくっきり浮かび上がるなと思い、それまでにレコーディングしてきた中からも、あえて『YOU&ME キミならいいぜ』と寄り添える曲ばかりを選びましたし、そこから『YOU&ME キミならいいぜ』に似合う曲たちを作っていきました。
──ということは、レコーディングしながらも形になってない楽曲もあるということ?
間:けっこうありますね。僕自身、あまり長いアルバムは好きじゃないように、たとえ多めにレコーディングを行おうと、最終的には10曲内へまとめようと思っていたように、『YOU&ME』も全10曲入りのアルバムに仕上げました。
先に上がっていた曲たちも含め、レコーディングを行ったすべての楽曲をひとまとめにしたうえで、どれをアルバムへ収録するかの天秤にかけ、「この曲は外せないな」「この曲も入れたいし、この歌ももったいないんだけど、今回はアルバムの色に合わないから外そうか」みたいな感じで選んだ形でしたね。
──それだけ慎太郎さんの中では、『YOU&ME キミならいいぜ』という楽曲の存在が大きかったわけだ。
間:そうですね。この曲をレコーディングしている時点からすごく楽しくて、この楽しい感じがアルバムの核になればいいなと思った。その気持ちがデカかったですね。
──アルバム『YOU&ME』は、タイトル通り「君と僕」「あなたとわたし」という視点で歌にしている楽曲を多く収録しています。とくにその視点を持った歌たちは、相手への未練を抱きながらも、しっかり未来を見据えてゆく内容も多くないですか?
間:そこは、「生活の一部を切り取るようなアルバムになれたらいいなぁ」と思っていた結果だと思います。
──だから、慎太郎さんの歌の多くに「半径1m以内の生活の中で生まれる感情」を覚えてしまうんだ。
間:そう聞こえたのであれば嬉しいですね。じつは今回のアルバムは、先に半年くらいかけギター1本で全国各地をまわるツアーを決め、そのうえで制作に入りました。今回はツアーの本数もけっこうあるように、最初から「ライブに来てくださるお客さんたちと一対一で歌えるような楽曲」や「ライブの場を通し、直接みなさんに届く歌詞」は意識していたこと。そこも、身近な視点で書いた歌が中心になった理由なんだと思います。
──そうか、『YOU&ME』のYOUはライブに足を運んでくれるお客さんであり、この作品を聴いてくれる人に対しての投げかけでもあるわけですね。
間:そうなんです。
基本はギター1本で成立する形を心がけています
──先に「ライブへ向けて」という意識があると、楽曲も作りやすくなるのでしょうか?間:それはあると思います。何故なら、「ライブをすごく意識して作る作品」になりますから。僕の場合は、どの歌も普段からその意識で作っているんですけどね(笑)。
──アルバム『YOU&ME』へ収録した曲たちは、ストリングスを用いたり、激しいギターサウンドだったり、打ち込みも使ったりとアレンジ面では多様性を持っていますよね。でも、基本はギター1本で歌える楽曲という視点なのでしょうか?
間:その通りです。事実、アルバムの軸を成す『YOU&ME キミならいいぜ』では打ち込みも使っています。
それでも「ギター1本で成立するように」と心がけて作ったように、どの楽曲をどうアレンジしようとも、基本はギター1本で成り立つ形を心がけていますし、そういう曲たちばかりをここには収録しています。
──慎太郎さんの場合、ライブは弾き語りのスタイルが中心?
間:はい、弾き語りを中心にしたライブ活動だからこそ、ギター1本で説得力を持った歌になることは、楽曲を作るうえでつねに意識していることです。
──いかにダイレクトに想いが届くかですね。
間:そうです。
酔っぱらって二度と電話かけてこないでと言われたなぁ
──アルバム『YOU&ME』には男性の視点から書いた曲がほとんどですが、『どうでもええけど』は女性目線で楽曲を書いています。何故、そういう視点にしたのかも教えてください。間:『どうでもええけど』はですね、江川ゲンタさんというドラマーの方がいるんですけど。江川さんが毎年宮古島でフェスを開かれてて、そこへ僕も毎年呼んで頂いているんですね。そういう繋がりもあっての話なんですけど。
宮古島へ行きご飯に連れていってもらったときに、ゲンタさんが「慎太郎ならではの、慎太郎にしか歌えない曲、何かないかなぁ」と考えてくれはって。そのときに出た「関西弁の女性の言葉で歌出来ないかな?」というアイデアをもとに作ったのが、この『どうでもええけど』なんです。
──『どうでもええけど』に出てくるしょーもない男性って、もしや慎太郎さん自身?
間:そこは、自分に限らずです。あくまでも関西弁の女性を主人公にした物語を考え、その物語に沿った形で出てきた男性の姿ですから。
──アルバム『YOU&ME』を頭から曲順通りに聴いてると、恋愛に破れた男性の悲しくも女々しい心情を中心とした歌が多く流れてくるじゃないですか。だから最初は、あえて女性側の視点からも心模様を書いたのかなと思いました。
間:一応、『どうでもええけど』は関西弁のおばちゃんの物語にはなっているんですけど。実際に僕も「こういうこと言われたことあるなぁ」と言うか、「酔っぱらって二度と電話かけてこないでと言われたなぁ」と思いながら書いてましたからね。
──だから、とてもリアルなんですね。慎太郎さんの歌って、けっこう未練たらたらな内容が多くないですか?
間:僕自身が、どうしようもなく女々しいからなんですよ。でも、男ってみんな女々しいですよね。(過去の恋愛をずっと)引きずってしまいますよね。それって、どうしたらいいんでしょう?
──男ってみんなそういう心を持っているんだから、仕方ないと思います。
間:確かにwww
──慎太郎さん自身、自分の弱さや女々しさ、情けなさを歌詞に投影してしまうタイプですか?
間:どちらかと言えばそうですね。楽しいときやハッピーなときは、僕はあまり曲は作らない。そういう気分のときは、家でも好きな曲を歌ったりしていることが多いんですけど。どうしようもなく落ち込んだりすると、「よし、歌詞を書こう」という感じになりますからね。