『My Girl』
--アルバム初収録の『My Girl』について伺いたいと思います。
佐藤:これぶっちゃけ、アルバムの中で一番気に入ってます。順番付けるのもあれですけど、この曲はメロディ、アレンジ、ミックス含めて今回のアルバムの中では一番しっくりきていて、理想に一番近かったかな。
レコーディングも歌い慣れてるコード進行で、すごく歌いやすかった。キー的にも自分に合ってたし。BPMとかテンポもすごく自分に合ってたので、これが一番レコーディングも楽でしたね。
--歌詞の世界観のイメージは?
佐藤:僕の歌詞の世界観のイメージとしては…細かいですけど、ハワイのビーチウエディングで結婚する前の新郎新婦がいて、まだウェディングドレスの姿を見てない新郎の直前の一瞬の気持ちを書いているんです。もう、超ワクワクドキドキみたいな!舞い上がっちゃってる男性の雰囲気です。
--この歌詞で歌われているようなこと、女性はいつまでも思われてたいですよね。
佐藤:でもちょっとそこ面白おかしくと言ったらあれですけど、ちょっとだけおちゃらけてるっていうか。
男性が歌う感じの歌詞じゃないかもしれないですね。中性的なこともできるのは僕のキャラクターでもあるんで、やっぱこういう曲は合ってるなと思ってます。
--「君は俺のもの」って、フレーズで「俺」って出てくるまで気づかなかったぐらいです。女性が自分のこと歌ってるような曲とも捉えられたかと。
佐藤:そうですね。だから化粧品のCMソングとかにもしたいなーっていうぐらいでしたね(笑)。
--確かに。「その目でMayday Mayday」のとこ、すごくいいと思いました(笑)。
佐藤:そう、でもね、やっぱこういうキャラ僕の中では・・まあみんなどう思ってるかわかんないですけど、すごくハマりがいいんですよね。「君のおかげだもん」っておねだりっぽいワードとか、すごく好きですね。サウンド的にもオールディーズで60年代のブラックミュージックっていうか、テンプテーションズとか少し感じますね。テンプテーションズにも『My Girl』っていう曲があるんですけど。
60年代70年代ぐらいのサウンドで、後半になるにつれてフラワーシャワー浴びてのところで、ちょっと楽曲の雰囲気ガラッと変えて最新に持っていきつつまた戻して、最後ギターかき鳴らしてサーフミュージックで終わるっていう。波の音欲しかったですけどね、最後。シャーって。
--入れなかったんですね。
佐藤:それやっちゃうと世界観を絞り過ぎちゃうから。ハワイでしかなくなっちゃうんで。個人的には入れたかったですけど、ダメでした。これはねリバーブ感もすごい、EQっていうか、プラグイン関係もすごくいいんですよね。うまくオールディーズ感も表現してくれているので、これミックス仕上がってきた時は、“わあ、やべえ”って思いましたね。ハマったなっていう。聴き方によったらすごくかっこいい表現なんですよ。歌詞は少しおちゃらけてる風だけど、サウンド的にいったらすげえかっこいい曲ですね。
コードもほぼループだから、すごく聴きやすいんじゃないかなと思います。
--『My Girl』から好きなフレーズも伺っていいですか?
佐藤:この曲は全体的に好きですね。「笑えば出るエクボで」っていうのは、この楽曲の中ではパンチラインっていうか、「えくぼ」っていうワードを今まで一回も使ってなかったんで。「笑えば出るエクボで 意識が飛ばされそう」かな。ここはフックになってるとは思ってます。
--佐藤さんの好みでもあったり?
佐藤:僕は八重歯好きですね。
--なるほど、でもあえて「エクボ」にしたんですね。
佐藤:はい。「エクボ」で。これは元々作家のRa-U君が仮で作ってくれてた時に「エクボ」って入ってたんで、これちょっとそのまま使わせてくださいって言って。
で、その「エクボ」とかサビあたりをモチーフに、他の歌詞をどうしていくのかっていうところで任せてもらったんで、さーっと書きました。
カバー曲『笑えれば』
--ウルフルズカバーの『笑えれば』についてですが、この曲を収録曲に選んだ理由は『イチゴイチエ』への流れも踏まえて?佐藤:これは数年前からずっとライブでカバーさせていただいてた曲で、周りの評判も良かったのもありますし、僕も自分で歌っててすごい自分のキャラにハマってたんで入れました。
もう音楽の世界諦めようかなとか凹んだ時期に、とても励ましてもらえた曲なんで、いつかリリースできらいいなって思ってたんですけど、このタイミングで。初めてカバー曲をリリースするんですけど、ほんとこの曲で良かったっすね。
--夢が一つ叶った感じですね。
佐藤:そうですね。自分が励まされた曲なので、逆にこの曲で自分も誰かを支えたり力になれたらいいなっていう思い一つですね。
--カバーを音源にするにあたって、特に意識されたことってありますか?
佐藤:やっぱりこの曲に関しては原曲に忠実に再現しつつ、だけど自分の色を出すためにどうすればいいか、結構考えました。
ちょっとテンポ上げたりギターをエレキにしてみたりとか、そういったトライも何度かしたんですけど、やっぱ違うってなって。結果、アレンジも含め原曲にわりと近くしました。改めてレコーディングしてみて思いましたけど、この曲はめちゃめちゃ難しいですね。トータス松本さんのニュアンスは出せない。
--確かにそうですね。
佐藤:すーごい葛藤しました。原曲に忠実にしたところでトータスさんは絶対越えれないので。トータスさんとはまた違う路線でいくためには、曲の雰囲気をガラッと変えるしかないとか思ったんですけど、結局原曲に忠実にっていう。すごい難しかったですね。
苦しい時期に生まれた『イチゴイチエ』
--ありがとうございます。最後は映画『嘘八百』の主題歌になっている『イチゴイチエ』ですね。
佐藤:これは実際に映画を観させてもらってから書いた曲なので、歌詞について監督さんとのやり取りも結構ありました。最初は、映画のストーリーに忠実な歌詞を提示したんですけど、監督さんから「映画とは繋がらないような、だけどしっかり映画とリンクする歌詞がいい」っていうご提案をいただいたんで、そこがまず難しかったところですね。
--『嘘八百』はどういう映画なんですか?
佐藤:中井貴一さんが”いかさまの”古物商というか骨董を扱う方で、佐々木蔵之介さんが”いかさま”陶芸家なんですけど、二人が過去に共通の相手に騙されていて、その二人がやり取りして嘘つきあって、最終的にグルになって仕返しするみたいな。
--面白そう…。
佐藤:すごく面白いですよ。映画の中で人間模様がはっきり描写されているのでコントラストがはっきりしていて。ラブというよりもライクな映画です。過去の傷ついた出来事などが中盤からにじみ出てくる内容だったので、曲にもヒューマン性はしっかり入れたいなと思って。「つまずいたら手を叩こう」とか、もうほんと映画にばっちりというか。ほんとにつまずいてる二人なんですけど、でも手叩いて乗り越えてそれぞれのスタイルで生きていこうみたいな感じでしたね。佐々木蔵之介さんが映画の後半で陶器を作るんですけど、土をめちゃめちゃ一生懸命叩いてるんですよ。そういったところともリンクしてるとは思ってます。つまずいてるから今やらないと!みたいな。
--サビの「つまずいたら手を叩こう」というとこからテーマ性を決めたり曲作りというのは始まったんですか?
佐藤:そうです。これはもう完全にサビ先行で作りましたね。サビを固めてから他の歌詞。「作りかけのジオラマ」とかも、実はちょっと映画にも出てくるんですよ。
--そういったリンクのさせ方もしていらっしゃるんですね。
佐藤:はい。この曲の不思議なところが、すごくハッピーで温かい曲なんですけど、ライブでお客さんが泣くっていう、そういうポテンシャルを持ってるところですね。特に「それぞれの音で鳴らそう 一人一人の物語 カッコつかない事ばかり」ぐらいから結構泣かれる方が。去年ワンマンライブで初披露したんですけど、もうみんな号泣でしたね(笑)。
--すごい(笑)!
佐藤:あれはちょっとびっくりだったなー。僕自身もまさかの展開で、うわ、どうしようって思ったぐらい。まあ、たぶん映画の主題歌に決まった事も喜んでくれたんでしょうけど、でもびっくりしましたね。アップテンポな曲で泣けるっていうのはなかなか出会えないですよ。
だから盤を聴いてくれた方は特に、ライブにも来て欲しいです。
--ライブといえば、ツアーは3月に北海道で。
佐藤:はい、北海道のツアーですね。東京では予定はリリースイベントがあるんですけど、東京もワンマンやりたいなとは思ってます。
最後に…
--では、最後にインタビュー観てくれてた皆さんに一言、お願いします!佐藤:UtaTenさんにはデビューシングル『スノーグローブ』のリリースから、毎回楽しくインタビューさせていただいて、ようやくアルバムの話まで届けられてとりあえずほっとしてるっていうのと、嬉しいですね。
アルバムの話をUtaTenさんから皆さんに届けられるっていうのがすごく嬉しい。佐藤広大の「人間性」みたい部分も合わせて、これからもUtaTenさんを通して届けていきたいなと思ってますので、引き続きよろしくお願いします!
--ぜひ、よろしくお願いします。ありがとうございました!
TEXT:愛香
Photo:片山拓
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