恰好いいダンスの中に手話もあるというスタイルで表現
──『僕が君の耳になる』と『この手で奏でるありがとう』を収録したデビューシングル『HANDSIGN』のリアクションも、今すごいことになっていますよね。SHINGO:嬉しい驚きなのが、2本のMVの感想に海外の人たちが多くコメントを寄せてくれている。「もっと細かく内容を知りたいから英語の字幕をつけて欲しい」という書き込みも多いです。
──手話にも、各国のやり方があるわけですよね。
TASTU:その通りです。手話が世界共通言語だったら、もっともっと伝わりやすいのでしょうけど。手話は、その国の文化を反映して動きが生まれるもの。面白いのが、日本と韓国の場合、一説では大半のは手話の意味が一緒らしいんですよね。
僕はまったく韓国語を話せませんけど、韓国の耳の聴こえない方とは手話で会話が出来ました。それって、手話という共通言語があったからだなと感じた経験でしたからね。
海外では。それこそアメリカのようなラップ文化が生活に根付いている国では、手話でのラップバトルを取り上げた番組もあるほど。海外のライブになると、ラッパーの横にファンキーな姿の手話パフォーマーのような通訳さんがいて、ラッパーの言葉を、同じよう身体を動かし手話で伝えてゆくスタイルもあります。
輪入道君とも話をしていたことですが、日本でもそこまで浸透していけば、もっともっと手話が身近なものになっていくんじゃないかと思っていて。
──最新ナンバー『新時代 feat.輪入道』は、輪入道さんを加えた3人で歌詞の内容も考えた形で制作したのでしょうか?
TASTU:そうです。3人で集まったときから「自分たちで、手話とダンスとラップを融合した手話ラップという新しいスタイルを発信したいね」という会話から…。
SHINGO:歌詞の制作に当たっても、「新時代」というざっくりとしたテーマでしたけど、その想いを基にリリックを書こうという話をしたところ、彼は「スマイル それが共通言語」など、僕らの活動にも繋がるワードを上手く取り入れたラップを書いてくれましたからね。
『新時代 feat.輪入道』の手話に関しても、楽曲自体がゴリゴリのダンスチューンだったことから、手話で言葉を伝えるよりも、恰好いいダンスパフォーマンスを描きながら、その中へ巧みに手話を取り入れています。もちろん、輪入道君もラップしながら、その中へ巧みに手話も組み込んでくれています。
TASTU:『僕が君の耳になる』や『この手で奏でるありがとう』は、歌詞をしっかりと届けたいからこそ手話を大切にした動きを作りましたが、『新時代 feat.輪入道』では恰好いい音楽を何よりも届けかった。
なので、動きに関してもダンスを優先。恰好いいダンスの中に手話もあるというスタイルで表現をしています。
これまで誰もやってこなかった手話とダンスとラップを組み合わせた手話ラップを作りあげました。今は、このスタイルを世の中へ浸透させたいなと思っています。
──HANDSIGNの場合、手話を全面に出さなきゃという表現スタイルへ縛られているわけではないですよね。
TASTU:僕ら自身は「耳が聴こえない人たちのために」はもちろん、音楽を楽しんでくれるすべての方々へ伝えてゆくことを心がけています。
だから、楽曲の内容によって表現スタイルが変わっていくのも当たり前のことだと捉えています。
SHINGO:むしろ、新しい表現の道を自分たちで築いていこうとしているからね。
TASTU:ただ、ときどきもどかしさも覚えますよ。例えば四文字熟語やことわざなど、背景に意味のある言葉などは難しいですね。
そういう言葉を、どう手話を通して伝えようかと悩むことも正直あります。
──勝手に作ってしまうわけにはいかないのでしょうか?
TASTU:身内で伝わる共通言語として勝手に作っては、それで会話を楽しんでいる人たちもいます。
聴覚障害者のための大学に、多くのメンバーを擁しているダンスサークルがあります。そこでは、耳の聴こえない方と聴こえる人たちとの間だけで通じる手話を用いて自由に会話をしています。
そういう動きも素敵ですよね。世代や地域によって様々な手話がありますからね。
──確かに。
TASTU:僕らは今回の『新時代 feat.輪入道』を通し、これまで誰もやってこなかった手話とダンスとラップを組み合わせた手話ラップを作りあげました。今は、このスタイルを世の中へ浸透させたいなと思っています。
SHINGO:近々公開となるMVも、手話ラップを取り入れた恰好いい映像に仕上がりました。手話ラップに興味を持った人たちに、まずは、この映像を見て欲しいなと思っていて。
TASTU:俗に言う「恰好いい」映像作品ですからね。その映像や『新時代 feat.輪入道』という楽曲に世間のみなさんがどんな反響を返してくれるのか。
僕らの表現を通し、「手話ラップって恰好いい」と真似してくれたら最高ですし、少しでも反応してくれる人たちがいるなら、僕らも、HANDSIGNの表現スタイルの一つとして、これからも手話ラップには挑戦し続けていきたいなと思っています。
Text:長澤智典
Photo:愛香
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