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ポルノグラフィティ「フラワー」、命の美しさを花に例えた歌詞が秀逸

ポルノグラフィティの最新曲『フラワー』は12月28日公開の映画「こんな夜更けにバナナかよ 愛しき実話」の主題歌です。映画のために書き下ろされたという歌詞が、映画の内容とどのようにリンクしていくのかを交えて紹介していきます。


花のように儚くも強い命

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なぜ こんなとこに咲いた? その花も 理由を知らず
ただ一輪 荒野に芽吹き 人知れず薫っている
≪フラワー 歌詞より抜粋≫
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ここでは、人知れず咲いた花の寂しさと美しさを歌っています。なぜ咲いたのか、花自身も知らず、誰もいない荒野でもたった一輪で咲き続ける様は、凜とした美しさがあります。


大泉洋さん演じる鹿野靖明は筋ジストロフィーによって体を動かすことがほとんどできず、人の助けなくしては生きていけません。

なぜ、こんな体に生まれたのか?生きていくことが困難な荒野に放り出された命という意味では、歌に登場する花とよく似ています。

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吹きすさぶ風に 揺れていても 折れず
燃える太陽に しおれても 枯れず
≪フラワー 歌詞より抜粋≫
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一人では体を動かせず、社会的には弱者に当たるはずの鹿野靖明は、どんな荒波にも負けず、吹きすさぶ風にもめげることなく、強く生きています。

普通なら簡単に枯れてしまいそうな環境でも、必至に対応して生き抜いていく姿。その姿が、周りに勇気や感動、時に笑いを与えた鹿野靖明の姿と重なります。


それにもかかわらずワガママ放題で周りの人たちを困らせ、時に笑わせる魅力的な人物でもあります。


美しい生き様

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そこに咲いてるだけで こんなにも美しい
弱さと強さを持つ花よ
愛でられるためでなく 色を誇るためでもなく
息づいてる
I wanna be so strong, Even if I'm alone. I wanna be so strong, Flower.
≪フラワー 歌詞より抜粋≫
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一人では生きていけないのに、そこにいるだけで美しい。どんな環境でも生き抜く花は、その可憐な見た目に反して、とてもたくましく、見るものに勇気すら与えます。

すぐに折れてしまいそうな弱さ、それでも決して折れない強さ。そんな二面性を持つ姿が人を惹きつけるのです。

人に支えられて生きているのにワガママを言い、周りを困らせる。それでもなぜか、見捨てることができない人。

関わっている人は苦労が絶えないでしょうが、とても魅力的な人なのだと分かります。


なぜ、そんな姿が美しいのか?それは、人から愛されようとか、哀れんで欲しいとか思っていないからです。ただ、生きている。ただ、鹿野靖明という人生を生きているからこそ、誰よりも輝くことができるのです。

本当は不安で、自分の運命を呪うことだってあったはず。しかしそんな姿を決して見せず、明るく、人生を謳歌する姿が人に勇気を与えるのです。


限りあるからこそ輝く命

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ねぇ 君は寂しくはない? 雨やどりのバッタが言う
静けさと遠き雷鳴 笑ってるわけじゃないの
星たちは 蒼い闇の夜に映える
生と死とがひきたてあうように
≪フラワー 歌詞より抜粋≫
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どんなに強がっていても、ワガママを言っても、辛くないわけはありません。どんなに笑っていても、心は笑っていないことだってあります。


それでも、前向きに生き、一瞬一瞬を全力で駆け抜けるからこそ、死を感じながら生きているからこそ、今の命がまばゆく輝くのです。


限りある人生、それを健常者よりも強く感じているからこそ、今を輝かせることができるのです。


人の心に息づく人

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大地の深くにまで 張りめぐらせた根が
命の記憶とつながって
隣にはいなくても 確かに感じあえている
一人じゃない
≪フラワー 歌詞より抜粋≫
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死と隣り合わせで生きている、儚い人。それでも鹿野靖明という人は、そこにいなくてもなお、人の心に息づいてしまうほど存在感の強い人だったのでしょう。


誰かが生きた記憶は、確かに今を生きる人の心に息づきます。たとえそこにいなくても感じ合える関係というのは、とても美しく、温かいものです。一人の夜にも、心は満たされている。そんな温かさを感じる歌詞です。


迫り来る命の終わり

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冬の気配が荒野を満たせば 風もないのに花びらが落ちてゆく
長い眠りが近づいていることを知って 小さな種を地面に落とした
≪フラワー 歌詞より抜粋≫
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花が次の季節に種を落とすように、人間も種を落とします。しかし人間は、死んでしまえばそれっきり。悲しい別れを前に、出会った人の心に思い出や絆という種を残したのでしょう。


冬の気配と散ってゆく花びら。長い眠りというのは不穏な雰囲気を表現しています。

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降り積もる雪の下 閉ざされた世界で
どんな夢を見ているのだろう
春には氷を割って 新しい景色に出あう
光あふる
≪フラワー 歌詞より抜粋≫
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花は、雪の下で春を待ちます。しかし、映画と照らし合わせるならば「閉ざされた世界」というのは、死後の世界でしょう。現世を旅立ち、きっと安らかで幸せそうな最後の顔で、一体どんな夢を見ているのか?

それは残された人が想像することしかできないものです。たとえ命は終わっても、鹿野靖明に触れて、出会った人の心には、何かしらの変化が起きているでしょう。


これまでとは違う世界。鹿野靖明に出会えなければ気づけなかった世界がそこにはあり、その人の人生を明るく照らすのでしょう。

別れは悲しくても、悲しみだけでは終わらない。その先にはきっと幸せな春が待っている、それが、最後に鹿野靖明が残したものなのでしょう。

ただ、咲いているだけで美しかった人。周りを巻き込みながらも、人の心に息づき、笑顔と幸せを届けた人の歌です。


花の強さと命の輝きをリンクさせた名曲

花の強さと儚さ、その先にある美しさを歌いながら、きちんと映画の世界とリンクさせているところが、新藤晴一のすごいところです。

だからこそ、『フラワー』を聴くだけで、映画のワンシーンが蘇り、思わず波が流れたり、心が温かくなったりするのです。


映画との出会いが生んだ、ポルノグラフィティ史上最も温かいミドルバラードの一つと言えるでしょう。



TEXT:岡野ケイ

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