『イマジナリー・ノンフィクション』の中で一番好きな歌詞は?
──ではみなさんぜひTwitterやUtaTenの楽曲へのご意見やレビューに投稿をお願いします。それではUtaTenは歌詞サイトなので、今回のアルバム『イマジナリー・ノンフィクション』の中で一番好きなフレーズを教えていただけますか。でらし:『エンドレスヘイト』のサビの歌詞は、これムツムロさんっぽいなって思ってて。
ムツムロさんの言いたいことや、思ったことをそのまま歌詞にしてんだなって。そういう意味では僕、この歌詞が一番好きです。
「怒鳴ってりゃ なんかが変わんの? がなってりゃ 傷つかない?」みたいな。そういうのは最近のムツムロさんとかも見てて、たぶん言いそうだなって一番思って。
ムツムロ:(笑)
でらし:まあ好きな歌詞っていったらね、だいたい好きなんですけど、ほんとに。
ムツムロ:今までやらなかったっていう意味では、でらしに響いたのかもしれない。
でらし:あと、そうですね、一番を決めるのは難しいなあ。ちょっと待ってください(笑)。
──全て思い入れがある楽曲ですもんね。
でらし:そうですね。『弱者の為の騒音を』に出てくる「奇跡も愛も純情も 今更 信じらんないが 信じる僕でいたいから」の歌詞も好きですね。
僕たち「ネバーエンディング思春期」ってキャッチコピーを掲げているじゃないですか。そこから抜けていく過程というか、大人になっていく僕たちがだんだん信じられなくなっていくものも、嘘でもいいからそういうものはやっぱり信じたほうが夢があるんじゃないかなって思って。
ムツムロ:そこはすごく俺もほんとに言いたいことで、自分自身がほんとに冷めた人間だったんですよ、高校生のときまでは。
でも、バンドっていうものを通して熱くなること、そう内側が燃えることっていうのがすごく多くなって。そこはやっぱり人として捨てちゃいけない部分なのかなっていうのはよく思うんです。
仕事をする上でも、遊ぶ上でも、どこか冷めきってるんじゃなくて、一部分でもいいから自分の心に点火しておかないとっていうのは本当に毎日思うことです。だから『弱者の為の騒音を』の中で、そこが一番言いたいことかもしれないですね(笑)
でらし:上手くまとめて頂いてありがとうございます(笑)。
ムツムロ:フォローしちゃった(笑)。フレーズって言われるとすごい難しいんですよね。
でも、一番苦労したのは『弱者の為の騒音を』かな。「こどものままで おとなになろう おぼえたことば わすれてみよう」っていうのはほんとに。
でらし:今がすごい詰まってる感じがするかなって思いますね。
ムツムロ:そうですね。ほんとに毎日いろんなことを思うんですけど、集約すればこの2行なのかなっていう感じが自分の中でしてます。
──確かにいい言葉ですよね。うちの子ども5歳で男の子なんですけど、わけの分かんないことばっかりをするんです。それこそひたすらUSAを踊り続けていたり。子どもって面白いですよね、純粋なことを一生懸命にするんです。この歌詞を聴いて私は子供を見直しました(笑)
ムツムロ:ああ、うれしいです。僕、最近やっと子どもがかわいいって思えるようになったんですよね。ずっと苦手で。
でらし:苦手って言ってましたもん。
ムツムロ:(笑) いや、ほんとに、老人も子どももなんですけど、論理的じゃない人がすごく苦手なんですよね。たぶん、自分がすごくリアリストなんですよ。現実主義者で(笑)。
常に冷めきっている人間なんです。でも、そういう人間が熱くなってしまう瞬間が、すごく生きてるなっていう感じがするんですよ。
人を見ていても、自分を見ていても。やっぱり怒っている瞬間だったり、泣いたり笑ったり、喜んでいる瞬間っていうものを、普段冷めきっている人がするっていうのがめちゃめちゃロマンがあることなんじゃないかなって。
そういう意味で、大人はもっと子どもになるべきだし、子どもはもっと大人になるべきだと思います。
でらし:『CRYING BABY』っていう曲のCメロの「想像通りじゃなくたって臆病風が吹いたって もう戻れはしないけど 変わらない日々に魔法がある ノンフィクションで夢を描く」っていうのが、今回のアルバム『イマジナリー・ノンフィクション』のテーマにも合ってますしね。
ムツムロ:バンドをやっている人間っていうのは、世間一般にいうサラリーマンとか学生からはちょっと離れた位置にいるんですよね。表現者はみんなそうだと思うんですけど。
そんなバンドを見てくれる人っていうのは、たいていの人がサラリーマンだったり、普段学校に通っていたりする人なんですけど、そういう、自分もかつては学生だったときのことを考えて、ほんとに自分みたいなバンドを知ってくれること、見てくれること、聴いてくれること、歌を歌ってくれることっていうことに、もうほんとに言い表せないぐらいの感謝が常にあるようになった1年間だったんです。
そうなったときに、その人たちに向けて、僕はバンドをやっている側の人間だけど、その人たちの希望っていうものをちゃんと歌わないといけないなっていうのを思って、「変わらない日々に魔法がある ノンフィクションで夢を描く」と。
何度も言うんですけど、冷めきってる自分がそんな気持ちになれたっていう変化、心が変化したっていうことってほんとに奇跡みたいなことだなってよく思うんで、フィクションよりもノンフィクションのほうが夢があるなっていうふうに思うんですよね。
ライブで必見!?吉野エクスプロージョンのギタープレイとは?
──そんなハンブレッダーズの心を是非ライブで聴いてほしいですよね。アルバムリリース後のライブが結構ビッシリ予定されていますし。ライブといえば吉野エクスプロージョンさんのギタープレイが名物だと、ファンの方にお伺いしたんですけど(笑)。名物と言ったら、言い方おかしいですけど熱いプレイなんですよね?ムツムロ:例えで言うと、札幌のジンギスカンキャラメルみたいな感じです(笑)。
でらし:ああ、そうかもしれないですね。
ムツムロ:誰も食べたくないけど名物になってるっていう。
でらし:そうかもしれない。めちゃくちゃいい表現かもしれないです(笑)。
ムツムロ:全然美味しくないけど(笑)。口当たり悪いし(笑)。
でらし:でもなんか、1度はちょっと見てみたい。
ムツムロ:うん。1度ちょっとって(笑)。なんかちょっと病みつきになってるみたいな感じなのかもしれない。
──なんと返して良いか迷うのですが、皆さん、それぞれに武器を持っているんですね。
ムツムロ:そうですね(笑)。
でらし:キャラ立ちですね。
ムツムロ:キャラ立ち?(笑) キャラなのかな、あれは。内側から出てくるものなのか、キャラなのか、未だに9年間一緒にやってて分からないんですよ。
でらし:名物、名物っていろんな人が言いますけど、それって結局本人いわく、つくってるわけじゃ全然ない。
ムツムロ:(笑)
でらし:俺はただ普通に弾いてるだけって言ってた。普通に弾いてるだけって。
ムツムロ:変なんだよね。すごい変なんだよね。
でらし:普通とは?っていう感じの。
──きっとライブでの高まりがそうなっちゃうんですよね。
でらし:感受性がすごい豊かなんですよね。すぐ泣いちゃうんです。自分のギターソロで泣いてるのを見たときに、僕は…。
ムツムロ:ちょっと病気かなと思ったな、あれな(笑)。
でらし:ちょっと引いてしまった、僕は(笑)。
ムツムロ:ちょっと引いたな。人間そんなことあるんだなって(笑)。
でらし:自分のギターソロがよすぎて泣くって。
──それ、めちゃくちゃ面白いですね。
ムツムロ:めちゃめちゃ面白い。ほんとに(笑)。
でらし:マジで?と思って(笑)。こんな感じで弾いていたので、まさかなみたいな。気持ちよさそうに弾いてるなあとは思っていたんですけど。
終わってから、本人に「実は俺、ギターソロ、気持ちよくて泣いてもうてん」って言われて。
──それは、ベースの立場だとすると余計わけが分かんないですよね。
でらし:分かんない。
一同:(笑)
ムツムロ:縦を意識してるもんね、ベースはね。
でらし:俺はドラムと、よし、よし、よし!ってやってるのに、その上で好き勝手にギター弾いて泣くって(笑)。
ムツムロ:同じステージ上でそんなに気持ちが違う人間がいるのはすごいドライ&クールだな。
スピッツのディレクター竹内 修さんから頂いた刺激
──もういつ泣くか楽しみでライブ見ちゃいそうです。この楽曲の話で、今回も、スピッツのディレクターである竹内 修さんのディレクションが入っているんですね。曲を聴かせてもらって僕のイメージなんですけど、ギターが際立っているんだけどいい感じにきれいに整っているというか。マイルドな感じがしたんですよね。皆さんからすると、どういった変化をもたらしてくれた感じていますか。
でらし:一番意識してるのが、演奏の中や曲をつくる上で、言葉を伝えるっていうことに一番重きを置いてやっていますね。
例えば、演奏でも抑えるところは抑えるっていう。やっぱり歌詞が、歌が一番聴こえるっていうことを意識して弾いてるんですよね。そういう意味では、マイルドっていうのは正しいのかな?
ムツムロ:竹内さんっていうのは、一番歌の人なんですよ。作詞の段階でも手伝っていただくんですけど、もうほんとに念入りに歌い方だったり、これを実際に歌ってみたときに、この高い音とこの言葉が合わないと思うよっていう、歌心のことをロジカルに教えてくれるっていうのがすごくあって。
僕は個人的に、何となくで歌ってた部分をすごく理解して歌えるようになりました。で、それが音源になると、歌がちゃんと聴こえて、楽器もちゃんと聴こえてっていうアレンジにしてもらってるんで、マイルドさっていうのがあるんでしょうね。
でらし:やっぱり、何度聴いても聴き疲れないようにっていうのはすごく意識してやってるところはありますね。
アルバムを通して、ずっと最後まで聴けないアルバムって僕結構あるんですよ。でも、そういうのにはできるだけなりたくないなっていうのは強く思っていて。そういう意味で今回のアルバムもそういうところはすごく意識してつくれたと思っています。
──そうなんですね。すっと心に入ってくる聴きやすい仕上がりになったと。演奏についてはどうですか?
ムツムロ:演奏というか、構成ですね。曲構成に関して、例えば、ハーフビートにした方がいいよとか。ドラムが8ビートから4ビートに変わったほうがドラマチックになるよとか、トータルで曲の聴こえ方がどうなるかっていうのをすごく客観的に見てくれるっていう感じですね。
ただ、ハンブレッダーズは僕が持ってきたデモを4人で曲にして、それを竹内さんに見てもらうっていう感じなので、もともとのあった部分っていうのは残したままにするっていうスタンスが竹内さんの基本的なやり方です。
でらし:今のところ、今回まではそういうやり方でやらせてもらっていました。
今後のハンブレッダーズが目指すもの
──ありがとうございます。楽曲の気持ちよさの秘訣を教えていただきました。そろそろこのインタビューも終盤なので、大事なことをお聞きしましょう。今後のハンブレッダーズが目指すものはなんでしょうか?ムツムロ:これはいろんなインタビューでも言ってるんですけど、読者モデルからDMをもらうというのが第一目標ですかね。
でらし:それ言ってるなあ。
ムツムロ:いや、言ってないけど、あんまり(笑)。ベースのでらしも顔がいいんで、少女漫画の実写化映画に出演してもらうこと。
でらし:主演で。
ムツムロ:そして、ドラムの木島がメガネキャラなんで、JINSとコラボですかね。
でらし:コラボしたいっすね。
──どちらかというと、音楽的なことを聞かせて貰えばと…(笑)
ムツムロ:っていうのは置いといて。でらしは何かありますか、長期的な。
でらし:何より僕はお客さんに喜んでもらいたいっていう気持ちが一番にあって、だからずっと4人で続けていきたいなとすごく思ってます。やめたくないんですよね、バンドを。だからずっと続けたいです。
ムツムロ:僕は、エレファントカシマシが一番好きなバンドなんです。まずエレファントカシマシのよさから語らせてもらうと、エレファントカシマシっていうのは結成35周年で、今年47都道府県ツアーを初めてやって、去年の年末には紅白歌合戦に初出場して、夏フェスにも今でも現役でガンガン出てるっていうバンドなんです。そしてずっと同じメンバーで続けているっていう。
バンドの一番の目標っていうのは、売れることが第一目標なんじゃなくて、でらしがさっき言ってたように、続けることだと思うんですよ。自分たちがこれはいいなって思う曲を出し続けること。
これってもう並大抵の努力じゃたぶんできないことで、自分たちの中で変化し続けて、尚且ついいなって、自分たちで本当に思えるものを捻出しつづける。そのために”売れる”というか”売る”。売るっていう言い方のほうが好きなんですよね、売れたいじゃなくて売りたいって。
自分たちの音楽をちゃんとつくって、届けるべき人、必要としている人にちゃんと届けるっていう作業を繰り返す、その上で紅白歌合戦に出演したいっていうのもありますし、いろんなフェスに出たいっていうのもあるし、アルバムをちゃんと作り続けていくっていうのもあります。全部ちゃんと続けていく、それが目標ですかね。
──お二人から同じ言葉を聞けて、絆の強さを感じました。これからライブも控えていますし、アルバムもリリースもされるので、ハンブレッダーズに触れる機会がどんどん増えていきますね。最後に、このUtaTenの記事を見ている方にメッセージをお願いできればと思います。
でらし:今こうやってインタビューの中で歌詞の変化とか、そういったことを結構、多く話せたかなと思うんですけど、UtaTenには僕たちの昔の歌詞までも載っていて、どのようにハンブレッダーズが変化してきているか、というのをぜひ見て感じていただけたらいいなと思います。
ムツムロ:歌詞に興味がある人っていうのは、少なからず言葉に興味がある人だと思うんです。僕は、それはすごく日本人の趣深いところだなと思っていて。
言葉っていうものを常日頃考える人間だからかもしれないですけど、自分の中に確たる言葉っていう、大事な言葉、それは歌の1節でもいいし、詩の1節でもいいし、誰かが言った言葉でもいいし、そういうのを持ってる人っていうのはすごく強いなって思っていて。
僕自身も人生の指針になるような大事にしている言葉がたくさんあって、UtaTenはそういう言葉に出会えるサイトなのかなと思うので、たくさん歌詞を検索して欲しいですね。
TEXT:苦楽園 京