予想を裏切る展開をしてゆく変化球も投げてみました
──昨年、H!dEさんはベスト盤『うたものがたりコレクション』を発売しました。この作品は…。H!dE:それまでに歩み続けてきたH!dEとしての音楽性を詰め込んだ作品になりました。そこで、これまでの活動に一区切りを付けたからこそ、新たなテーマを持って制作へと臨んだのが今回のアルバム『STORIES』になります。
──新たなテーマが、とても気になります。
H!dE:これまでのH!dEらしさも踏まえつつ、新しいH!dEらしさをどう作りあげてゆくか。これまでの楽曲は、作詞作曲ともにすべて自分で行ってきましたが、今回は楽曲制作の時点でいろんな方と共作する形を取りながら、そこでどんな化学反応が生まれるのかを求めようと作り始めました。結果、新たなH!dE色が加われば、とてもバラエティーに富んだ良いアルバムとして完成したなという手応えを覚えています。
──アルバムには、いろんな心模様を持った人たちが登場しますよね。
H!dE:そうなんです。中には、略奪愛をテーマにした楽曲もあったり。歌詞の言葉選びもそうですが、今までのH!dEは純愛と言いますか、学生時代を題材にしたピュアな恋愛物語を歌うことが主でした。でも今回は、「新たなH!dEを描き出そう」というテーマを掲げたこともあって、作家さんと一緒に、もっと大人のH!dEの心模様もいろんな楽曲の中へ投影していきました。
──その中に、略奪愛をテーマにした歌も登場してきたわけだ。
H!dE:そうなんです。他にも、切ない曲があれば、意外性を持ったオチの出てくる歌もあったり。
──先にも言葉の出た略奪愛を歌った楽曲とは、とても明るい表情を持った『星の相合傘』のことですよね。あの歌、歌詞を読まずに雰囲気だけで聞いていたら、普通に幸せなラブソングに聞こえます。でも、しっかり歌詞を読んでみると…。
H!dE:中で、「左の指輪を今夜だけ外してきなよ」と歌っていますからね。その言葉が出てくることで、じつは略奪愛なんだとわかったり。それは『Ai』にも言えることで、 さらっと聞いてるぶんには、家に帰ると待っててくれる人がいたりとあったかい環境があるように聞こえますけど、最後まで聞くと、「えっ?!」というオチが見えてくる。その辺も、作家さんと一緒に物語の展開を考えながら作ったことでした。
──『Ai』の中に出てくる家庭で待っている人って、「おーい、●●●●」と聞くと応えてくれるあの人ですよね。
H!dE:そうです。これからは、そういう人が増えるかも知れないですからね。一緒に物語を考えてくれた作家さんとも、どこで「君」の人物像を具体的に出そうか、それとも、一切に匂わせず最後に「あっ!!」とさせるかなど、いろんなことを考えながらこの歌詞を完成させています。
──今回収録した曲たちには、直球ストレートな歌詞はもちろん、巧みに言葉を操る変化球的な表現を持った曲たちも収録していません?
H!dE:言われたように、これまではどちらかといえばストレートにキャッチーにという曲をメインに投げてきましたが、今回は、良い意味で予想を裏切る展開をしてゆくバリエーション豊かな変化球も投げてみました。
STORIES
みなさんに向けての想いも重ねている
──アルバム『STORIES』に収録したのは、いろんな登場人物を立てては、その人の視点から観たさまざまな心模様を綴った曲たち。そのような印象も覚えました。H!dE:確かに、曲ごとにいろんな物語を描いていますけど。今回は、どの楽曲にも僕の主観が投影されてると言いますか。(経験談云々ではなく)物語に出てくる主人公の気持ちへ、そのまま僕自身の想いを投影してゆく傾向が強くなったなとも、完成した作品を聞きながら自分でも感じました。
──『No Rain No Rainbow』は、H!dEさんの地元である倉敷に住む仲間たちへ向けて作った楽曲だとも伺いました。
H!dE:僕の生まれ育った町である倉敷が、昨年、西日本豪雨によって被害を受けました。僕の友だちも含め、何日も救助を待っていた人たちが倉敷にはたくさんいました。その人たちに向けて、何かしら想いやメッセージを届けられないかと思ったときに生まれたのが『No Rain No Rainbow』になります。この歌を通して、もう一度立ち上がるきっかけになれば。それは同時に、夢に向かっている人たちや、何かへ向かいながらも一度夢をあきらめた人たちなど、そういう人たちの元に届く応援歌になればなという想いも含め、書いています。
──アルバム『STORIES』には、他にも応援歌を収録していますよね。
H!dE:『君らしく』も応援歌の一つです。世の中には、「頑張れ」とエールを送るだけではなく、いろんな形の応援歌があると思います。『君らしく』は、あえて男女の恋愛ソングという形を取りながら、「俺が支えてあげるから、前を向いて進んでいけよ」と、相手の背中を押してゆく応援ソングにしたくて書いた曲でした。
──『君らしく』のように、ここまで相手の気持ちを思いやって背中を押してくれたら、押される人は本当に力をもらえるだろうなと聞きながら感じました。
H!dE:そう思ってくれたら嬉しいですね。『君らしく』は仲間に向けてや、僕のことを応援してくれるみなさんに向けての想いも重ね合わせているように、みんなの心にも届いたらなと思って書いています。