フェアリーズが歌う力強い失恋ソング「恋のロードショー」
ハートブレイク公開
恋のロードショー
ロングラン決定
未練心
曲はサビから力強くスタート。一番最初に出てくる単語が「ハートブレイク」。
タイトルである『恋のロードショー』もさっそく出てきます。
この「恋」が「ハートブレイク」した失恋であることがすぐ分かる構成。
「ロングラン」は、映画がヒットし長い期間上映されることを指します。
この曲で「ロングラン決定」したのは「未練心」。あまり好ましくない状態の気持ちが長続きするんですね。
最初のサビスタートで、曲の方向性を明確に示します。
急に承諾余儀なくされた
予想だにしてなかったラストシーン
私の一大事の日も
スクランブル交差点は流れていく
[何もなかったかの様]
「ラストシーン」でスタートするAメロ。最初に「ラスト」を持ってきて、皮肉を際立たせます。
「スクランブル交差点は流れていく」というフレーズで、日常の人の流れを表現。
同時にスクランブルは「かき回す」意味があります。歌詞の主人公の気持ちがかき乱されていることを暗示しているんですね。
「何もなかったかのよう」というフレーズを主旋律とは別に用意している構成。
これによりメイン以外のメンバーの見せ場を作ることができ、さらに日常を客観的に表現することができます。
自分にとっては「一大事」の失恋も、関係ない人から見れば何でもない出来事。
「世界が泣いた!」と「私だけ泣いた」の対比に注目!
盛っちゃうわ キャッチコピー「世界が泣いた!」
「衝撃のラスト!」
フラれた側には超大作
私だけ泣いた
実際のとこ
スリルもサスペンスも巻き返しもしない
大迎にさせといて
同情なら要らない
ロードショー 心を上映
エンドロールに名前見当たらない
飛び散ったポップコーン
捨てらんない 恋の半券
「世界が泣いた!」「衝撃のラスト!」という「盛っちゃう」「キャッチコピー」のフレーズをたくみに用いた歌詞。
映画のCMで良く観る言い回しですね。皮肉になっている歌詞で、歌詞の主人公の「まったく泣けず」「衝撃すらない」恋の終わりを表現しています。
ここで注目したいのは「世界が泣いた!」と「私だけ泣いた」の対比。
理想としては、「私」の感動的な恋に世界が泣くような展開がのぞましい。
しかし、「実際のとこ」は「私だけ泣いた」という孤独な現実。
映画という大きな夢と対比することで、悲しい現実を際立たせています。
さらには「衝撃のラスト!」に対する「スリルもサスペンスも巻き返しもしない」ラスト。
この一連のフレーズは「スリル」「サスペンス」というドキドキする状況に「巻き返し」までも加えているにも関わらず、「しない」と全て否定します。
このあたりは音も高く、歌うメンバーも苦しそうな箇所。だからこそ、この悲しいラストが際立つんですね。
「エンドロールに名前見当たらない」=映画の製作に関われなかった、すなわち理想通りのストーリーを描けなかったことを示します。
楽しさの象徴でもある映画のお供「ポップコーン」は「飛び散った」=砕けちった恋心、ハートブレイクを暗示しています。
さらには「半券」のようなわずかな思い出も「捨てらんない」という「未練心」まで強調。
この曲は、悲しい現実をとことん突き付けてくるのです。
つまづいたってまた立てばいい!
大人っていうステージに登る時つまづく
そんなの常識 また立てばいい
イタくたって受け容れるの
滑稽なるリアリティ
これだけ悲しい状況を畳みかけているのに、この曲は暗くなりません。
それはなぜか。この曲は「つまづく」のは「常識」であり、「また立てばいい」と歌う曲だからです。
この曲の重要な箇所です。現実が「滑稽」であっても、「イタくたって受け容れる」。
楽曲の力強さ、歌詞の説得力、どれもフェアリーズが歌うからこそなせる技
別れは次の出逢いを
予感させる いわば予告編よ
さらには「別れ」は「次の出逢い」の「予告編」であると歌い、失恋後の未来を示します。
かなり激しく踊る曲。「同情ならいらない」というフレーズにもあるとおり、湿っぽさを見せません。
メンバーのダンスの力強さが歌詞に力を与えています。
失恋すら力強く表現する、それはこのグループだからこそできることです。
フェアリーズは、それこそメンバーを脱退で失っています。グループとして、なかなか人気が伸びません。
しかし、前に進んでいます。恋に限らず、何かを失うことやつまづくことは当人にとっては映画超大作のような出来事。
しかし、それは「よくある」ことで、また立ち上がることが重要なんですね。
この曲は、フェアリーズという決して順風満帆とは言えなかったグループが歌うからこそ、説得力があるのです。
メンバーが持っている明るさ、しなやかさ、力強さがこの曲を引き寄せました。
この曲が、フェアリーズを新たに知る人にとっての「予告編」になってほしいですね。
TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)