いとしのレイラ
この『いとしのレイラ』という曲を書いた1970年当時、エリック・クラプトンはある女性に恋い焦がれていました。
その女性の名はパティ・ボイド、親交の深かった元ビートルズのジョージ・ハリスンの妻です。
ある日クラプトンはボイドにこの曲のデモテープを聴かせます。その歌詞の内容に、ボイドは二人の関係が露呈するのではないかと危惧したと言います。
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Let's make the best of the situation
Before I finally go insane
Please don't say we'll never find a way
And tell me all my love's in vain
≪LAYLA (UNPLUGGED) 歌詞より抜粋≫
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[日本語訳]
俺が狂っちまうまえに
最善の状況を作ろうぜ
そんなこと叶いっこないなんて
頼むから言わないでくれ
どんなに愛したって無駄だなんて
お願いだから言わないで
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……とか言いつつ、フランスに女がいたり、ボイドの妹にまで色目を使っていたクラプトンは、一旦彼女に拒絶されました。
それが彼のヘロイン中毒を深刻に深めていった一因とも言われています。一方彼女は1974年、ハリソンとの不和から離婚に至りました。
ワンダフル・トゥナイト
そんなこんなで再接近した二人は、1979年ついに結婚します。クラプトンはまたもやボイドにある曲を聴かせます。
それはパーティの夜、彼女の身支度が整うのを待つ、愛する人とともに過ごす喜びの夜を歌ったものでした。
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It's late in the evening
She's wond'ringwhat clothes to wear
She puts on her make-up
And brushes her long blonder hair
And then she asks me
"Do I look all right?"
And I say "Yes, you look wonderful tonight"
≪Wonderful Tonight 歌詞より抜粋≫
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[日本語訳]
深まりつつある宵のころ、
何を着ようか彼女は悩んでいる
彼女は化粧をして長い金色の髪をとかす
そして俺に尋ねるんだ「これでいいかしら?」
俺は云う「ああ、今夜の君は素晴らしいよ」
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ボイドは後に、二人の関係が最良だった頃を思い出させる曲だと語っています。
オールド・ラブ
しかし幸せは長くは続きませんでした。クラプトンは、自身のアルコールや薬物の依存を一向に改善させず、また不妊に悩んでいたボイドの影で浮気相手と子供まで作る有様でした。
そして1988年、二人の関係は終焉を迎えます。翌年発表された彼のソロアルバム『ジャーニーマン』に収録された『オールド・ラブ』では、その痛手について歌っています。
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And it makes me so angry
To know that the flame will always burn
I'll never get over
I know now that I'll never learn
Old love, leave me alone
Old love, go on home--
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[日本語訳]
その炎がいつまでもくすぶっていることに
はげしい怒りさえ覚えるんだ
けっして乗り越えられやしない
俺が学ぶことなんてけっしてないのは分かっているんだ
オールド・ラブ、ひとりにしてくれ
オールド・ラブ、帰っちまえ
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『いとしのレイラ』は12世紀のペルシャの詩人、ニザーミーによる「ライラとマジュヌーン」という物語から着想を得たものでした。
主人公の青年マジュヌーンは、月の王女ライラに恋い焦がれながらも叶わず、ついには気が狂ってしまいます。
一方のクラプトンは恋を成就させることができたものの、その結末は不幸なものに終わりました。
こうして『いとしのレイラ』の物語は、恋の炎がいまだくすぶり続ける『オールド・ラブ』で、悲しく幕引きとなったのです。
TEXT quenjiro
Eric Clapton(エリック・クラプトン)は、イングランド出身のギタリストでありシンガーソングライターである。 ギタリストとしては、ジェフ・ベック、ジミー・ペイジと並ぶ世界3大ロック・ギタリストの一人とされている。 「スローハンド」というニックネームで知られている。 彼の音楽キ···