1. MVと歌詞で読み解く『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』

MVと歌詞で読み解く『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』

サカナクションの代表曲の一つ『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』。この曲は作詞作曲の山口一郎いわく恋愛の歌だということ。

2015年10月8日


この記事の目次
  1. ・サカナクション 最新情報
  2. ・ライブ情報
  3. ・サカナクション Profile


サカナクションの代表曲の一つ『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』。この曲は作詞作曲の山口一郎いわく恋愛の歌だということ。

山口一郎が人形を使って踊る姿が一見バカみたいなMV。しかしこのMVの内容がとても意味深です。一体何を表現しているのでしょうか。


山口一郎演じる「僕」が人形を操っているのは、本性とは違う顔を見せていることの暗示。いくつも違う顔を持っている「僕」を表現しています。MVの前半で一生懸命人形を操る「僕」。必死に同じ動きをさせようとしている姿は滑稽ですらあります。人形に音楽を聴かせ、似顔絵を描かせ、食事させ、コントロールする。

しかし別の顔であるはずの人形が、やがて自分のコントロールを離れていきます。人形がサングラスをしてテレビ画面に映っているのは、自分のコントロールから離れたことの象徴。やがて人形は「僕」の手を離れて勝手に踊り出します。再びコントロールしようとしますが、うまくいきません。

そして女性が現れます。この女性が「君」。「君」は、本当の「僕」ではなく椅子に座った人形のほうにキスします。これは「君」が偽りの「僕」に惹かれていったことの象徴。鏡に映った本当の「僕」にヒビが入る映像が入り、「僕」の心が傷付いたことを表現しています。本当の「僕」はついに人形を倒して破壊します。「君」にキスをしようとする本当の「僕」。

しかし突然何者かの視線を感じて我にかえり、「君」も人形だったことに気付きMVの物語は唐突に終了します。
何者かの視線は、自分ではない客観的な目=客観的事実を表します。客観的には、「僕」の一人芝居だった=「君」との関係が既に終わっていたことを表しています。


では「僕」と「君」とはどんな関係だったのでしょう。そこで歌詞を見ていきます。


"気まぐれな君の色 部屋に吹くぬるいその色
壁が鳴り痺れるチェロ すぐに忘れてしまうだろう"


「すぐに忘れてしまうだろう」という歌詞が「君」と別れていることを示しています。「気まぐれな君の色」がまだ部屋に残っている。「部屋に吹くぬるいその色」から部屋に「君」がいた記憶がまだ残っていることを表します。

「壁が鳴り痺れるチェロ」は、チェロのメロディが壁に鳴り響くだけで痺れる=色々な「君」との記憶を思い出して辛くなってしまう意味。バッハの曲はチェロを使っているものもよくあるので、タイトルにもかかっていることが分かります。


“歩き出そうとしてたのに 待ってくれって服を掴まれたようだ”

もう別の道を歩みだそうとしているのに、「服を掴まれた」かのように別れた「君」を思い出してしまう

“歩き始めた二人 笑ってる君の顔を思い出したよ”

これも同様。二人は別々の道を歩み始めているのに「僕」は「笑ってる君」を思い出してしまう

”月に慣れた君がなぜ 月を見ていたのはなぜ
僕の左手に立ち 黙ってる君の顔を思い出したよ”


月に慣れた=「僕」と「君」が月日をともにしていたことが分かります。また「月」=夜。夜に会う親密な関係だったことの表れ。「月を見ていた」=僕ではなく外の月を見ている=「君」の心が「僕」から離れた意味。

「左手に立ち 黙ってる」とは、身体の左にある 僕の心臓=心に対して沈黙を保っていること。僕の心に答えてくれなくなったことを表現しています。


”月に慣れた僕がなぜ 月に見とれていたのはなぜ”

対する「僕」は、別れて月日が経った事実にもう慣れたはずだったのに、「月」に見とれてしまう。「君」が見ていた「月」にすら見とれてしまう。「君」は「月を見ていた」=何気なく見ていただけなのにも関わらず、「僕」は「月に見とれていた」=「君」を思い出してしまう。微妙な日本語の使い分けで「君」と「僕」の心の違いを表現しているんですね。

こんなに思い出してしまうのはなぜだろう?こんなに心がざわつくのはなぜだろう?
「忘れかけてたのになぜ 忘れられないのはなぜ」と自問自答します。


そして「僕」は結論を導きます。それは二人で聴いていた旋律を「夜に」「ひとり」で「聴いたせい」だから。

“バッハの旋律を夜に聴いたせいです”
“バッハの旋律をひとり聴いたせいです”


MVから「僕」の部屋に蓄音機、バッハの肖像画があることが分かります。「バッハの旋律」は二人で聴いていた音楽の象徴。

そう、こんなに「忘れられない」のは「君」と共に聴いていた『バッハの旋律を夜に聴いたせいです。』。


タイトルに「。」がついていることから、このタイトルが結論だったことが分かります。
かなり巧みに作られていたMV、歌詞だったんですね。

TEXT:改訂木魚(じゃぶけん東京本部)

サカナクション 最新情報

ライブ情報

サカナクション
SAKANAQUARIUM2017 10th ANNIVERSARY Arena Session 6.1ch Sound Around
09月 30日 (土)16:30/18:00幕張メッセ国際展示場ホール9−11
10月 01日 (日)16:30/18:00幕張メッセ国際展示場ホール9−11
http://sp.sakanaction.jp/feature/10th_anniversary_tour_arena
チケットは両日ソールドアウト

サカナクション Profile

2005年に活動を開始し、2007年にメジャーデビュー。
日本の文学性を巧みに内包させる歌詞やフォーキーなメロディ、ロックバンドフォーマットからクラブミュージックアプ
ローチまでこなす変容性。様々な表現方法を持つ5人組のバンド。

全国ツアーは常にチケットソールドアウト、出演するほとんどの大型野外フェスではヘッドライナーで登場するなど、現在の音楽シーンを代表するロックバンドである。

2015年、クリエイター・アーティストと共に音楽に関わる音楽以外の新しいカタチを提案するプロジェクト「NF」を恵比
寿LIQUIDROOMで定期開催。また映画「バクマン。」音楽で第39回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。

音楽的な評価も受けながら「ミュージシャンの在り方」そのものを先進的にとらえて表現し続けるその姿勢は、新世代のイノベーターとして急速に支持を獲得している。
http://sakanaction.jp/

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