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【インタビュー】不死鳥が見続ける醒めない夢…sleepyhead(武瑠 ex.SuG)今初めて語られる想い (1/2)

元SuGの武瑠によるソロプロジェクト・sleepyheadが6月20日に、復活第一弾のニューアルバム『DRIPPING』をリリース。今回UtaTenのインタビューでは、新作について「負の感情を材料に書けた部分が大きい」と語っており、彼の内に秘めた想いがぶつけられている。武瑠が明かした真の想いとは?

負の感情を材料に書けた部分が大きい



──2017年12月20日をもって武瑠さんが所属されていたバンド・SuGは解散しました。再び音楽というフィールドに戻られたと思いますが、なぜ音楽という道を選択したのでしょうか?

武瑠:元々音楽の選択をしないつもりだったんですけど、いろんなトラブルがあって10年間真剣にやってきた事に対して、ふさわしくない音楽人生だと感じる事が沢山ありました。それが逆に音楽という道を選べたんだと思います。凄くスッキリした納得の出来る終わり方だったらちゃんと終わっていたはずです。


──SuGが解散した後は、どのようにして過ごされていたのでしょうか。

武瑠:まず、俺らの表現には解散できなかったっていうのがあっていたんですけど、年末に解散してからやっと動く事が出来たので、それまでは何もしていなかったですね。個人的な話をすると、プロデューサー、デザイナーとしての仕事があったので、前のバンドの仕事をちょくちょくしていました。そういうのもあったので、切り替えが出来なかった。他のメンバーが歩み出している中で、割と残った仕事をやらなきゃいけない立場だったなって。


──その当時は、音楽に触れていたりは?

武瑠:普通に一ファンとして音楽を聴いていたりはしていました。KICK THE CAN CREWのライブや、海外フェスにも行ったし。


──どのレーベルにも所属しないで、個人で活動していくという道を選ばれましたがそこに至った経緯をお聞きしたいです。

武瑠:まず、人の事を信じられなくなったっていうのが一番の理由ですね。今の自分に何が必要で、どういう事に助けてくれる人が必要なのか?という所を一つ一つ確認してからじゃないといけないんだなって思って。例えば10人集まっても、それが1割1割負担じゃなくて、結局7割負担するみたいな構図になっている事が多かったので、そこを外さなければいけないなって考えたんです。自分が得意な事が何なのか?を知るためにも、自分が苦手なことを全てやってみようって思って。『DRIPPING』の初回盤に関しては、発送も自分でやろうとしているんです。そういう自分が関わっているプロジェクトに対して、誰が関わっているかどうかを一度知りたいと思ったんですよ。俺らがCDを作れば、発送してくれる人がいる訳じゃないですか?その人がどういう仕事をしているのかも含めて、関わってくれている人の状況を全て知りたかったんです。それを見たうえで、これは俺が得意だからやろう、これは苦手だからこの人に頼もうっていうのを選んでいかないといけない時代なんだなっていうのを10年で感じました。


──個人で活動されるのはかなり厳しいですよね。

武瑠:厳しいですけど、自分が絶対やりたくない事はやらなくて済むし、やりたい事が通らなかったらそれは自分の力量不足なんで。割とシンプルで良いんじゃないかって思います。物理的に無理だろうって思ったりする部分もあるので、今の選択だとライブを減らしたりしています。



──6月20日にリリースする新譜『DRIPPING』は、解散してからの気持ちを反映させていますか?

武瑠:かなりあると思います。歌詞が特に、矛盾や納得できない事の憤りという負の感情を材料に書けた部分が大きいです。それに対して音楽性自体は無機質なものが入っているし、自分がバンドとして生きてきた10年を含めた背景が、ちょうどいいバランスで出たなとは思います。バンドだけもないし、打ち込みだけでもないし、間のような曲もする、そしてヒップホップもある。自分が聴いてきた音楽のパーセンテージがそのまま反映されたアルバムになっている気がします。


──『DRIPPING』はご自身の感情を全て投影した楽曲が詰まっていますね。


武瑠:そうですね。良くも悪くも自分100%になってしまうんで。周りの事に対して気を使わない分から、自由にアレンジできた所もあるし。


──武瑠さんの作詞はこれまで、何らかの世界観をもって作られていますが、今作はありのままの気持ちを曝け出すことが前提でしたか?

武瑠:出したかったとか、「伝えたいメッセージがあるか?」って聞かれると正直それはなくて。単純に自分の混乱した状態とその状況から自然に出てくる言葉を出しました。元々届けようと思っていなかったし、復活しようと思って作っていた訳ではなかったので。ただ作っていたものを出した。だからDRIPではなくて、『DRIPPING』っていう自分の中から無理やり絞り出している途中みたいなイメージで、タイトルを付けました。コンセプトがあった訳ではなく、自分がこれまで経験したことですね。自分との対話のように出していって、それで生まれたものを表しているからストーリー性もないし、同じ言葉を使っているものもあったりします。だから「希望」とか「絶望」っていう単語がいっぱい出てくるんですよね。それはそういう気持ちの時に書いているし、バランスも考えていなかったから。


──一番初めに出来た曲はどれでしょうか?

武瑠:それもわかんないんですよね(笑)どこまでいったら完成かっていうのもなんとも言えない部分があって。ワンコーラスだけあってとかもいっぱいあったので。6割ぐらいは描き下ろしだったと思います。ちなみに40曲ぐらい書いたんですよ。


──そんなに書かれたんですか!

武瑠:40曲書かないと復活しちゃいけないって自分の中で決めていたんです。一時期ずっと歌詞を書いていましたね。

「君の代替え機はないし センチメンタル4割増し」



──『HURT OF DELAY』は感涙のバラードですが、同曲はどういった想いを軸にされましたか?

武瑠:『HURT OF DELAY』は完全に、KREVAさんをイメージしました(笑)元々ヒップホップが凄く好きなんですけど、それにメロウな感じを足したロマンチックなサウンドが好みで。淡々と零れ落ちていくようなメロディーの曲を一曲書いてみようと思ってから、楽曲先行で作りましたね。歌詞を言いながら付けたのは、間のラップの部分です。あと、アレンジをそんなに変えてないので、飽きさせないように、サビ以外のメロディーだけは変えています。メロディーもラップ的なので、ラップ部分の歌詞の最後も「い」で終わるようにしているんですよ。割と母音に「い」が来るように制作したので、この曲の醍醐味でもあると思います。


──この楽曲は、男女の恋愛なんでしょうか?

武瑠:そうですね。片方しかいないイメージで書いていたので、片方視点です。元々二人だったんだろうけど、今は一人しかいなくてっていう感じで。ディレイって音楽で言うと、遅れてくる音っていう意味なんですけど、タイトルの『HURT』は心のハートではなくて、傷つく方のハートなんです。遅れてくる痛み。前に経験した事が、ちょっとずつ痛みとなってきている状態を表していて。ディレイの特徴なんですけど、だんだん音が小っちゃくなっていくんですよ。だから遅れてくる痛みがだんだん少なくなっていく、それで忘れていくという事なんです。十分に大事なものでも、人間は前を向くことで時間をかけて忘れていける。本当は恋愛の感じじゃなくても、あてはまる事のつもりで書いていますね。


──とても涙を誘うバラードですね。

武瑠:ありがとうございます。デモが出来たときに、「これ良い曲だな」って思えましたね。歌詞はサビから書いていきました。


──歌詞に「過去の亡霊の格好の餌食 辿り着いた愛の流刑地」という部分がありますが、こういった言葉はどういった心情から生まれてくるのでしょうか?

武瑠:わかんないです(笑)それよく言われるんですけど、探そうと思って探してないというか。歌詞書くときに検索をしたり、小説を読む人っていると思うんですけど、俺あんまりそういうの全くしないタイプで。逆にそういった言葉を普段から入れておかないと終わりの人になっちゃうんですよ。ストックが終わるのが怖いから、最初に色々な事を蓄えておくようにしています。特徴的な言葉を探して書くと、そのまんまになっちゃう。たまにやるのは類語で探したりとかですね。


──武瑠さんの歌詞は悲しさで終わるだけではなく、最後には光が見える形になっていますよね。

武瑠:悲しさで終わらないようにしていますね。悲しさだけで終わっちゃうと自分がやりたい事ではないのかなって。暗い地点から光の方へ導いていくのが好きなので。


──「また新しい恋に攫われるだろう」というフレーズがありますが、ここをあえて攫われるだろうという表現にした理由が気になりました。

武瑠:それはまだ、ディレイしていく痛みが残っているから、僕っていう視点からだとまだ次に行きたくないなっていう気持ちがある。だから今は攫われるけど、前のフレーズで「僕たちは忘れていく生き物で」って言ってるから大丈夫だよ、ちゃんと過去になっていくからっていう、終わりなんだけど前向きなメッセージ。それは自分の音楽人生の節目に対して歌っている部分が大きいです。自分は恋愛の実体験で書くよりかは、夢の事や音楽の事を擬人化して恋愛に書く事が多いんですよね。これも割とそういうイメージがあります。例えば「君の代替え機はないし」とかは、10年置き換えるものはないけど、それを超える気でいるよという想いがあります。ソロになる事によって変わりを探そうとしていない。でもどんなに大切なものもいつかは過去になっていくんだよって想いで書きました。


──『HURT OF DELAY』を題材にした小説ができたら素敵ですね。

武瑠:(笑) 小説だけが、今どう頑張ってもやれないんですよね。時間が物理的にとれなくて。あんまり無理だとか思わないタイプだったんですが、現実的に難しいかもしれないです。



──では、『HURT OF DELAY』の中からお気に入りのフレーズを教えてください。

武瑠:凄い辛いみたいな感じではなくて、だんだん切なさや痛みが弱まっていくような表現をしたかったので、「君の代替え機はないし センチメンタル4割増し」です。4割っていう所が、100%辛くて忘れられないとかじゃないっていう。まだ心の中に少し残っているみたいな意味で、象徴しているのはここかなって。あと「おなじ痛みで居て欲しいって嗚呼贅沢かな」とかも好きですね。サビの否定で語っている韻を踏むところとかもすごく新鮮な書き方で面白かったです。あんまりこのやり方はやった事がなかったので。

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武瑠 akubi Inc.代表取締役社長。 3D音楽プロジェクトsleepyhead。million dollar orchestra主宰。 10年間ボーカリスト、クリエイティブディレクターを兼任したバンドSuGで、武道館を経験。 自身のバンドだけに限らず、様々なアーティストへの曲提供やクリエイティブを担当。 ストー···

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