チャットモンチーでなくなった二人が、今後どんな風に私たちの前に現れるのか、今からとても楽しみだ。でもやっぱり、ちょっと寂しい。
2000年を学生として過ごした世代の人たちにとって、チャットモンチーの存在はあまりに大きいものだから。
そんな中、代表曲のひとつ「シャングリラ」を改めて聴き直してみたい。
シャングリラはドラムの裏打ちから始まる、まだ三人だったころに作られた曲だ作曲もドラマー・高橋が担当している。
特徴的なリズムを刻み、一度聴いたらなかなか忘れられないメロディだ。
少しだけ歌詞を覗いてみよう。
チャットモンチーの「シャングリラ」
携帯電話を川に落としたよ
笹舟のように流れてったよ あぁあ
君を想うと今日も眠れない
僕らどこへ向かおうか?あぁあ
冒頭、サビから始まってすぐあとのAメロに当たる部分だ。
ここで歌われる「携帯電話」とは、2017年からするとアイフォンやスマートフォンしか浮かばないかもしれない。
しかしシャングリラの発表された当時、まだまだ「携帯電話」といえばガラパゴス携帯、いわゆるガラケーが主流だった。
「笹舟」という喩も。ぱかぱか開く野暮ったいデザインのガラケーだと考えれば、より伝わりやすいだろう。
「君を想うと今日も眠れない」というのは、そんな携帯電話からの着信を待っているような、そんな切なさを滲ませている。
曲調全体としては、別に楽器どうしが激しく主張しあったり、うるさかったり、轟音、というわけではない。
歌詞が聴きとりやすい、ごくシンプルな音づくりだ。しかしそのシンプルさが、却って突き刺さるように心に響いてくる。
いかにもチャットモンチーらしさが全開の一曲なのだ。
どんな人の心にも突き刺さる歌詞
シンプル、とはいいつつも、ドラム、ベース、ギター、ひとつひとつの楽器のそれぞれの良さや持ち味を存分に引き出した音づくりがなされている。グルーヴというには簡素すぎるが、独特のリズム感があり、カラオケでも歌いやすい。まさにチャットモンチーの代表曲だ。
「携帯電話」なんて単語から、少し古いのかな?と時代を感じたりもするかもしれない。
けれどそんな心配は全く無用だ。どんな人の心にも、どこかで必ず刺さってくるものが見つかる。
そんな不思議な魅力も、チャットモンチーならではだ。
シャングリラはドラムが特に際立っているため、二人体制になってからのチャットモンチーを知った上で、改めて聴き直すと、ある種感慨深いものがある。
「完結」を発表した彼女たちに触れながら、もう一度「シャングリラ」を奏でて欲しいと願ってやまない。
そのとき、この桃源郷はまた新しい風景を見せてくれるはずだ。
TEXT:辻瞼