耳に残る、大ヒット曲
相川七瀬の1995年のデビュー曲『夢見る少女じゃいられない』。90年代にヒットを記録し、相川七瀬の代表曲としても有名です。作詞作曲は織田哲郎。
相川七瀬の声がこの曲のイメージともぴったり合っていました。この曲は「少女じゃいられない」と歌うので、歳を重ねてもいつまでも歌っていられるのも利点。楽曲に力があるのでdreamやSilent Siren、デーモン小暮閣下などのカバーが存在します。
そしてこの『夢見る少女じゃいられない』は、ブラジルではなぜかマツリ・ダンスと呼ばれる踊りの定番曲になっています。複数存在する、ブラジルのアニメイベントでアニメファンがこの曲に合わせて踊る動画。楽曲の魅力が国境を越えて伝わっています。
さらに男性バンド、アルカラの『夢見る少女でいたい。』という曲まで存在します。この『夢見る少女でいたい。』は『夢見る少女じゃいられない』のオマージュになっている曲。
夢見る少女じゃいられない
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鏡の中 今も
ふるえてる
あの日の私がいる
夢見る 少女じゃ
いられない
≪夢見る少女じゃいられない 歌詞より抜粋≫
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そんな『夢見る少女じゃいられない』。
タイトルからして「ゆめみるしょうじょじゃ」「いられない」でほぼ七五調。この曲はこのタイトルフレーズを印象付けるリズミカルな歌詞が特徴。それはサビで特によく分かります。
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もっと激しい夜に
抱かれたい
No No それじゃ届かない
素敵な嘘に溺れたい
No No それじゃ
ものたりない
≪夢見る少女じゃいられない 歌詞より抜粋≫
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という「い」の音で韻を踏んでいるリズミカルなサビ。さらに「もっと」「夜に」「溺れたい」「ものたりない」と「No No」「それじゃ」で頭に「お」の音のリズムも入れています。
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鏡の中 今も
ふるえてる
あの日の私がいる
≪夢見る少女じゃいられない 歌詞より抜粋≫
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そして「う」で終わる音の変化。ここでも「鏡の」「今も」「あの」「日の」で「お」の音も仕込んでいます。
こうした積み重ねで最後の「夢見る少女じゃいられない」。もう分かるとおり「い」で終わっているのは勿論、「少女」の「お」の音もしっかり入っています。しかも「しょお」「じょ」「い」られな「い」と2回入っているのです。
音の巧みな技が、リズミカルさを生み出した
そして実は、このサビに至るまでに「午前」「交差点」「夜」「扉」=ごぜん、こおーさてん、よる、どあで、頭に「お」の音を仕込み、「恋心」「横顔」「だまってよ」「痛いよ」で後ろに「お」の音を仕込む。
「0時」「まじり」「恋」「たどり」「つきたい」「欲しい」「訳じゃない」「嫌い」「じゃない」「痛い」で「い」の音を伏線として仕込んでいたのです。
聴き手が「夢見る少女じゃいられない」とすんなり耳に入ってくるのはこのためです。
こうしてリズミカルに、聴く者に違和感なくフレーズを印象付けている巧みな歌詞。愛される楽曲は考えて作られているんですね。
TEXT:改訂木魚 (じゃぶけん東京本部)