JUDAS(ユダ)とはキリストを裏切った使徒の一人。私の推測だが、「WHITE JUDAS」で“潔白のユダ”、「自分はまっさらだ。」そんな意味が込められていたのではないだろうか。
今思うとあのステージは“ソロシンガーSHIN”の未来を紡いでいく為のプロローグだったのだと思う。
2009年に結成したViViDでボーカルを担当、バンドはその後2011年にメジャーデビュー。
日本武道館公演も行うなど若い世代を中心に人気を博したが、2015年春、惜しまれつつ解散。
解散後、前述のWHITE JUDASのステージから1年半近い沈黙を経て、2016年のクリスマスイヴに、ソロボーカリストとしてSHINは復活を遂げた。
そんな彼が今回ある楽曲をカバーし、話題になっている。
SHINが歌う「GLAMOROUS SKY」
映画「NANA」の主題歌として、中島美嘉が「NANA starring MIKA NAKASHIMA」名義でリリースした「GLAMOROUS SKY」だ。
SHINが原作である矢沢あいの少女漫画「NANA」の世界観に感銘を受け、漫画の登場人物の一人が自身の名前の由来にもなっているほどの強い思い入れから、この楽曲を人生初のカバーに選んだという。
彼が歌う「GLAMOROUS SKY」を聴いて、きっとこの曲は彼に歌ってもらうのを待っていたのではないか、そんな必然を感じた。
彼の音楽人生とリンクしているかのような歌詞を見てほしい。
“あの虹を渡って あの朝に帰りたい
あの夢を並べて 二人歩いた GLAMOROUS DAYS”
バンドが解散して、強い意志を持って一人になったけど、後悔することも辛いこともたくさんあった。
同じ夢に向かって仲間と共に歩んだ日々を懐かしく思い出すこともあった。
戻れるものなら、戻りたい。ただまっすぐに夢を追いかけていたあの頃の自分に。
「明け渡した愛に 何の価値もないの?」
AH 嘆いて…
「自分が過去に築きあげてきたものは、終わりを迎えたらその価値も消えてしまうのだろうか?」
沈黙の期間、復活に向けて模索していた時期に一人嘆くことも…
“あの雲を払って 君の未来照らしたい
この夢を抱えて 一人歩くよ GLORIOUS DAYS”
それでも自分のことを待ってくれているファンが一人でもいる限り、どんな困難も苦痛も乗り越えて、もう一度ステージに立ってみせる。
この歌声を君に届けてみせる。今もずっと変わらないこの夢を、この想いを抱えて、一人でも輝きに満ちた日々を歩んでみせるよ。
SHIN自身の人生や音楽への情熱・想いが見事にリンクした1曲
彼はこの楽曲のカバーを通して、応援してくれているファンにきっとこう伝えたかったに違いない。「ソロになっても、バンドを始めた頃の初期衝動を忘れずに、あの頃抱いた夢も想いも全部抱えて、これからも力強く歩み続けて行くから」と。
SHINの復活から1年と少し。この楽曲を聴いて、彼が完全復活したんだと改めて実感したのは、そして「おかえりなさい」ともう一度言いたくなったのは、ただ歌詞が彼の音楽人生とリンクしていたからではない。
彼の音楽に対する熱い想いと情熱が、この楽曲と融合して起きた必然の奇跡なのだ。
TEXT:中村友紀