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【インタビュー】音楽が身体に染み渡るアーティストMili、この世にないものを作り続ける理由 (1/2)

4月25日に3rdアルバム「Millennium Mother」をリリースしたMiliから、KASAI YAMATO(Composer, Gt.)と、momocashew(Vo.)にお越しいただき、アルバムについての思い、これから始まるライブツアーの見どころをお聞きしました。

生活に溶け込んでいくMiliの音楽



――今回のアルバム「Millennium Mother」、聴かせて戴きました。Miliさんの音楽ってすごい心地いいんですよね。例えを出して失礼ですが、僕が中高生から聴いている坂本龍一とかジョージ・ウインストンのように、ふぅっと身体に入ってくるという感じがします。そしてじわじわ元気になってくるという…。

KASAI YAMATO:めちゃくちゃうれしいですね。それ(笑)。

――恐縮です。なのでMiliさんの音楽って理屈じゃないと思うので、あんまりインタビューで色々聞くのもちょっと違うんじゃないかって気もしています。

KASAI YAMATO:いやぁ、全然。

――そう言っていただいて助かります。Miliさんの音楽って、僕みたいなこんな楽しみ方もあると思うのですが、どういうふうにご自身の楽曲を楽しんで欲しいと思われていますか?

KASAI YAMATO:僕の場合は作曲っていう立場なので、歌詞とメロディラインを担当しているmomocashewとはちょっと違う意志を持って曲を作っています。オケ自体がさっきおっしゃったYMOとか坂本龍一さんとか多分その系統のアーティストさんに近いですけど、どっちかっていうと音楽で「ワァー」とか「キャー」とかそういうのはあまり望んでないんですね。

――いきなり興味深い話ですね。

KASAI YAMATO:ちょっと古臭い楽しみ方なんですよ。オーディオスピーカーを前にして、リラックスしながらボケっと聴けるぐらいの感覚が僕は望ましくて、そもそも音楽を縦のリズムでつくってなくて、横の流れでつくっているので、静かなところで楽しんでもらう分はもちろん、やっぱ音楽を聴いていろんなことを考えたり、リラックスしている状態を僕は求めていて、生活に溶け込むようなものができると一番いいと思っています。
楽しいとか悲しいとか、喜怒哀楽を曲で増幅させるんではなくて、もともと持っているものをふと引き出す感覚がいいなと…それを求めて書いていますね。

――だからすっと身体に染みてくるんですね、やっぱり。

KASAI YAMATO:そうですね。何かがフラッシュバックしたりとか景色が思い浮かんだりとか、それだけでも音楽っていうのは楽しいと思っています。

――momocashewさんは、いかがですか?

momocashew:そうですね、どうやって楽しんでほしいとかそういうのは全く考えていないです。私はこれをつくってこれを公開して、ほかは自由に想像して自由に楽しんでいただけるといいなと思って。だからあまりそこまで考えていないかもしれないですね、私は。

いつも悩んで楽曲を作っています



――ありがとうございます。今回の3rdアルバムの「Millennium Mother」について、コンセプトやアルバムの世界観を教えてください。

momocashew:今回の「Millennium Mother」はこのジャケットにロボットの顔がありますよね。この子がいろんな夢を見ているというコンセプトで、1曲1曲それぞれがこの子が見る夢なんです。

――ジャケットもすてきで、でも通常盤と少し絵が違うんですよね。裏側が見えてるところと見えてないところにドラマを感じますし、目の色がなんとも言えない色をしてますね。

momocashew:(笑)

KASAI YAMATO:ちょっと死んでるような(笑)

momocashew:そうですね。

KASAI YAMATO:機械的な。

――はい。でも別に悲しくはないって表情してますよね。楽曲制作の点で今回のアルバム制作で苦労したことがあれば教えてください。

momocashew:あった?

KASAI YAMATO:僕はいつも悩んで…

momocashew:(笑)

KASAI YAMATO:アルバムじゃなくて、普段YouTubeに上げるときもそうなんです。今回でいうと例えば1曲発表したとして、十何曲目に差し掛かったときに、今までつくった曲を聴いてみたら悩むっていうのが常にあるんですよ。
普通のバンドや作曲家さんだと得意な武器が絶対あって、バンドだったらひたすらバンドサウンドで攻めたりとか、ある程度ジャンルが固まるじゃないですか。でも僕らはジャンルっていうものに固執してなくて、いろんな音楽のいろんなジャンルのいろんな音の魅力を表現したいっていうのが僕のまず根本にあります。
そうすると、十何曲つくった段階である程度のジャンルを網羅した瞬間に、「今こういうのがあるから次は何のサウンドに挑戦しようかな」と考えてしまう。あれが人気だったからあれを模倣したものをまた作ろうかなというのは、僕のモチベーションが全く上がらないんです。僕自身が聴いたことがないもの、作ったことがないものっていうのがまず第一前提にあるんです。そのために常に何かしらアプローチを変えたサウンドを探す。そして自分の中で消化してアウトプットする。そういう作業が1番大変ですね。

――それはもうやっぱりいろんな音楽を聴かれたり?

KASAI YAMATO:めちゃくちゃ聴いてますね。もう仕事と思わず呼吸するかのように常に新しいものとか昔のものとかをひたすら聴き漁ります。そうしたら、こういうアイデアがあったんだ、ああいうアイデアが今生まれてるんだとかわかるんです。それこそ今の現代音楽とかニューヨークの最先端の音楽を聴いたり、本当もういろいろ全世界中の音楽をいろいろ聴いている感じです。

――別の見方になるのですが、音楽を作り上げていく中で、お二人の出身の国の音楽というものの影響はありますか?

KASAI YAMATO:そうですね。ただ、YouTube上で世界でやっていくとわかるんですけど、日本のカルチャーってすごい独特で、本当に孤島というか鎖国的文化なので、それがそのまま世界に通用するかっていったらそういうわけでもない。ただその中でも、日本じゃ今流行ってるけどじゃあ世界が聞いたら楽しめるものなのかな?というものを作り上げて送り出す。日本のユーザーも大切なんですが、世界に向けてバランスをとってる感じだよね。

momocashew:うんうん。

――YouTubeを見てると圧倒的に海外のコメントのほうが多いですもんね。日本人だとコメントするの難しいのかなっていう気もします。

「幾年月」は実は日本人に向けていない曲

Mili 幾年月



KASAI YAMATO:日本と世界の違いだと、「幾年月」はいわゆる日本人じゃないと出てこないもので日本語の曲なんです。でも実はあれは日本人に向けた曲に見せかけて日本人に向けてないんです。今までMiliのファンになってくれた海外の方に向けてます。
かなりネタバレなんですけど…僕は松任谷由実さんや松任谷正隆さんとかも大好きで、この系の音楽を海外の方が聴いたら、どういう反応があるんだろうっていうのが気になってつくってみたんですね。

――そうしたら、本当に実験実験を常にされてるみたいな感じなんですね。そうするとなおさらゲームでしか聴いたことのない人や、YouTubeで1つの楽曲でしか聴いていない方が、今度アルバムで20曲の流れに沿って聴くという、新しい楽しみ方があると思うんですよね。そこを何か意識されているところがあれば教えてください。

momocashew:ゲーム内で聴いていると、やっぱりそこまで細かく聞いてないと思うんですよ。なんとなくメロディとかそういうのを聴いて…

KASAI YAMATO:ゲームに夢中になってね。

momocashew:そうそう。ゲームのための楽曲だったので。で、そのときに「あ、この曲ちょっと気になるな」ってなる人がさらにYouTubeで検索して、そのときに、MiliのYouTubeっていろんな曲を上げてるんですけど、基本的には1枚絵になっていて、その1枚絵の動画を見てまた曲を聴いて、また別のものが想像できるんじゃないかなと思ってます。
今回のアルバムもブックレットにいろんなイラストもあって、そのビジュアルとともに一緒に楽しんで欲しいです。

KASAI YAMATO:映像でMVありきの音楽とかっていうのもあるんですけど、それとは違って、昔のRPGってありますよね、ドット絵の頃です。ドラゴンクエストの最初のころやファイナルファンタジーの最初のころ。あの頃は小説とかと同じでリアリティがないんですよ。現実になさそうな、ドット絵の2頭身が画面を歩いてるんで。それをプレイしながら脳内で映像を補完するじゃないですか映像を、あのときのワクワク感。僕はそれを音楽でもやりたいんですよね。写実的になればなるほど脳内補完が必要なくなりますから。

――見えてしまいますものね

KASAI YAMATO:そう。見たものをとってそのままの情報を取り入れてしまう。小説とかと同じでやっぱり読んでとか、見てとか、聴いて、想像を膨らませる行為をやっぱり重視したいんですよね。音楽聴いて風景を思い浮かべたりとかっていう、もともと人がそういう想像力を持っているので、それを完全に奪ってしまうような演出はしたくないっていうのはあります。

――楽しみを損しているようにも思えますね。

KASAI YAMATO:やっぱり今でも小説好きな人がいたりゲームでも簡易的なグラフィックでこだわってなくても、おもしろいゲームがあるっていうのはそういうことだと思うんですよ。

――それを想像する楽しみだとかありますもんね、昔もドット絵のゲームから精細なイラストを描いている方とか当時もいましたもの。

KASAI YAMATO:そうですよね。パッケージのイラストを描いて、こういう世界観だよって。

――あれをやっぱり描ける人って、もとはドット絵の世界観しかないのにそういう頭が…

KASAI YAMATO:そう、膨らませて。ああいうのがとてもいいのかなと思ってます。

3rdアルバム「Millennium Mother」のお気に入りフレーズ

Mili - Camelia [4K]




――聴いて膨らませて欲しいですね。歌詞からも想像できると思うのですが、今回のアルバムの中で、お気に入りのフレーズを教えてください。

momocashew:いろいろありますね。うーん…1番気に入ったのは…やっぱ「Camelia」かもしれないですね。

KASAI YAMATO:ショートムービー的だよね「Camelia」はやっぱり。

momocashew:そう。2曲目の「Camelia」の曲の…ここ、なんか映画っぽいところがすごい気に入りました。

KASAI YAMATO:日本語だとここの部分ですね。

――私は引き金をひいた♪のところからですね。
――――
私は引き金を引いた バンバン
けれど映画とは違って
拳銃は大声で鳴いた
殺された豚は誰も気にしないが
感じた痛みだけは消せないわ
回廊の中に反射し響くのは
餌を探す裸の男の魂
また立ち上がったね
これでお終い バンバンバン

――――


momocashew:そう。バンバン♪とかそうやって音を歌詞にするのもおもしろかったし、すごい映画っぽいところなんですね。想像を膨らませるところで。ドラマチック。

KASAI YAMATO:そうだね。頭の中で絵を起こしやすいよね。

momocashew:そうですね、「これでお終い バンバンバン」もこう拳銃を構えて…

――わかります。立ち上がりかけたのを見下ろして、冷たく「死ね…」みたいな感じ。

KASAI YAMATO:そう(笑)。

momocashew:ちょっとネタバレなんですけど、この歌詞を書いてるときに想像したのは、主人公は娼婦で、でもこのお客さんの男を殺したんです。そういう性的なことは明らかには書いていないんですけど、その背景を分かれば、性的なところも分かってくるかも。

――ああ、本当ですね。♪私の中の全てを 全てを注ぎ込んだ…♪とかそういうとことか。

momocashew:そうですね。そういうところですね。そういうちょっと謎解きっぽいところがあって、そういうのも好きなんです。

――そういうのは、UtaTenのコラムでも好評です。歌詞を解釈するのって楽しいですものね。

KASAI YAMATO&momocashew:(笑)

――ライターの解釈なので、その歌詞を作ったアーティストではないので正解は全然分かんないじゃないですか。それででも解釈から歌の魅力が広がっていく。

KASAI YAMATO:そうなんですよね。結局コアなファンっていろんな解釈を求めるので。

momocashew:そう。おもしろいですね。特にうちはYouTubeのコメントの中に、すごく長い文章でいろいろ解析してる方々が沢山いるんです。

KASAI YAMATO:そこは正解も不正解もなくて、あくまでもここで提示してる部分とか音で提示してる面が、僕らが提示してるものであって、そこからどう捉えるかっていうのはユーザーの自由なので、そこを奪う行為っていうのがさっきの話ですよね。それはしたくないですよね。「こうじゃない、ああじゃない」って僕らも言いたくないんですよ。「それも1つの答えかもね」っていうのがいいんです。

momocashew:歌詞書くときにちゃんといろんな設定が頭の中にあるんだけど、それは公開せずに歌詞だけを読んで勝手に想像してもらいたいです。

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クラシカルなサウンドを土台に、幅広い作曲を手掛けるコンポーザーYamato Kasai (Gt) 天使の歌声を持ち、トリリンガル(3ヶ国語)で作詞も担当するカナダ人ボーカリストCassie Wei (Vo)、 高度なテクニックでMiliの音楽を支える実力派プレイヤーYukihito Mitomo (Ba)、Shoto Yoshida (Dr)、Mili···

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