女性目線で書かれた歌詞
福山雅治が2011年に発表した、プロポーズして『家族になろうよ』という歌。この曲は女性目線の歌詞。この時点でファンタジー色が強いものになっています。
家族になろうよ
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どれほど深く信じ合っても
わからないこともあるでしょう
その孤独と寄り添い生きることが
「愛する」ということかもしれないから…
≪家族になろうよ 歌詞より抜粋≫
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こう歌うように、人はどうしても互いが「わからない」ことがあります。そして「孤独と寄り添い生きること」がなかなかできません。だから離婚します。現代日本では3組に1組のカップルは離婚すると言われています。
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いつかお父さんみたいに大きな背中で
≪家族になろうよ 歌詞より抜粋≫
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お父さんの背中は大きいのでしょうか。お父さんの背中が小さい、肩身の狭い父親が全国にたくさんいるのではないでしょうか。
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いつかお母さんみたいに静かな優しさで
≪家族になろうよ 歌詞より抜粋≫
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お母さんは静かな優しさを持っているのでしょうか。一番ガミガミと口うるさいのではないでしょうか。このようにこの曲のサビは「理想の家族像」が並んでいきます。
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いつかおじいちゃんみたいに無口な強さで
≪家族になろうよ 歌詞より抜粋≫
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強さからきている無口でしょうか。無口なのはしゃべるのが下手だからではないでしょうか。熟年離婚の原因になっていませんでしょうか。
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いつかおばあちゃんみたいに可愛い笑顔で
≪家族になろうよ 歌詞より抜粋≫
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おばあちゃんの可愛い笑顔はボケているからということはないでしょうか。介護疲れしてないでしょうか。
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いつかあなたの笑顔によく似た 男の子と
いつかわたしとおなじ泣き虫な 女の子と
≪家族になろうよ 歌詞より抜粋≫
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も同様です。果たして笑顔が似るでしょうか。悪いところばかり遺伝してないでしょうか。泣き虫なところにイラっときて虐待することはないでしょうか。
この楽曲にあげられる家族の描写はすべて「理想の家族像」なのです。理想の家族像、ファンタジー架空の家族像だからこそ聴き手が美しく想像できるようになっています。
理想の家族像は、どう作るのか。
正直、厳しいことが多過ぎる現実。この歌で歌われた「理想の家族像」を実現することは難しいのでしょうか?実は福山雅治自身が一つの答えを見せています。
福山雅治はこの曲を発表した後、2013年に映画「そして父になる」で主役の父親を演じています。
この映画は赤ん坊の取り違えが題材。6歳まで育てた息子と、真に血のつながりがある息子、どちらを選ぶか?という物語。
仕事重視でほとんど息子の面倒を見てこなかった主人公は葛藤します。家族とは、血のつながりとは、父になるということは何なのか。
父になるということ、家族になるということは、子供が生まれたから自動的になるわけではありません。「そして父になる」というタイトルが示す通り、子育てや愛情や承認や経験やそのほか諸々をふまえて「そして」父になるのです。それは「母」も「子供」も同様。
「理想の家族」は自動的にできるのではなく、自分達の手で作っていくことだということを『家族になろうよ』と「そして父になる」の両方で表現していたのです。
『家族になろうよ』の終盤に登場する「どんなことも越えてゆける」「あなたとなら生きてゆける」というフレーズ。この曲は厳しい現実も「超えてゆける」という力強い宣言の歌でもあったのです。
TEXT:改訂木魚 (じゃぶけん東京本部)