宣戦布告感を詰め込んだ『Snatch』
――2曲目の『Snatch』は、2000年に作られたイギリスとアメリカ合作の映画のタイトルと同じだなとふと思ったのですが!全員:おおお~!
片桐 航:素晴らしい!(笑)そうです。俺、その映画が好きで。イメージはその映画からなんです。『Snatch』は奪い去るっていう意味があります。これを一曲目にしたのは、一曲目っぽいサウンドが出来たなっていうのもあるんですけど、歌詞の中で「ぬるいバンドとかダサいバンドを聴かずに俺らを聴けよ(笑)」みたいな事を歌っていて、そこから誘拐していくっていう。なんていうんやろ(笑)
ソラ:誘拐って面白いね!(笑)
片桐 航:“なんでこいつらが人気なんやろ?”っていうバンドや、“そういう芯のないダサいバンドじゃなくて、俺らを聴けよ!”みたいな宣戦布告感が歌詞にふんだんに入っている、そんな1曲です。
――そんな『Snatch』はKANDAIさんが苦戦されたんですよね!(笑)
KANDAI:一部分だけですけどね!(笑) akkinさんから返ってきたアレンジが、ちょっとメタルチックというか、今までやってきたことのないドドドドド!っていうバスドラムを踏むようなフレーズで…。最初全然できなかったんです。
――今回女性のコーラスが入っていますね。
片桐 航:楽曲を作ったときから、女性コーラスにしたいって元々思っていて。女性コーラスの曲って好きなんですけど、そこは全員共有しているんです。みんなが聴いてきた音楽の中にも入っていたりするので。知り合いのめちゃめちゃ良い声の子に声をかけて、録ってもらいました。
――歌詞のお話しにいきます。『Snatch』に「深みのない甘い魔法が頭に残ることはないわ」という女性的な言葉づかいがありますが…。反対に「お遊びに負けるのは オレのBirthと興味が許してくれないみたいだ」という男性的な言葉づかいがあります。これを対照的にさせた意味を教えてください。
片桐 航:これは、聴く人と俺自身みたいな。奪いたいっていうのが、女性の方なんで、女性をまず奪っていきたいな…(笑)
全員:(笑)
ソラ:なんのインタビューかわかんなくなってるよ(笑)
片桐 航:聴く人は女性目線で、俺の意見としては俺の意見をしっかりとぶつけるという。無意識というよりは、聴く側の意見と言う側の意見をわかるようにした歌詞にしています。
――全体的に色っぽいですけど、挑発盛りだくさんですね(笑)
片桐 航:もう、挑発でしかないです(笑)
――ちなみに(Take me down from saturation)という英歌詞は、どういう意味がありますか?
片桐 航:これは、“ぬるい飽和状態から俺を奪い去ってくれ!”っていうのと、“私を奪い去ってくれ!”っていう2パターンがあります。自分自身もぬるい所にいる時代から抜け出したいっていう気持ちと、奪い去って欲しいっていう気持ちの人もいるだろうなと。飽和したこの世界を奪回したいというか、変えたい。ぬるい時代はいややなって思っていれました。
――航さんから楽曲を受け取ってみて、ソラさんはどういう印象がありましたか?
ソラ:これの最初のデモ名が『魔女』だったんですよ(笑)。
――魔女!?
ソラ:でもなんか、俺はそのタイトルがしっくりきていて。この曲と『Enter the Void』に関しては航にしか書けないようになっていると思って。色っぽいし、何処か泥臭さもあるんだけど、どこか上品みたいな。大人のエロさみたいな!こういう曲は誰にでもかけるもんじゃないと思っていたので、ずっと世に出したいとは思っていました。
――めちゃくちゃ、魔女というタイトルに引っかかります(笑)
ソラ:そうなんですよー!俺は最後まで、魔女で行きたい!って言っていました(笑)
片桐 航:それはきつかったな(笑)
KANDAI:ギリギリまで魔女って言ってたしね!
――kazuさんはいかがですか?
kazu:歌詞にある反骨精神の部分や、“やってやるぞ!”っていう感じのものは過去にもあったんですが、“あ、言ってくれてんなこいつ!”みたいな。凄い他の人たちだったらあんまり使わないような言葉で、ガッツリと表現してくれているので、“そうそうそういう感じ!”っていうような…
片桐 航:そうそう(笑)
kazu:(笑) “そうそうそういう感じ!”っていうような所と、俺達も思ってた所、そして、昔悔しい思いをしたから今があるっていうような俺らもそうだし、聴いてくれている人もそうだし、そういう所を代弁してくれる。
思っていた事を言葉に置き換えて、だけどぶらさずに僕らのバンドの世界観で出してくれるので、そこに関しては今回も『Snatch』で言ってくれてるなとか。ぶっこんだ言葉使ってくるねんなっていう新鮮さと、ちゃんとやってくれている今までの安心感の2つがあります。航節が効いているなって思いますね!
『Enter the Void』は無に入るという意味
――3曲目の『Enter the Void』も2009年のフランス映画がモチーフだったり…?ソラ:おお~!すごい!
片桐 航:あってます!
――この曲は映画を見てから書きだしたのがスタートですか?
片桐 航:そうですね。映画を見たあとに、すぐに書きだしました。視覚的要素が強い映画なんですが、この芸術的視覚作品に感動しているのを自分だけで収めたくなかったんです。何かに変換をして、絶対みんなに届けたいと思って書き始めたのが最初です。
――想像するだけで、怪しい所に誘いこまれちゃうような(笑)
片桐 航:(笑)そうなんです。結構怪しい映画で。歌詞自体にはあんまり意味はなくて。サウンドをちゃんと聴いて欲しいのと、視覚的な怪しさやものをサウンドでどう表現するかが大事で。言葉のテンポ感や響きっていうのは、後々修正したんですけど最初に、歌詞を書いたのは一発書きでした。
曲を流して思い付いた言葉を入れて、終了!みたいな。あんまり考えてのせた歌詞ではなくて、サウンドにのれる、そして気持ちよく聴こえる言葉、ほとんどそれだけで。演奏重視のライブメインの曲ですね。
――ライブでファンの方が跳ねているようなイメージが湧きます!
片桐 航:そうそう!それが一番重要な所やったんです。
――「機嫌取りの我儘をKillサイン」という歌詞のあとにくる、KANDAIさんのドラムソロが、とても聴いていて心が高鳴りますね!
KANDAI:ダダダダダ!の所ですね!
――『Enter the Void』を叩かれているときって、どんなイメージでやられていますか?
KANDAI:正直な話、あんまり本を読んでなくて、最後に読んだのは「ぐりとぐら」レベルなんですけど(笑)航の言葉に関しては、色で見えるタイプというか。内容を理解しようとは勿論してなんとなくはわかるんですけど、イメージ的には怪しかったりエロかったりみたいなそういう雰囲気を読み取りつつですね。上げていきたい部分として、ああいう攻める感じのドラムも入れていきます。
――歌詞に「HEY Mr.JUNKY」や「HEY Ms.DRESSY」という歌詞がありますが、こちらは誰かの名前でしょうか。
片桐 航:これの本当の意味は、薬物中毒っていう意味なんですけど…(笑)他の意味で何かに没頭しているというか、熱心すぎてそれに集中しちゃっているような、それがライブそのものなんですよね。ライブはライブを楽しむで良い!みたいな曲です。
「HEY Ms.DRESSY」はその上で上品さやしっかり自分を持っているみたいな意味もあります。その二人がしっかりと無に入っていくという感じです。『Enter the Void』は無に入るっていう意味なんですよ。これも一発で出てきた言葉です。
――航さんの言葉のストックが凄いですね!
KANDAI:すごいんですよ、うちの片桐は!!
全員:(笑)
音色をこだわり抜いた『欲を纏う』
――5曲目の『欲を纏う』はイントロに機械音が入っていますよね!これはどういう仕組みになっているんでしょうか?片桐 航:入ってます!あれは、よくデモとかで俺が最初にイメージをよりつけたい曲とかに、効果音を入れたりとか、ビンテージ感を出したいからラジオボイスを入れたりとかするんです。
例えば夏っぽいのを入れたいときは、花火の音をエフェクトで入れたりとか、そういう作り方をしていて、その名残がそのまま残っているというか。ビンテージ感のあるフレーズだったりとかする部分もあるので、ラジオボイスも最初から入っていたりしたんです。
――かなり繊細に音作りにこだわられていますね!
片桐 航:そうですね。曲の空気感を出すためにはどうしたらいいか?みたいなのにフォーカスをあてて、曲を作っています。
――全曲そうですが、楽器隊の皆さんの良さが凄く引き立つ構成になっていると思いました。
全員:ありがとうございます!!
――では、ソラさん、『欲を纏う』でこだわった点を教えてください!
ソラ:言って頂いた通り、実はギターだけ着目して聴くと頭から結までギターソロみたいなフレーズを弾いていたりとか。そういう所にみんながそろそろ気づいて欲しいなって思います(笑)届いていないプレイヤーたちの耳にそろそろ届かせたいなと!!ギターキッズとか。
僕たちが憧れていた先輩像っていうのは、今もまだ残っていますが、その先輩像にこのアルバムを通して僕らもなりたいんです。『欲を纏う』はギターがわかりやすく出ているから、ギターキッズに受ければいいなって思って!
片桐 航を中心に滋賀で結成された4人組ロックバンド。 Vo.片桐が映画から影響を受け、「欲望」「反骨」「愛おしさ」のような誰しもが持つ感情にフォーカスを当てた歌詞とバンドアンサンブルを軸にした楽曲が魅力。それらを表現し観客と共有するようなライブを追求している。全国ツアーの開催や大型···