今は、人の判断基準を参考にするあまり自分での評価基準が希薄
――想太さん、普段から、疑問を感じることが多い方?岩渕:「あれっ?」と思うことは多いように、歌の題材には困らないです(笑)。
――それだけ今は、生きにくい世の中なんでしょうね。
岩渕:生きにくさはすごく感じますね。ただし、数字で自分を評価されるって今に始まったことではなく、昔からずーっとある永遠のテーマだとも僕は思っていて。これまでだって、そういう想いをテーマに歌ってきた人たちはいっぱいいたと思うんです 。だからこそ、自分が歌える視点は何処かなと思ったときに見えたのが、「数字を気にしたくはないけど気にしちゃう」という感情でした。そこが、自分にとってのリアルだったからこそ、そこを一番の軸にしながら『$UJI』へも表現していきました。
――先にも発言が出ていましたけど、SNSの誕生によって、数字を通した判断基準が今の世の中ではさらに可視化されていますからね。
岩渕:そう。たとえばの話、1本の映画を観るにしても、先に誰かが評価した点数を、ネットを介して観れてしまうのが今の時代じゃないですか。どこかの定食屋へ入ろうと思ったときにも、事前に調べたら何点の評価なのかがわかったり。それこそ、1位じゃなくても、ネットで2位や3位のお店だって美味しいだろうし。人が1点しか評価してない映画でも、人によってはとても胸に突き刺さる映画かも知れない。なのに今は、人の評価の高さを判断基準にし、自分での評価基準が希薄になっている。そこもまたつまらないな と僕は思ってて。
――確かに、何か行動を起こすとき、他人の評価を一つの基準にしてしまうことはあります。
岩渕:そんなことを言ってる僕だって、「食べログ」をチェックし、評価の高い店を選ぶこともあるように、ネット上の評価基準を参考にもしてるんですけど(笑)。そこが恐ろしいなというか。別のとらえ方をするなら、誰もが失敗を踏まないような世界になっているのかも知れない。失敗をしない姿勢って、それはそれで怖いこと。それだけ今は、未知の世界へ踏み出そうとしている人たちが少なくなっている気がします。
――確かにそうだよなぁ。
岩渕:『$UJI』の歌詞に、「俺の人生は映画じゃねぇんだ」と書いたんですけど。実際に僕は、自分の人生は映画じゃないと思っていて。
――それは、どういうことですか?
岩渕:もし、人の人生が全部点数化されてるとしたら…。たとえばの話、公務員になることが80点だとすれば、バンドをやる人生ってけっして高い数字じゃないだろうなと思ってて。もちろん、公務員を選ぶ人生を否定もしなければ、それも素敵なことだと思うけど。たまたま自分は、バンドをやることが楽しかった。でも、この楽しさって、本来は点数化なんて出来ないこと。だけど、世間一般的に見たらバンド活動って社会的に評価も点数も低い。だからこそ、そこに惑わされちゃいけないなと思って。
――想太さん自身は、バンドという人生を選び、心の満足度を強く覚えているわけですもんね。
岩渕:今は、バンド人生がとても楽しいです。いろんな疑問を持てば、そういう「何で?」と思うことを、そのまま表現していける。そこへすごく生き甲斐を覚えているように、自分の人生はここだなという気がしていますからね。
これまで人の心を動かせるなんて思っていなかったけど、今は、人の心を動かせるのが音楽なんだと思えるようになった。
――さっき、『フカンショウ』に対するリアクションがたくさん返ってきてたと語っていましたよね。
岩渕:自分が「あれっ?」と思ったことに対して、いろんな人が、同じように「あれっ?」と思ってくれたというか。「わたしもほっといてくれと思うことがありました」や「『フカンショウ』の生き方に触発され、わたしも人に言われたのではなく、自分の決めた道を進むことにしました」など、自分だけが抱えていた想いだと思っていたことを歌を通して吐き出したとたん、いろんな人の人生に影響を与えるどころか、その人の人生さえも左右してゆくことにも繋がった。
僕は、自分のことを「人の人生を変えれるような人間ではない」と思っていたし、自分が変だと思ってることは、ただただ自分のみが抱えていることだと思っていたんですけど。その想いが人にしっかり届くんだとわかったことは、嬉しい発見でした。それもあるからか、今は、「聞いてくれる人たちの心にどんな風に歌が届くかな?」ということを考えて歌詞を書くようにもなりました。
――人の心を動かす力を持っているのが、歌であり、音楽ですからね。
岩渕:本当に、そう思いますね。これまで人の心を動かせるなんて思っていなかったけど、今は、人の心を動かせるのが音楽なんだと思えるようになった。それって、バンド活動を続けてこなかったら気づかなかったこと。なんか、自分だけの違和感だと思っていたことが、そうじゃなかったんだと気づけたことも大きければ、今は、そういう接点をもっともっと求めたくなっている自分もいますからね。
『$UJI』を聴いた一人一人が思ったことが、その人にとっての正解
――想太さん自身、昔から数字で自分を括られることに違和感を持っていた人なんですよね。岩渕:小学校に入って、出席番号を付けられたときから、自分を数字化されることには疑問を持ってました。まして、「2番の人」と呼ばれたりすると、「俺、2番の人なの??、俺って、岩渕想太じゃないの??」「なんで岩渕想太という名前があるのに、数字で呼ばれるの??」みたいな違和感は、小さいときからずっとありました。
そんなこと言いながらも、僕も受験の時期は、ひたすら点数を取ることへ必死になっていました。それこそ、つねに学年トップを飾る女の子がいて、それに負けないように、絶対に学年一位を取ってやることを目標に勉強をし、実際に一位を取ったり。でも、そういう数字ばかりを考えてきた時期も経験してきたからこそ、今、こうやって数字に縛られることに対して疑問を持って歌えるんだろうなとも思っています。
――これからも想太さんは、自分の心の中に芽生えた疑問をぶつけながら表現していくんでしょうね。
岩渕:自分の歌を通して、自分の生き方に気づく人が増えて欲しいなという想いも抱くように、そういう歌を届けたい自分もいます。ただし、自分と同じような人が増えていくのは、それはそれで気持ち悪いなとも思ってしまいますけど(笑)。
『$UJI』の最後に僕は、「あとは任せた」と歌いました。それは、『$UJI』が何かを断定したり、正解を提示する歌ではないから。『$UJI』は、「こうしてください」ではなく、あくまでも「自分なりのメッセージはこうだけど、あとは、聴いた人それぞれに考えて」という歌。この『$UJI』を聴いた一人一人が思ったことが、その人にとっての正解なんだと思います。
――なるほど。最後にひと言お願いしてもいいですか?
岩渕:自分が今、思い感じていることをそのまま素直に投影したのが『$UJI』になります。この歌が、どう人の心に伝わってゆくのか楽しみにしています。
TEXT:長澤智典
PHOTO:片山拓
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