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yogee new waves「CLIMAX NIGHT」その都会的な雰囲気の原点を探る

1980年代に台頭したシティポップは都市生活者の空虚を埋め、心象風景を音にした。近年、シティポップは再流行しネオシティポップと呼ばれている。今回は彼らに感銘を受けたバンド、ネオシティポップを代表する「yogee new waves」を紹介したい。

yogee new waves「CLIMAX NIGHT」

彼らは山下達郎や松任谷由実などの上質なPOPSに影響を受けたのは間違いない。

その中でもサニーデイサービスからの影響が大きいように感じられる。

サニーデイサービスは他のシティポップのアーティストより少し独特の感性を持つ。

都会の空虚を享楽的に受け取るのではなく、真正面に立ち時間を掛けて消化する。その消化の長さはニヒリズムを生む。

彼は言葉の字面だけで詞に落とし込むのではなく、自分の心情として詞を書いているはずだ。

同様にyogee new wavesもシティポップが持つニヒリズムを内在させていると感じさせられる。

加えて、ボーカルの角舘健悟は泥臭さがなく都会的な匂いがする。

その洗練された空気は先天性のものではないのだろうか。

少し大げさかもしれないが、音楽をするために生まれてきたような存在に思える。

今回は「CLIMAX NIGHT」を紹介し、その都会的な雰囲気の原点を探ってみたい。




シティポップのキーワード「浮遊」

“目が見えなくとも 姿形色が分かる
ようなことを探し求め コーラを飲み泣きじゃくった日々よ
もう終わりなの まだ踊っていたのに
君の中で刻むメロディー 肩抱き合い笑いあった日々よ”


あの人との過去を回想する。詞には「泣きじゃくった」という言葉が入る。

悲しい歌詞ではあるが決して悲痛で重いものではない。ここにシティポップの良さがある。

楽曲全体が浮遊しており、ファンタジーや空想に感じられ言葉が重たくなり得ない。

それゆえ近づきやすく、リスナーは自分なりの距離で音楽と付き合えるのだ。

そう、「浮遊」という言葉がシティポップのひとつのキーワードとなる。

彼らの場合は、ジャンルが持つそもそもの浮遊感とボーカルの角舘健悟の甘美な声が絡まり、別次元の世界へとリスナーを導くのだ。


プロフェッショナルのやり方

“ああ酷い夜のこと忘れてくれないか
もう一度だけキスしてくれないか
そんな夜さ”


今までに本記事で説明した感覚は、村上春樹の小説を読んでいる時と同様なのである。

この時の詞の主人公は少しキザの方が似合う。

やはり、心象を風景にまで持って行くには一般的に言われる「美しい」が必要なのだ。

シティポップにはやはり定石が存在する。

ミュージシャンが作る段階でどれほどそれを意識しているかはわからないが、組み合わせの必然性が伴う。

ただし、定石だから個性が出ないと言っているわけではない。

同じコードを弾いても、同じ唄を歌っても、ミュージシャンにより与えられる印象が違う。

yogee new wavesも定石を知りつつ、その上に個性を咲かしている。

若くして、プロフェッショナルのやり方を貫いているのだ。


まとめ

“目が見えなくとも 姿形色が分かる
ような気がしている僕らじゃ 何も得ることはできないのだろう
もう終わりにしようよ まだ踊ってたいのかい
君の中で刻むリズムに 身を任せて自惚れていたいだけさ”


ボーカルの角舘健悟も歌い方を研究し練習しているとは思うが、その声質は彼自身が都会的であることの証明なのだ。

歌詞にも声にも一切の重みを感じさせない。それが清潔感をもたらし楽曲の居心地の良さに繋がっているのだ。

ある意味、「諦め」から彼らの音楽は始まっているのかもしれない。

諦めは喜怒哀楽を優しく包み、風の向くままに軽やかに生きて行くと決心させた。

自らの感情として言葉を吐き出し音楽で消化している彼らは生粋のミュージシャンなのである。


TEXT:笹谷 創( http://sasaworks1990.hatenablog.com/ )

2013年に活動開始。2014年4月にデビューe.p.『CLIMAX NIGHT e.p.』をリリース。 その後『FUJI ROCK FESTIV AL』《Rookie A GoGo》に出演。 9月には1st Album『PARAISO』をリリースし、年間ベストディスクとして各メディアで多く取り上げられる。 これまでに国内の多くのフェス、上海、北京···

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