多くのアーティストに支持される彼
没後20年が経とうとする現在もなお、多くのバンドマンやアーティストから支持され、音楽シーンに多大なる影響を与え続けているhide。
彼は日本が世界に誇る音楽ジャンル、“ヴィジュアル系”の名付け親であるとも言われている。
X JAPANのギタリストとしてだけでなく、ソロやhide with Spread Beaverなど、彼の音楽活動は1998年5月2日、その生涯を閉じるまで多岐に渡った。
享年33才。才能に満ち溢れたギタリストだった。突然の早過ぎる死に、当時社会現象とまで言われたほど、大勢のファンや仲間が連日のように涙を流し、悲しみに暮れた。
TVで見た告別式の光景は、今でも昨日のことのように鮮明に脳裏に焼き付いている。決して長いとは言えない音楽人生だったが、彼は多くの楽曲を私達へ残していってくれた。
hide流の人生哲学
その中から今回は1996年に発売されたhideのソロシングル『MISERY』を紹介したい。
hideに見出されたのをきっかけにデビューを果たしたGLAYが後にカバーし、GLAY EXPO‘99で、幕張の青空の下、集まった20万人のファンの前で歌った楽曲でもある。
「痛み」や「苦しみ」といった意味を持つこの『MISERY』は、国際的ボランティア団体「メイク・ア・ウィッシュ」を通して、hideが交流を持った難病の少女との出会いをきっかけに制作された。
タイトルとは、うってかわってポップで明るいメロディーに、歌詞にはhideの優しい人柄が溢れた、あたたかい励ましの言葉が綴られている。
MISERY
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ハレルヤ ラ ミゼラブル
星の嘆き聞けば
ハレルヤ ラ ミゼラブル
ほんの小さな事だろう
≪MISERY 歌詞より抜粋≫
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この身に起きた悲劇に万歳!何億年と輝きを放ち続ける星達の嘆きに比べたら僕らが人生の中で出くわす悲劇や絶望なんて、ほんの些細なことさ
何億年もの寿命を持つと言われている星達の嘆きに比べたら、僕らの人生で起こる悲劇なんてほんの小さな事だよ、とhide流の人生哲学が込められているように感じた。
また少女を襲った難病という悲劇に憎しみと皮肉を込めた“ハレルヤ ラ ミゼラブル”(この身に起きた悲劇に万歳!)という歌詞の裏には、「病気なんかに絶対負けんなよ!」という強いメッセージが隠されているのではないだろうか。
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Stay free your misery
降りそそぐ悲しみを
その腕の中に抱きしめて
Kiss your misery
枯れるまで踊るだろう
全て受けとめるよ
このまま
悲しいと言うならば
空の青ささえも
届かない もどかしさに
君は泣くんだろう
君の小さな身体
包んでる夢は
痛みを飲みこみ
鮮やかになる
≪MISERY 歌詞より抜粋≫
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君の痛みも苦しみも解き放ってとめどなくその身体を襲う悲しみは、腕の中でそっと抱きしめて。
君の痛みや苦しみに愛を込めて口づけを。命枯れるその日まで一緒に闘おう、君の全てを受け止めるから。僕の痛みも苦しみも解き放つよ。
それでも悲しいっていうのなら、あの美しい空の青ささえも君は手が届かないといって泣くんだろう。君の小さな身体を包んでるその大きな夢は、君の痛みや苦しみ全てを飲み込んで、いつか現実になるんだよ。
hideがこの楽曲に込めたメッセージとは
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Stay free my misery
手を伸ばせば感じる
その痛み両手で
受けとめて
Stay free your misery
愛しさを 憎しみを
全て受けとめて そのまま
Stay free my misery
降りそそぐ悲しみを
その腕の中に抱きしめて
Stay free your misery
枯れるまで踊るだろう
全て受けとめて
この空の下で 君が笑う
≪MISERY 歌詞より抜粋≫
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生きてるからこそ感じる、その痛みを両手で受けとめて。愛しさも、沸き上がる憎しみも、全部そのまま受けとめて。
とめどなくその身体を襲う悲しみは、腕の中でそっと抱きしめて。命枯れるまで闘おうよ、ありのままを全部受け止めて。
いつかこの青空の下で、君が心から笑える日が来るから。
“君の小さな身体包んでる夢は 痛みを飲みこみ 鮮やかになる”とは、「痛みや苦しみを乗り越えたら、君の夢はいつかきっと現実のものになる」。
また“枯れるまで踊るだろう”は、「命枯れるその日までは、どんなに辛く苦しい運命であっても受け入れて、一生懸命生きていこうよ」。
そんなメッセージを感じ取った。
病に負けることなく、1日1日を前向きに生きていって欲しいという、難病の少女へ向けたhideの祈りや励ましの想いと共に、きっと私達へはこんなメッセージをこの楽曲に託していたのではないだろうか。
「心をオープンにして自分と向き合うんだ。自分の弱い部分も嫌いな部分も、感じる痛みも苦しみも全部受け止めて。
運命から逃げないで、目を背けないで。痛みや苦しみを感じるのは生きている証だから。命枯れるその日まで、自分を愛して、強く生きていってほしい。
今は辛くて苦しくても、いつかきっと心から笑える日が来るから。」
今尚愛されるギタリスト
誰よりも熱いハートを持ったファン思いの心優しきギタリスト、hide。
彼が紡いだ歌詞や楽曲、そしてその存在は、これからも私達を勇気づけ、励まし続けてくれる。
4月28日、29日には、hideと共に音楽をやってきた仲間や、縁のあるバンドが集まり、hide 20th memorial SUPER LIVE「SPIRITS」と題された野外ライブがお台場で開催される。
「お前ら楽しそうじゃん!俺も混ぜてよ!」と、hideが空の上からステージに降りてきそうな、そんな愛に溢れた素晴らしいライブになるに違いない。
没後20年、hideの魂はこれからも多くの人々の心の中で永遠に生き続ける。
TEXT 中村友紀