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『冬の散歩道』:つい人生を語りたくなる若者たち

サイモン&ガーファンクル(Simon & Garfunkel)は、アメリカ人であるポール・サイモンとアート・ガーファンクル、2人組の音楽ユニットです。1960年代に活躍しました。1990年にロックの殿堂入りを果たし、歴史上の偉大なアーティストとして認知されています。本日は、そんなサイモン&ガーファンクルの曲について特集したいと思います。
その曲はサイモン&ガーファンクルの『冬の散歩道』。まずは冒頭の歌詞をみてみましょう。

Simon and Garfunkel「A Hazy Shade Of Winter」



Time, Time, Time see what's become of me
While I looked around for my possibilities
I was so hard to please
But look around, leaves are brown
And the sky is a hazy shade of winter

(訳)

時よ、時よ、時よ
可能性を探りまわっているあいだに
僕がどうなったかみてごらん
僕は難しいやつさ
だけど見渡してみれば、葉っぱは茶色く
空はどんよりと冬の陰にかすんでいる


そして3番ではこんな風に歌っています。

Hang on to your hopes, my friend
That's an easy thing to say, but if your hopes should pass away
Simply pretend
That you can build them again
Look around
The grass is high
The fields are ripe
It's the springtime of my life

(訳)

希望にしがみついておけ、友よ
そういうのは簡単、でも希望に見放されても
まだ希望があるふりをしておけばやりなおせる
見渡してごらん
草木は高く茂り
作物は熟す
それこそ我が人生の春のときなんだ


陰鬱な冬はいつか過ぎ去り、希望に満ちた春はかならずやってくる。

人生とは季節の移ろいのようなものなので、うまく行かなくても落ち込むことはないよ、と歌っていると読み取ってよいと思います。

人生を語るには若すぎやしないか問題

ところで作者のポール・サイモンはこのとき25歳。

若者が書く詩としては、ちょっと内容が老成しているというか人生を達観しすぎな感が否めません。

ちなみに島倉千代子は代表曲『人生いろいろ』で「人生いろいろ 男もいろいろ 女だっていろいろ咲き乱れるの」と歌いましたが、彼女はこのとき49歳でした。

人生を語るにはこれくらい齢を重ねた人物でないと、ちょっと説得力がないような気もしないでもありません。

人生や老いをテーマにしたロックの名曲あれこれ

不思議なことに、若いアーティストたちが人生や老いについて歌う曲はこの『冬の散歩道』にかぎらず数多く存在します。

例えばエアロスミスの『ドリーム・オン』では、シワだらけの主人公が登場します。

人生の半ばに差し掛かった主人公は、諦め切れない夢を一緒に見てくれと訴えます。このとき作者のスティーブンタイラーは25歳でした。

人生50年と考えるのであれば人生半ばとも言えなくありませんが、まだまだお肌はツルツルのスベスベのお年頃なはず。

なので、この曲は老いた人物、あるいは老いたときの自分をイメージして書いたのだと思います。

「老いた自分」をイメージしたもっとも有名な曲は、ビートルズ(のホエン・アイム・シックスティ・フォー』でしょう。

「僕が64歳になっても愛してくれるかい?」と歌ったのは、ポール・マッカートニーがまだ25歳のときでした。

他にもフェイセズの『ウー・ラ・ラ』という曲があります。「今、ワシが知ってることを若いときに知っていれば、ギャルと上手くやれたのになあ」と嘆くこの曲が発表されたのは、作者のロニー・レーンが27歳のときでした。

作詞者フレディ・マーキュリーが作詞したクイーンの名曲『伝説のチャンピオンは、苦難に満ちた半生を振り返り、それでも俺達は勝者なんだと歌う曲です。

ちなみに「この曲はロック版の『マイ・ウェイ』みたいなもの」とフレディはかつて語りましたが、『マイ・ウェイ』といえば世界でもっとも知られた「人生語り」ソングといってよいでしょう。

当時31歳のフレディを「人生語りする若者たち」の仲間に入れるには少し年齢が高いかもしれませんが、フランク・シナトラが『マイウェイ』を歌ったのはそれよりずっと年齢の高い58歳のときです。

「人生語り」の説得力はシナトラに軍配を挙げざるをえません。

人生をまだ語らず、といえなかったP.サイモンの照れ隠し

誰しも20代も半ばを過ぎるころにはいろいろ経験をしているもので、ちょっと人生を語りたくなるお年頃なのかも知れません。

そういえば吉田拓郎が28歳で「人生をまだ語らず」と自戒的に歌っていますが、これはつい人生語りをしてしまいそうになる同世代への警句にも感じます。

アーティストが「老いる」ということは、つまり人を魅了する輝きを失うことであります。

若いアーティスト達は常に、そんな不安や焦燥感に苛まれてきたのかも知れません。

彼らが老成した歌を書いてしまう背景には、そうしたアーティストならではのやむない事情があるように思います。

Funny how my memory skips while looking over manuscripts of unpublished rhyme
Drinking my vodka and lime

(訳)

ウォッカライムを飲みながら
未発表の詩を眺めていると
可笑しいことに記憶が飛んじゃうときがあるんだ


上記の歌詞は『冬の散歩道』の最後の部分です。今までの人生語りは夢うつつの出来事だったんだとでもいいたいのでしょうか。

この部分は、若気の至りでつい人生を語ってしまったポール・サイモンの照れ隠しと思うのは穿ち過ぎでしょうか。

TEXT:quenjiro

Simon & Garfunkel(サイモン&ガーファンクル)は、1957年にニューヨークで結成された60年代を代表するフォークユニット。2人の美しいハーモニーが生み出す、心地よいサウンドで人気を博した。1970年に惜しくも解散したが、その後は再結成を繰り返している。 小学校時代からの親友であったポー···

この特集へのレビュー

女性

Fuko

2020/02/10 08:35

utaten quenjiroさん;ありがとうございました。もう古稀を過ぎた
私がしみじみこの歌詞の翻訳部分から Poleの思いを味わうことができました。
 ラストのFunny, how my memory skips, Looking over manuscripts of unpublished rhyme, Drinking my ,,,,,,はPole Simon の老成した哲学を感じてさらに尊敬の念を感じています。

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